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ゆな×ともっ! 夢見る彼女と天使な彼氏。~私の天使は最強です!~  作者: 根岸佳孝


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じゃりン子真凛ちゃん10 ごちそうさま!

「おーいっ!デザート持ってきてやったぜっ!」


 あらかた食事も終わってまったりしている私たちの所に真凛がやってきた。


「えっ!マジマジ?やったーっ! 何持ってきてくれたの?」

「さっぱり系のレモンとゆずのシャーベットだぜっ。……ちなみにこれに関しては俺のおごりじゃなくってニーナ先生からのおごりだからなっ。あとでみんなお礼言っとけよっ!」

「はーいっ!」


「……えっ? おかあさんが……?」

「ああ。いつも由奈と仲良くしてくれるみんなへのお礼もかねてだってさ」

「そう……なんだ……」

 ……おかあさん、そういうところに気が(つか)える人、なんだ……。


「……あ、あと御門。……これはニーナ先生からお前にトッピングしてやれって言われてきたんだけどさ……」

「えっ⁉ ニーナ先生が俺にっ⁉ なになに、なにくれんのっ!」


 そう言って、真凛が取り出して御門くんのシャーベットにたっぷりと振りかけたのは、一見チョコソースのように見せかけて――


「……ナニコレ。……これって、焼肉のタレじゃん……」

「ニーナ先生から今日のお礼だってさ♡ 全部完食したら今日のことは水に流してやるってさ」

「うへぇ……。……でも、まあ、しょうがないかぁ……」


 それぐらいされても仕方がなかった今日の御門くんへの仕打ちに、みんなは大笑い。……場の空気が一気に(なご)んだ。


「俺も八時過ぎてもう上がりだから、みんなと一緒に食べてもいいか?」

「うんっ!もちろんだよっ!」


 ……なんだかんだで騒動もあったけど、今日のお食事は楽しかったし、おいしかった。


「――ねぇ、真凛?」

「……なんだ?」

「今日はありがとうね? すっごく、おいしかったし、真凛のおかげで楽しい時間を過ごせたよ」

「いいってことよ。……俺も、みんなの喜ぶ顔が見られて、気分良かったしな」

 真凛はそう言って、いつものような無邪気な笑顔でにっこりと微笑んだ。


「……なあ、由奈?」

「どしたの?真凛。」

「……ニーナ先生っていい人だな。……由奈にごちそうしてくれたお礼にって、自分の分は高い料理とか酒を、いっぱい頼んでくれたんだぜ?」

「――そうだったの?」


「割引しますって言ったのに、『きちんと頑張って働いている人たちにはきちんと対価を払いたい』って言って全額きっちり払ってくれたし――」


 ……あ、もしかして、今日、わざわざ真凛の店に食べに来たのって、単にあたしへの当てつけとかそんなんじゃなくって、真凛のお店にお金を落としていくため、だったとか……?


「勝木鮎美みたいなカッコいい大人のキャラクターを書ける人って、やっぱりカッコいい大人の人なんだなあって、なんだかちょっぴりうれしくなったぜ。 キャラクターと作者の人格は別だ、って言ってもやっぱりカッコいいキャラを書く人がどうしようもないやつだったら幻滅するもんな」


「えーっ?でも、おかあさんて家じゃあかなりダメダメだよ? だらしないし、あまえんぼだし、私がいないと朝もまともに起きれないんだよ?」

「……親なんて家じゃそんなもんじゃね? 俺のオヤジだってあんな感じのダメオヤジだけど、仕事に関してはきっちりとこなしてるしさ。 ニーナ先生、ペン一本で由奈を育てて私立校にも通わせてくれてるんだろ? そんな人が全部ダメダメってこたぁないだろ」


