第九話 空中都市ルダス
「そういえばクラルス、何か用事でもあった?」
もうすでに目的は達成したのだが、せっかくならルダスの事でも聞いておこうか
「えっと、空中都市ルダスについてお聞きしてもいいですか?」
「ルダス?どうして急に?」
「ちょっと気になって…」
義姉さまから訝しがる目線を受けながらも、視線を反らしてなんとか誤魔化す
「ルダスねぇ…最近、友達の間で話題になってる事ならあるけど?」
「どんな噂?」
「ルダスっていうより幻楽器の話になるんだけど
月も眠る真夜中に幻楽器の鐘の音が聴こえた時、それは幻想局の導き、世界最高の管弦楽への招待である
って最近話題になってるの」
「っ!」
幻想局、噂になっているということは隠蔽しているわけではない、ということだろうか?
世界最高の管弦楽という言葉も広まっているのは、わざと広めているようにも思えるが
「幻想局って、詳しく分かる?」
食い気味に義姉さまに尋ねる
「あら、そっち?」
意外そうに驚いた義姉さまは、特に追及することなく語ってくれた
「私もあんまり詳しくないんだけど、たしか数年前からある組織で、幻楽器をルダスから盗んでるとか、最高の合奏団とか、色んな噂があったわよ」
噂の一つに過ぎないが、殺しだけでなく盗みもしているのか
もはや犯罪組織ではないか、何が最高の合奏団だ
「そうですか…オーウィ義姉さま、ありがとうございました」
「あれ、これだけでいいの?」
義姉さまは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしたが、自分が求めていた物以上に色々と貰ったので、もうこれ以上に求めるものはない
それに、どうやら自分は義姉さまを誤解していたようだ
怖い人というイメージだったが、やはりナルヴィー家というだけあって心優しい人だった
チラリと隣を覗くと、半分以上残っていた料理が既に骨と皮だけになっていた
そして、ウィルスール義兄が最後の一口を口に入れた
正直もう少し食べたかったが、夕飯もあるので我慢しよう
「ご馳走さま!」
義兄は満面の笑みで、皿と義姉に感謝を伝えている
暴飲暴食というわけではなく、ただの大食いに見える
いつもの夕食では気にも止めていなかったが、食べ方自体は丁寧で綺麗だ、ゴミ一つ落ちていないし、音も立てていない
こう見ると、自分は義兄弟の皆を誤解してたのだ理解した
せっかくなので、夕食までの時間は三人で雑談でも交わすことにした
すると、オーウィ義姉さまは料理だけでなく、手芸、音楽、美術など様々な事をしていることを知った
ウィルスール義兄は普段、森で剣術の訓練などをしているらしい
それぞれが違う事をしていても、互いを認めあって仲良くしている所がナルヴィー家らしいと、自分はそう思った
そうこうしていると夕食の時間を迎えた
家族を知って食べる料理は、普段より何倍も美味しく感じた
いつも通りの夜を迎え、ウィルスール義兄の隣で静かに就寝する
ちなみに、ハープは部屋の隅に移動させておいた




