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ゆな×ともっ! 夢見る彼女と天使な彼氏。~私の天使は最強です!~  作者: 根岸佳孝


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じゃりン子真凛ちゃん9 ニーナちゃんは名探偵?

「……勝負って……オイラとニーナ先生が?」


 おかあさんからの突然の申し出に面食らう御門くん。


「ええ、そうよ? なんか大鉄さんの話を聞いてたらなんかおもしろそうだから御門くんと勝負してみたくなっちゃった♡ それに、天才ギャンブラー少年なんて、小説のネタになりそうじゃない?」


「ちょっ、ちょっとォ、おかあさん、何言ってるのよ? 御門くんと勝負しようだなんて、何考えてるのよっ⁉」

「大丈夫よぉ。ちょっとしたお遊びお遊び♡」

「お遊びって……。……正直私としては御門くんとおかあさんにはあんまりかかわって欲しくないんだけど……」


 そんな私の心配をよそに、勝手に御門くんと話を進めるおかあさん。

「御門くんが賭けるのはさっき御門くんがゲットしたお肉の権利にしましょうか。私が賭けるのは、そうねぇ……。……御門くん、何か私にしてほしい事って、あるかしら?」


「えっ⁉ 俺が勝ったらニーナ先生がなんかしてくれるのっ⁉」

「なんでも……ってわけにはいかないかもだけど、私ができる範囲のことだったらしてあげるわよ?」

「マジかっ!」

 おかあさんの言葉に、小躍りする御門くん。

「ニーナ先生が……。オイラに、何でも……♡ ……でへでへでへ…………♡」

 ……何やら、よからぬことを妄想してにやにやと笑っている。


「……イヤらしいことを要求したら、私がタダじゃおかないわよ?」

「……その時は僕も協力するよ」

 ……そんな御門くんの後ろで、万が一の時のために指をポキポキ鳴らしながら待機している、私と麻生くん。

「――んな事はさすがに要求しねぇよっ! ……一瞬、チラッとは考えたけど……」


 ……考えとったんかいっ!


「……でも、いざなんかして欲しい事って考えると、意外と悩むよなぁ……。うーん、うーんっ……。有名作家に自分の言うことを何でも聞いてもらえるなんてこんなチャンス、めったにないだろうし……」


「……珍しい。御門っちが悩むなんて……」

「――案外、人って目の前にいきなりニンジンをぶら下げられると、どうしていいか分からなくなっちゃうもんなんじゃないの?」

 珍しいものを見る目で御門くんの様子を見つめる、ゆかりと理愛ちゃん。


「……それじゃあ、こういうのはどうかしら」

 悩む御門くんに、おかあさんが提案をする。

「……ニーナちゃんが負けたら、御門くんが欲しいだけサインを書いてあげる、っていうのはどう?…… もちろん、転売しても文句は言わないわ?」

「えっ? それって本当かっ⁉」

「ええ、女に二言はないわよ?」

「……よっしゃあっ! それじゃあ決まりだなっ! なんだか燃えてきたぜっ! ……それじゃあ、さっそく一勝負といこうぜっ!」

 そう言って御門くんは自分のポケットから花札を取り出した。


 ……だが、おかあさんはその花札を一瞥(いちべつ)すると、大鉄さんに向かって、

「……それじゃあ大鉄さん。大鉄さんの持っている花札、貸していただけますか?」

 と言いだした。


「え?……別にいいけど。……花札だったら目の前にあるじゃねぇか?」

 御門くんの花札があるのになんでわざわざ自分のものを使いたがるのか、不思議に思う大鉄さん。


 ……だが、御門くんの方はおかあさんの言葉にあからさまに動揺しはじめた。


「……ちょちょっとっ、ニーナ先生っ⁉ なんでわざわざテッちゃんの花札を使うんだよっ! ここにオイラのがあるんだからこれでやればいいだろっ!なのに、なんでわざわざ……」