 ――そう、なんだよね……。


 ……普段はダメダメなところばかり見ているから忘れがちになるけれども、おかあさんは自分一人の力で私のことを育ててくれている、立派な一人の大人だってこと。

 ……真凛のおかげで、こんな当たり前のことに気付くことができたかも。


「……モグモグ……。……意外とそこまで悪くないな、この組み合わせ……」


 ……焼肉のタレのかかったシャーベットを食べながら、御門くんがつぶやいた。



「――それじゃあみんな、マリリンに今日のお礼をゆうぜっ! せーのっ!」


「「「「「「「ごちそうさまでしたっ!」」」」」」」


 店の前の駐車場。ゆかりの音頭取りでみんなが真凛に今日のお礼を言う。

「おうっ!腹いっぱいになったかっ!」

 真凛と大鉄さんが満足そうな表情で答える。


「真凛ちゃん、今度は家族連れて食べに行くねっ! 今度は売り上げにちゃんと貢献するから」

「僕も。うち、家族が多いから、真凛さんちの売り上げの役に立つと思う。それに、うちの母と父も大鉄さんに会いたいだろうと思うし」

「ありがとよ。そう言ってくれると、助かるぜ」

 次は家族を連れてくると真凛と約束する理愛ちゃんと麻生くん。


 その一方で――


「な―なー真凛? 次はいつおごってくれるの?」

「次は一週間後くらい?」


 ……ずうずうしくも次もおごってもらうつもりでいるらしい、御門くんと大井川くん。


「そんな頻度(ひんど)でおごってたらうちが破産するわっ!……つーかお前らはもう来るなっ! ……まったく、お前らもちょっとは智と理愛を見習えよ……」

 ……もう、この二人どうしてくれようか、と言う表情であきれ返る真凛。


 ……最後まで、オバカーズ二人はおバカだった。

 

「――それじゃあなっ、みんな、また明日っ!遅いから気をつけて帰れよっ!」

「また明日ね―――――っ!」

 ――駐車場で真凛と大鉄さんに見送られながらみんなで家路につく。


 ――理愛ちゃんと澪ちゃん、男子二人とは駅で別れる。

 

「――それじゃあ由奈、ニーナちゃん、麻生くん。まったねーっ!」

 ゆかりとも途中で別れて、麻生くんと私たち親子の三人で帰ることになった。


「いやーっ、ホントにおいしかったわね、真凛ちゃんちのお店。料理もお酒もおいしくて……最高っ!」

 すっかりベロンベロンに酔っぱらってしまったおかあさんが足元ふらふらで歩いている。


「まったく……。おかあさん、どれだけ飲んだらこんなにフラフラになるのよ……」

「うーん……。お酒だけで一万円から一万五千円の間くらい?」

「……値段で言われてもよくわからないから……」


「おっととっと……。危ない危ない♡」

 おかあさんの足元がよろける。

「……大丈夫ですか?ニーナ先生?」

 麻生くんが、倒れそうになったおかあさんのことを支える。


「うん。だいじょぶだいじょぶ。……優しいねぇ、ともくんは♡」


 ……ともくん?


「おかあさん。……ともくんって……。麻生くんのこと?」

「そだよーっ?『(さとし)』を音読みして、ともくん。かわいいでしょ?」


 ――また、そんな勝手にあだ名なんかつけて……。


「ごめんね?うちの酔っ払いが迷惑かけて……。」

「ううん、うちの母も酔っぱらった時はこんな感じだし、別に気にしなくってもいいよ」


 ――そうは言っても……。ホント、ごめんなさい。


「――おーっ!帰ってきたぞわが愛しの我が家よっ!」

「ちょっとォっ!ご近所迷惑でしょっ!」

「てへぺろっ♡ めんごめんご♡」

 可愛い子ぶってテヘペロをするおかあさん。……なんかムカつく。


 ……おかあさんの醜態を見て、私は大人になってもお酒を飲むのはやめようと、今、心に決めた。


「――それじゃあ、僕はこれで失礼します」

「ごめんねぇ? 麻生くん、最後まで迷惑かけて……」

「あ、そうだ、ともくん、ちょっと待ってよ」

 おかあさんが麻生くんを引き留めた。

「由奈ちゃん、昨日、編集さんがくれた岩手のお菓子があったでしょ。かもめの玉子とかびっくり焼きとか。今日のお詫びにどれかともくんに持たせてあげてよ。いいかな?」

「あ、うん、いいよっ」


「いいですよ、そんな、気を遣わなくっても……」

「いーのいーの。うち、そういうのいろんな人からもらうし。女の子の二人暮らしでお菓子がいっぱいあってもデブの(もと)になるだけだから少し持って行ってよ」

 

