第百七話 幻想の世界
幻想の世界は想像の世界である
疲労や痛みが無いのは、動き続けられるように
現実と時間が違うのは、より長く活用するために
そして現実の物品を運べるのは、それが理想であったためだ
理想と夢が実現された世界、それが幻想である
そして、幻想に居続けるというのは、想像を続ける事
つまり、頭を酷使するということだ
そのため、現実で戻った時には、睡眠による回復が、体によって半強制的に引き起こされる
マグヌムの知っている、幻想の世界の常識
居続けるには、眠ってしまうというのが些か不便であった
だが、それは、幻想の世界で睡眠を取ることで解決出来る
──マグヌムは、本により、その全てを知ることになった
ある程度実験を続けると、二人は想造により階段を造り出し、ルダスのある空中へと足を進めていた
─幻想から現実に戻る時は、幻想の世界でその者がいる位置から、現実のその者が立てる最も近い位置が選ばれる
基本的には同じ場所を動くだけだが、地下などにいた場合は、弾き出されるように地上へと移動する
そうしてマグヌムは、鐘を鳴らしてルダスへと帰還した
都合の良い、想像と妄想によって生まれた、理想の夢の世界から、自由の少ない、夢も希望も存在しない、悪夢のようなルダスへと
煉瓦の道へと戻ってきたマグヌム
だが、そこにいても、一向に眠くなることがない
…不思議ではない、マグヌムは、知っているから
…そうだ、ルダスとはそういう国だった
実験のため、体の限界を迎えるまで続ける
集中出来るように、腹が減らないように、眠くならないように、
その空間には、脳の抑制剤が充満していた
換気もされない空間で、とても重い抑制剤は、そこに永遠に充満し続けていた
とはいえ、今のマグヌムにはあまり関係がない
今、そのマグヌムの頭には、幻想の世界が自身の理想そのものであることへの、興奮しか無かった
少しの時間、余韻に浸った後、マグヌムはイーデムに命令することで、暗い煉瓦の道の途中にある、元の部屋へと帰還することが出来たのだった
それから数週間後
─マグヌムは、M研究所を放火した