 ……するとおかあさん、御門くんに対してクールな視線を向けて、

「……あら、だって枚数の足りない花札なんて、危なくて使えないじゃない?」

 と、冷たく言い放った。


「……枚数が足りないって……。……あっ!イカサマってことかっ!」

 真凛がおかあさんの言葉の意味に気が付いた。

 ――その言葉に大井川くんを除く一同の冷たい視線が御門くんに注がれる。


「……え? いやぁ……なんというか、あはは……」

 おかあさんにイカサマを見破られた御門くんは完全に目が泳ぎまくっている。


「……テンメェ……。そうだったのか……。やりやがったな、ボウズ……」

 だまされた大鉄さんが、顔を真っ赤にして怒っている。


「――チクショウッ!」

 みんなの冷たい視線に耐えられなくなった御門くんが外へ逃げ出そうとした。

 ……だが、そんな彼のことを、われらが守護神(しゅごしん)は許さなかった。

 出口のところにいた麻生くんが御門くんの首根っこを無言でひっつかむ。


 「――うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」


 ――そのまま麻生くんに投げ飛ばされ、組み敷かれる御門くん。……そのポケットやベルトの隙間からは、何枚もの花札がポロポロと落ちてきた。


「……やっぱりね。御門くんの花札を見た時、何か違和感があるなって思ったのよ」


「――でも、どうしておかあさん、御門くんがイカサマしてるって、分かったの?」

「……御門くんが古いタイプの花札を使ってたのがアダになったわね」

「……どういうこと?」

「このタイプの花札は、ケース本体の大きさよりも若干札があふれるように作ってあるから、フタを閉めた時にフタがケース本体から若干高く浮いたような感じで閉まるのよ」

「……あ、ホントだ」

「だけど、御門くんの持っていたケースはフタとケースがきれいにぴっちりしまっていた。……つまり、このケースの中身は明らかに足りてなかったっていうことよね」


「……チキショウっ……! おいらがじいちゃんの花札さえ、使っていなければっ……!」


「さっすが、ニーナ先生……。観察眼が人と違う……♡」

 おかあさんの説明に、名探偵を見るような目でうっとりと見つめる、理愛ちゃん。


 ――おかあさんが御門くんのインチキを暴いたことで、霜降りザブトンの権利はおかあさんの物になった。


「――それじゃあニーナ先生、霜降りザブトンは先生の席に持ってけばいいんすよね?」

「いいえ、それはこっちの席に持ってきてちょうだい。……あと、真凛ちゃん、肉切ばさみも持ってきてくれないかしら?」


「……肉切ばさみ……?……あっ!」

 ……おかあさんの言葉に何かを察した真凛、にっこり笑って、

「わっかりましたっ! 今すぐザブトンとハサミ、お持ちしまっすっ!」

 そう言って、キッチンの方へと戻っていった。


 ――数分後、私たちは高級霜降りザブトンを目の前にしたおかあさんのことを取り囲んでいた。


 ……さすが高級。今まで真凛が食べさせてくれたホルモンたちも十二分においしかったけど、この高級ザブトンは見るからにそれとは格が違うのがわかる。


 野性味あふれるおいしい油がじゅわじゅわとジューシーにしみだしてくるホルモンに対し、このザブトンは優しくて甘い油がピンクの肉汁とともにじんわりと上品にしみだしてくる。

 ……見ているだけで口の中によだれがたまってくる。


「……そろそろいいかしら、真凛ちゃん」

「そうっすね。ちょうどいい感じっすね」

 そう言うと真凛は、焼きあがったザブトンをおかあさんの目の前の大皿に乗せた。

「スゲェ……。肉なのにキラッキラ、してやがるぜ……」

 そのフォルムの見事さに、見ているみんなからも感嘆の声が上がる。


「……それじゃあ真凛ちゃん、お願いできるかしら?」

「わっかりましたっ!……で、何等分にしますか?」

「そうねぇ……。七……いや、八等分でお願いできるかしら?」

「八等分っすね。了解っす!」

 せっかくの見事な大ザブトンだったが、真凛の手によって八つのキラキラと肉汁の輝く星のかけらに切り分けられた。


「それじゃあ、みんなに一つずつ、っと。……はい、どうぞっ♡」


 おかあさんの手によって、理愛ちゃん、澪ちゃん、麻生くん、大井川くん、ゆかり、そして私の皿の上にそのかけらたちが配られていく。

「それじゃあみんなでいただきましょうか。それじゃあどうぞ、召し上がれ♡」


「えっ?いいの?おかあさん……?」

「いいのいいの。おいしいものはひとり占めするよりも、みんなで食べた方が何倍もおいしいもんね。真凛ちゃんもほら、あーんして♡」

 残りの二切れのうちの一切れが、真凛にもふるまわれる。

「……すまないっす。いただきますっす!」


 おかあさんが分けてくれた霜降りザブトンの小さな一切れをみんなで口の中に放り込む。


「「「「「「うんま―――――――いっ!」」」」」」 


「何これすっごっ! 今までの肉もめちゃクソうまかったけど、これは別ベクトルでメチャメチャうまいじゃんっ!」

「肉の油が甘くてとろける……♡ 澪はこんな贅沢(ぜいたく)なモノを食べてしまっても、いいのだろうか……♡」

「ニーナ先生が分けてくれたお肉……♡ もう、これは一生ものの思い出だわっ……♡」

「売ってる俺ですらめったに食べられないもんだからな。ちゃんと味わって食ってくれよっ?」


「……ちきしょう……。あとちょっとで、おいらがあの肉を一人占め、できたのに……。ガクッ。」

 大鉄さんに拘束されて、みんなが霜降りザブトンを食べているのを指をくわえてみていることしかできずに悔しがる御門くん。


「さてっ、と……」

 最後に残ったひとかけらをおかあさんがお箸でつまんだ。……当然、おかあさんがそのひとかけらをパクり……。と思っていたら、おかあさんはその肉を持ったまま、拘束されている御門くんの前に移動してこう言った。

