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ゆな×ともっ! 夢見る彼女と天使な彼氏。~私の天使は最強です!~  作者: 根岸佳孝


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22/33

お嬢様と三人娘。1 ダイエットって……?

 ――数日後の昼休み。


 私は、理愛ちゃんと澪ちゃんと三人でお昼ご飯を食べていた。


「……そう言えば、最近ゆかりと真凛、食事の時間になるとどこかに行っているようだが、あの二人はどこに行っているんだ?」


 澪ちゃんが私たちに聞いてきた。


「……そう言えば、ゆかりちゃんたち、どこで何してるんだろうね。二人でどこかに行ってお弁当だけ食べて戻ってきているみたいだけど……」

「……どうせ、あの二人のことだから別に大したことじゃないでしょ。どうせなんか二人で新しい遊びでも始めてそれに夢中になってるとかじゃない? 飽きたらまたここに戻ってくるわよ」


「……まあ、それもそうだよね」


「……それよりも、たまにはこのお上品な三人でまったり過ごすのも、悪くないでしょ。アイツらおしゃべりだから、普段はこうやってゆっくり外を見ながらお弁当をゆっくり食べるなんてできないしね」


 ――外の桜もすっかり葉桜になって、外の様子は初夏の雰囲気を漂わせ始めていた。最近は上着を着ているのも暑くなってきた。そろそろ、衣替えの季節かな。


「……まあ、それもそうかもね。たまにはこういう、おだやかなランチタイムもいいかもね。……あの二人には悪いけど(笑)」


「うーん。澪はあの二人がいるランチに慣れてしまったから、ほんのちょっと、物足りないぞ……」


 ……だが、そのおだやかなランチタイムは、すぐに台無しになった。


「――ちょっと五十嵐さんっ! あの二人何とかしてよっ!」


 ……坂場(ばんば)さんがすごい剣幕で私のところに怒鳴り込んできた。


「……何よ坂場さん。びっくりするじゃないのっ……。……あの二人って、ゆかりと真凛のこと?」

「そうよっ! あなた、あの二人の飼い主でしょっ!」


「……飼い主って……。って言うか、今度はあの二人が何したのよ……」

「結女さんの前でホルモンの布教と称してこれ見よがしにホルモンを食べるのをやめさせてよっ!」


 ――何やってんのよアイツら……。

 見ないと思ってたら、そんなアホなこと、やってたのか……。


「あ―――……。首藤さん、ホルモンが嫌いなんだったっけ。……ごめんね? すぐにあのバカどもに言って聞かせるから……」


「……別に、結女さんはホルモン自体が嫌いってわけじゃないんだけれど……」


「……そうなの?だってこの間、ホルモンを見て吐きそうになってなかった?」

「……あれは、別に吐きそうになってたんじゃないのよ。自分の目の前で食べ物を見せつけられることが我慢ならなかっただけで……」


「……何それ?」

 ……意味が、分からない。


「――結女さんはダイエット中なのよっ! その結女さんの目の前でむしゃむしゃモグモグとおいしそうにモノを食べてること自体が問題なのっ!」

「ダイエット……? ……だって、首藤さんって全然太ってない……って言うか、むしろやせてるじゃないの。なのになんでダイエットなんか……」

「……そのやせた状態をキープするためにダイエットしてるのよ。……あの方のために」


「……あの方って……誰のこと?」

 それを聞くと坂場さんはしまった、と言う表情になって、

「そんなことはどうでもいいのよ。……とにかくあの二人に結女さんの前でモノを食べさせるのをやめさせて。あんな嫌がらせみたいなことををされたら頑張ってる結女さんがかわいそうだわ」


「あー……、うん。……なんてゆーか、ゴメンね……」

 ――ホント、なんてゆーか、うちのバカどもがすみません……。


 坂場さんの言葉に、申し訳なさでいっぱいになる私。

 だが、そんな中、坂場さんがおかしなことを言ってきた。


「……五十嵐さん。ついでに妹尾さんに朝菜さんも。……あなたたち、友達は選んだ方がいいわよ」


「……何それ、どういう意味?」


「……私たちはあなたたちのことは評価してるのよ。あなたたちは知性も教養もあるし、思慮深い。きっとあなたたちは社会の役に立つ、立派な大人になるわ。……でも、あの二人はどう? いつもへらへら遊びまわっていて人の迷惑なんか顧みない。あんなんじゃ将来ロクな大人にはならないわ」


 ――何よ、この人……。……確かに、普段のゆかりや真凛の行動に疑問な点はあったりするけれど、なんでたいして仲良くもないこの人にそこまで言われにゃならんのよ。


「……私はね、あなたたちのことを心配して言ってるの。あの二人みたいな子たちとつるんでいたら、きっと、あなたたちは彼女たちのように堕落してしまうわ。それじゃあ、あなたたちの将来のためにもったいない。あなたたちはもっと将来のコネクションとかのことも考えて、もっと有益な友達と付き合うべきなのよ……」


