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第百三話 新たな命令を

助けてください、救ってください


そんな言葉も、思いも、届かないと知っている



そして、今の精神を、もう一つが引っ張っていることを



戻っているのも一時的だ



空の精神は、消えることも、沈むこともない


それを、心から理解していたマグヌムは、


そうだ、絶望していたのだ



そのような、自分に必死のマグヌムは、目の前の女を見る事も出来なかった



感情が狂ったマグヌムを見て、恍惚とした表情を浮かべている女の姿を



それが、どれくらい続いただろう


徐々に、徐々に沈んでいくマグヌム・ヴェールの精神は、たったの一分ですらも一時間と同じように感じていた



そうして、抵抗しながらも、最終的には沈んでいく


感情が、収められぬ、その内に




「……は…はぁ…はぁ…はぁ…」

溢れて、狂って、おかしくなっている体を、深呼吸をして落ち着かせる


沈んだ精神に一切干渉することなく、ただ、自分の体として、その体を落ち着かせていた


「……もう少し見ていたかったですが、やはり情報通りですね」

精神、その優先度は、強制的に空の精神の方が高くなる

それを覆した所で、すぐに空の精神が浮かんでくる


それは、幻楽器を、アルカナブラスセクションを使う上で、常識とされる情報だ


作者の、解説書に書かれたそれを、女は、隅まで読みこみ、把握していた



「大丈夫ですか?そろそろ話をしたいのですが」


やっと息が整ってきたマグヌムに、女はそう語りかける


そして、マグヌムは、言葉で返す 

 

「分かった」



「ではこれから、君にしてもらう事を教えます

まず、ここに来る時以外は、普段通りのマグヌムとして生活してください、これは絶対です

そして、ここに来た時や、一人でいる時間などは、この本を読んでください」

そう言うと女は、隣にある100冊ほど積み上がった本を呼び指した


本のほとんどは、幻楽器の作者が書いた、解説書や歴史など

そして、それ以外の本は、音楽に関する様々な情報が載っているものしかなかった


「この情報と、研究所の実践で、君が目指すのは、世界最高のオーケストラです

君にしか奏でられない、世界最高傑作を目指してください」


そんな、無茶とも取れる女の言葉に、マグヌムは縦に首を振る


命令された通りにするのが、今のマグヌムの生き方なのだから


「そして、その頭の成長を元の精神にも刻むため、これから七日ごとに、誰にも知られぬように、精神を戻して下さい」


疑問も抱かず、同じように首を振る



「では最後に

あなたに意思はありますね?」


先ほどとは毛色が違う質問だ

だが、その質問にも、マグヌムは縦に首を振った


自我が強すぎて残った、分離しても残る自我

そうだ、それがあるという、証明だ


「良かったです

では、欠片のあなたに新たな名前を授けます


…………マグヌム・"バッハル"

偉大なる名曲家の名を受け継ぎ、更に偉大な存在として、成長してください」


この後、本によってマグヌムが知ることになるのは、世界一とも呼ばれた名曲家の名、それが、バッハルであったということだった


「今の命令はこれだけです

では、帰りましょう」



女と共に、元の道を辿っていく

分かる道で、一人で帰れる道なのに、女はマグヌムを案内するように歩いた


そして、そこを出た瞬間に、女はマグヌムを案内していたのではなく、ただ出るという目的が一緒であったことに気がついた




──そうして、命令通りに行動をし、初めてマグヌム一人で行った、偽物であることを象徴するその夜が、新たな命令を受け入れるという行動により、終わりを迎えた

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