「はい、御門くん。あーんして♡」

「えっ……?ニーナ先生、俺にこれ、くれるのかよ……?」

 思いもよらなかった展開に、当の御門くんもあっけにとられている。


「ちょっとおかあさん? 何やってんのっ⁉」

「そうっすよニーナ先生っ⁉ そいつはオヤジをだまして肉をだまし取ろうとした、極悪人すよっ!」

「ちょちょっとニーナ先生っ⁉ こいつにそんなもんやっていいのかよっ⁉」

 御門くんにダマされた大鉄さんも当然、反発する。


「あら、このお肉の権利は私のものになったから、それを誰に分けてあげても自由でしょ?」

「そりゃまあそうっすけど……」


「……その代わり御門くん、約束して。……もう二度と、素人さんをだますようなあくどいマネはしないって。 あなたは頭がいい。回転も速い。だけどその頭の良さをこんなくだらないことに使わないで。もっと世のため人のため、他の人が喜ぶようなことに使ってほしい。こんなことであなたのせっかくの才能が浪費されちゃうのはもったいないわ」


「ニーナ先生…………」

 おかあさんのお説教に、御門くんの表情が少しずつ、変化していく。


「このお肉を食べたら、大鉄さんにごめんなさいしましょう。……それからみんなにも。せっかくの楽しいお食事会なのにイヤな気分にさせてごめんなさいって」


「……でも、俺……許してもらえるのかな……」

 ……あれ?御門くんがちょっぴり、しおらしい。……こういうところも、見せるんだ、意外……。


「……最初っから許してもらおうなんて、考えちゃダメ。それだと、反省することよりも許してもらうことの方が目的になってしまうから。最初は許してもらえなくっても、相手の気持ちを考えて、誠意をもって反省していれば、そのうちきっとわかってもらえるわよ。あなたはまだ若い……って言うか、法律的には児童と言っていい、まだまだ子供なんだから。立ち止まってやり直すことはまだまだできるわ」


「ニー……ナ……せん……せ……」

 おかあさんの言葉に、目に涙を浮かべて顔を真っ赤にする御門くん。

「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! ニーナ先生ーっ! おいらが間違ってたよーっ!」

 そう言っておかあさんの膝の上に突っ伏して泣き出す御門くん。

「わかってくれたのね、御門くん。さあ、このお肉を食べなさい。そしたら、みんなに謝るのよ?」

「うん……ムシャムシャゴックン……。……すっげぇおいしいよ、ニーナ先生、ありがとう……」


「なんか、すげえいい話やな……」

「うん。澪、ニーナ先生の言葉に感動した。さすが、由奈のおかあさん」

 ゆかりや澪ちゃんはおかあさんと御門くんの様子を見ながら感動している。

 ……だけど、何だろう。私はこの様子を手放しでは感動できない。もちろん、よその男の子が自分の母親に甘えているっていうのがなんかイヤ、と言うのもあるんだけど……。なんて言うか、それだけじゃない、ぞわぞわしたものを感じる。


「――それじゃあ御門くん。みんなにごめんなさい、しましょうか?」

「うん……♡ でも、ちょっと待って、ニーナ先生?……俺、まだちょっと勇気が出ないから、もうちょっとこのままでいさせて……?」

「あらあらどうしたの御門くん? 急に甘えんぼさんになっちゃって……。そんなに甘えんぼさんだと、他のみんなに笑われちゃうわよ?」

「……オイラ、笑われてもいいもん……。ニーナ先生の膝の上……あったかくって柔らかくって、すっごく、安心できるんだもん……♡」

「あらあら仕方がないわねぇ。……それじゃああとちょっとだけよ……?」


「…………ねぇ?御門くん? まだ勇気は出ない?」


「うん……。あとちょっとだけ♡」


「……もうそろそろ勇気が出たんじゃないかしら?」


「あと……あとちょっとだけっ!」


「……ニーナちゃん、もういい加減足がしびれてきちゃったんだけど……」


「あと五分……いや、あと一分でいいからニーナ先生成分をチャージさせてっ! そうすればきっとこの臆病なオイラもみんなに謝る勇気が出てくると思うんだ………………」


「……アンタ……。人の母親に娘の目の前で何やってるのよ……」


「あっ……。えーっと……。五十嵐……さん……?」


 ……その後、御門くんがどういう目に遭ったかは言うまでもない。


 ……だけど、おかあさんはその後、こんな事を言っていた。


「まったく、御門くんてば、素直じゃないんだから……。……まあ、あれぐらいの年頃の子なんて、あんなもんかも知れないけどねっ♡」


 ……おかあさんの目って、結構、節穴?

昨日は初めての星評価をいただきました。

その結果、日間ランキングの現実世界恋愛の連載部門で初めてランキング入りをすることができました。

この場をお借りして、評価していただいた方に感謝いたします。


これからも楽しい作品作りに努力してまいりますので、どうぞこれからもご愛読のほど、よろしくお願いいたします。

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