 ……だめだ。黙って聞いてたけど頭がくらくらしてきた。

 正直、もう限界。


「……有益な友達って、何? あなたは友達を役に立つか立たないかで選んでいるの?……それに、私が誰と付き合っていようとあなたにとやかく言われる筋合いはないんですけど……」


「そんな、私はあなたたちの将来のためを思って言っているのに……。あなたもせっかく努力して聖玉館に入ったんだったらあんな下品な人たちよりも、もっと品のいい、ハイクラスな人たちと付き合いたいとか、思わないの? ハイクラスな人たちと付き合えば、見える景色も自然とかわっていって、あんな子たちとつるんでいるのが馬鹿らしくなるわよ? あなたたちも私たちの仲間になって将来、安泰な人生を送りたいとか思わないの?」


 ……ダメだ、この人。話にならない。この程度の薄っぺらな認識で、「私たちは社会の上に立つ人たちだ」とか言ってたワケ?


「……ねえ、坂場さん。あなた、人の上に立つ人がどうこうとか言ってたけど、そもそもあなたって、働いたことってあるの……?」


「はあ? 何言ってるの?五十嵐さん。中学生が働けるわけないじゃないの……」


「……あなたがバカにした真凛は働いているのよ、放課後、自分のうちのお店で」

「なによそれ……。そんなのただの自分ちのお手伝いじゃないの。……そんなの誰でもできることじゃない……」


「――それじゃあ今日の放課後、真凛ちに行って働いてきなさいよっ! あなた、笑顔でお客様の注文を受けられるの? ちゃんと間違えないで注文されたものをテーブルに運べるのっ? お会計を間違えないで計算できるのっ⁉ 働いたこともないくせにエラそうな態度をとるんじゃないわよっ!」


「それは……。そんなことは、私たちのするような仕事じゃないから……」

 私の言葉に、もごもごと口ごもるように反論をする、坂場さん。


「そんなこと?……私たちの仕事じゃない? ……やっぱり、あなたは真凛の足元にも及ばないわ」


「……それってどういう意味よ……?」


「真凛が何でお店の仕事を一生懸命やってるか、知ってる? あの子はね、将来自分が会社を継ぐときのために働いているの。現場を間近で知って、お客さんや店員さんがどんなことを考えてるのかを知るためにね。そうやって真凛は自分がトップに立つ日のためにあなたが「そんなこと」ってバカにした現場の仕事を日々頑張っているの。漠然と将来親の仕事を継ごうとか考えているだけのあなたたちとは将来に対する覚悟が違うのよ、分かるっ⁉」


 そう言って、坂場さんの目をにらみつける私。

 すると、坂場さんは少し気まずそうな表情になった後に、私と目を合わせないようにしてこう言った。


「……分かったわよ。そのことについてはもう言わない。……とにかく、あの二人を金輪際(こんりんざい)結女さんの所に近づけさせないで。それだけ守ってくれたらもう、何も言わないから」


 そう言って、坂場さんは逃げるように私たちの前から去っていった。 


「……ちょっと……ムキになりすぎたかな……」


「ううん、由奈ちゃん。ナイスだと思う。由奈ちゃんが怒ってなかったら、たぶん私が由奈ちゃんの代わりにあの子に怒ってたと思う」

「澪も、そう思う。友達のために怒ることのできる由奈は、正しいと思う」


「……ありがとう、二人とも。……それにしても困ったものよね……あの人たち。あんなにわかりやすく庶民のことを見下して、あれで世の中渡っていくつもりなのかしら。……上に立つ人って、立場が下の人のことも考えて動かなききゃいけないもんなんじゃないの? その点で言ったら、真凛の方がよっぽど上に立つ人にふさわしいと思うわ」


 ……あんまり腹が立ったので、また、ムキになってしまった。


 すると、理愛ちゃんが、

「うん……。私もそう思うけど、あれって彼女たちの本心なのかなあ?」

 と言ってきた。


「……どういうこと?」


「うん……。……私、思うんだけど、あの子たちがあんなことをいうのは、周りの大人たちがいけないんじゃないかな、て思うんだ。……多分、あの子の周りの大人たちって普段からあんなことばっかり言ってるような人たちなんじゃ、ないのかなあ? ……だから、あの子たちもそういった大人たちに影響を受けて、自然とあんな言動になっちゃってるんじゃないのかなって思うんだ。……あくまで、私の想像だけど」


「……いや、理愛の言っていることはおそらく正しいと思うぞ」

「澪ちゃん」


「澪の親の知り合いの外交官にもああいうタイプの人間がいた。自分はエリートだ、自分は人の上に立つべき人間だ、と言う意識が強すぎていつも周りの人たちを見下しているような大人たち。……そう言った大人たちは偉そうにしているくせに、いつもすっごく空虚で、つまらない目をしていた。……坂場たちの目、そんな大人たちと同じ、哀しい目をしている」


「――なんだろう……それがホントのことだとしたら、すっごく、悲しいことだよね……」


 ……せっかくのさわやかなランチタイムが、重苦しい雰囲気に包まれてしまった。

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