「わかりました。それじゃあありがたくいただいていきます」


「それじゃあちょっと待っててね?……っと、おっとっと……」

 家の中に入ろうとしたおかあさんの足がもつれる。


「あーっ、もーっ、おかあさんッ⁉ 危ないからそこで待っててっ!お菓子は私が取ってくるから……」

「えへへっ、おねがーいっ♡」


 ……まったく、みっともないなあ……。


「お待たせ―っ、せっかくだからこれ、二つとも持って行ってよ……」

 そう言って、玄関を開けたその時。


 おかあさんが、麻生くんの頭をなでなでしているのが見えた。


「あ、由奈ちゃん、ありがとうね?」

「……何やってんのよおかあさん、麻生くんの頭をなでなでなんかして……。失礼じゃないのよ……」

「今日お世話になったお礼♡ いい子にはなでなでしてあげないとねっ♡」

 ……そんな……。幼稚園児じゃないんだから……。


「……ともくんも、すっかり大きくなったよねぇ……」

 ……大きくなった?麻生くんが?……いや、麻生くんて私とおんなじくらいの身長だけど……?

 ……ていうか、おかあさんの今の言い方だと、まるでおかあさんが昔から麻生くんと知り合いだったみたいじゃない……?


「――はい、それじゃあお菓子♡ お母さんたちに、よろしくねっ!」

「ありがとうございます、ニーナ先生。それじゃあ五十嵐さん、また明日、学校でねっ!」

「あ、うんっ。それじゃあまた明日ねっ!」


 ――そして私たちは、麻生くんの姿が見えなくなるまで、彼のことを見送った。


「あーあっ!今日はおいしかったっ! こりゃ、あしたは体重計に乗るのが怖いわっ!」

 家に入ってリビングに上がるなり、ソファーの上に飛び乗って仰向けに寝っ転がるおかあさん。


「あーっ!もーっ! そんなかっこうで寝っ転がったら服がしわになっちゃうじゃないのっ!」

「大丈夫。この服もうクリーニングに出すつもりだったから……」

「そういう問題じゃないでしょ? もーっ……。だらしがないんだから……」


「…………………………」


 ……リビングから、おかあさんの声がしなくなった。


「……おかあさん?」

 私がリビングに戻っておかあさんに声をかけると、


「……すぅ……すぅ……すぅ……」


 ……おかあさんはソファーの上で静かな寝息を立てていた。

 ホント、だらしがないんだから……♡


 私は、毛布をおかあさんに掛けてあげて、そのまま寝かせてあげることにした。


 そう言えば、さっきおかあさんが麻生くんに言ってたのは何だったんだろう。


『……ともくんも、すっかり大きくなったよねぇ……』


 ……深く考えても仕方がないか。どうせ、酔っ払いの言ってたことだし。

 多分、なんかの思い違いなんだろうな。


 ――それにしても、今日はいろんなことがあった一日だったな。


 真凛が働き者でしっかり者だってことがわかったり、おかあさんがおこちゃまなだけじゃない、立派な大人の人だってことを再確認できたり……。


 いろんな人のいろんな一面が見えた、一日だった。


 ……そう言えば、ゆかりが言ってたな。

「家の中でくらい『ママ』って呼んであげても、いいんじゃない?」って……。


 ――そんなことを思い出した私は、眠るおかあさんの耳元に、


「……おやすみなさい、ママ……♡」


 と、小さくつぶやいてリビングの明かりを消した。

ちなみに「デブの素」は「味の素」とおんなじ発音ですね。

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