第百十二話 幻想からの帰宅
…気がつくと、目の前には巨大な階段があった
とても懐かしく感じる、いつも通りの光景
それを見て、安堵しないはずも無かった
だが、それを確認したのもつかの間、今までで一番酷い眠気がクラルスを襲った
自分と、義兄三人、そしてマグヌムの計五人
ホールのど真ん中にて、横に並んで熟睡してしまった
──うぅーん……
思い体を動かし、なんとか布団を持ち上げる
まだまだ寝惚けた状態で辺りを見回すと、
そこはやはり、ナルヴィー家の、いつもの寝室だった
横には二人の義兄がおり、部屋の隅にはハープが飾られている、そんな、いつもの光景
違う所といえば、外がまだまだ暗闇のままという点だけだ
起き上がろうとしたが、まだまだ眠気は収まりそうもなく、自分は再び、深い眠りへと戻っていく
─それから目が覚めたのは、いつもと同じ、太陽がこちらを覗き始める時間だった
眠気も収まり、さっさと準備を済ませると、いつもならとっくに起きているはずのウィルスール義兄さまが、未だに夢の中にいることに気がついた
まさか、幻想の世界にいた影響なのだろうか
だとすれば、最後まで万全で動き続けられた自分が最初に起きたのにも頷けるが…
─ルシオラ義兄さまの話によると、どうやら自分達は、戻ってきたその夜、見回りをしていた使用人に運ばれて、寝室でずっと眠っていたらしい
それが一昨日の出来事で、どうやら眠っている間に丸一日が過ぎたようだった
そのせいで昨日は、義父と義母を含めた六人が寝込み、マグヌムという身元不明の客人がいて、仕事がいつも以上に大変だった…
と、愚痴を溢していた使用人もいたらしい
怪我や精神の磨り減り具合で起きる時間が変わるのならば、次に目を覚ますのはウィルスール義兄さまだろうか
そんなことを思いながら、とりあえず今日は、いつもと同じ、家事を手伝うことにした
そうして半日が過ぎた時、目を覚ましたのはグローリア義兄さまだった
幻想ではあんなことになっていたにも関わらず、こちらでは何の外傷もなくピンピンしている
家事の合間に会いに行き、あのあとどうなったのか、幻想の世界について今後どうするか、などの会話を交わした
幻想の世界については、四人だけの秘密で、今後どんな危険に巻き込まれるか分からないので、しばらくは手出しをしないことに決めた
そして、その内容を、
ウィルスール義兄さまには自分が
クラウィール義兄さまにはグローリア義兄さまが、それぞれ伝えることとなった
それから二日が経ち、やっとウィルスール義兄さまが目を覚ました
ウィルスール義兄さまは、起きた瞬間部屋を飛び出し、クラウィール義兄さま達の寝室に無理矢理入ると、その姿を見て涙を流していたようだった
いくらなんでも、クラウィール義兄さまの姿を見ただけで涙を流すのは、流石の自分でも少し困惑してしまう
自分には、一体何が起きたのかさっぱりだったが、グローリア義兄さまがなんとか話をつけてくれだようだ
それと同じ頃に、客室にいたマグヌムも目を覚ましたらしく、使用人達が何人も駆けつけて、暴れようとするマグヌムを必死で取り押さえている、と話が伝わってきた
マグヌムとはいえ、精神は元に戻ったのだ、
そんな暴れ狂っているはずないだろうと、マグヌムの客室に向かうと、そこには、間違いなく、暴れまわっているマグヌムがいた




