じゃりン子真凛ちゃん3 店長さんは……?
「――そんなわけで今夜の晩ごはんは友達んちのお店で食べてくるから。……どこでって? 環七の脇の方のどらン猫亭。あそこって友達の実家がやってる会社なんだって。――えっ⁉ いいなぁ? ママも一緒にホルモン食べたいって⁉ ……だめよ。ただでさえごちそうしてもらうんだから。家族も一緒だなんてそんなずうずうしいことできるわけないでしょ。――えっ?私ばっかりずるいって⁉ ……そんなこと言ってもしょうがないでしょ……。……あーっ、もーっ!子供みたいなダダこねないのっ! それじゃあねっ!もう切るからねっ!」
――通話のスイッチを切ったら、疲れがどっと押し寄せてきた。
……晩ごはんはいらないよって電話しただけなのに、なんでこんなに疲れてるんだろう、私……。
「……なになに? 今の電話、ニーナちゃん?」
「うん……。どらン猫亭行くって言ったら、私も行きたいってグズグズ言いだして大変だった」
「あははっ、ニーナちゃんらしいや」
「――ニーナちゃんって……誰だ?」
真凛がたずねる。
「由奈のママさんだよ。おっもしろい人なんだよ? 何て言うか、子ども心を忘れていない人だよね。きっと、真凛とも相性がいいと思うよ?」
――子ども心を忘れてない、って言うか、……単に幼稚なだけなんだけどね、あの人の場合……。
――そして、放課後。
私たちヒルメシーズと、それから真凛が誘った麻生くんとで連れ立って真凛の店に向かった。
「――ねぇ、海渡さん、本当に僕も来ても良かったの?」
麻生くんが遠慮がちに真凛にたずねる。
「真凛でいいって。遠慮するこたぁねえよ。智にはいつも昼飯の時に机を貸してもらってるしなっ! それに……」
――そういう真凛の視線の先には……
「楽しみだなぁ、御門♡」
「今日は全部食いつくしてやろうぜ、大樹!」
「……何か知らんけどいつの間にかついてきちゃってるヤツもいるし……」
誘ってもいないのになんか勝手についてきた、御門くんと大井川くんの姿があった。
「でもさ、真凛ちってうちらの隣の駅だったんだね。世間は狭いってゆーか……」
「そうだな。由奈たちの小学校と智の小学校と俺の小学校が隣の学区なんだもんな。案外俺たち、どっかで顔を合わせてたのかもしれないよな。――っと。ここだぜ?」
「「おおーっ!でっけーっ!」」
真凛の指さす方を見て、御門くんと大井川くんが歓声をあげる。
――駐車場もある広いスペースに建っている大きな建物。CMでよく見る、額に三日月マークの猫の看板が目印の『ホルモン焼肉どらン猫亭』がそこにあった。
「――それじゃあ行こうぜ。みんなついて来なっ!」
「「「「「お―――――っ!」」」」」
真凛の声を合図にみんなで店の中に入る。
「みんな、たっだいまーっ!」
真凛が店員さんたちに声をかける。すると、店員さんたちが一斉に、
「あっ、店長、おかえりなさーいっ!」
と笑顔で挨拶をしてきた。って、店長……?
「……ねぇ、真凛。店長って……真凛のこと?」」
いきなりの事実に私たちが戸惑っていると、
「ああ。小さいころから店の手伝いをしてたらいつの間にかそういうことになってたんだよ。俺が店に出てるとお客さんの受けもいいしな。一応法律上の責任者は俺のオヤジだけどな」
「そうなんだ……」
「ある意味、これもうち流の帝王学って奴よ。将来会社を継ぐにあたっては現場のことをしっかりと分かってないといけないからなっ!」
そう言って、屈託のない笑顔で笑う真凛。
――なんだろう。……すっごく頼もしい。この笑顔。
「――それじゃあ俺は着替えてくるからさ、向こうの一番奥の座敷席で待っててくれよ。着替えたら肉の準備もしてくるからさ」
「わかった、行ってらっしゃい」
「――すごいね、由奈ちゃん。真凛ちゃん、店長さんだって」
理愛ちゃんが感心した様子で言う。
「そうだね。びっくりだよね。私たちと同い年なのに。」
――だけど……。びっくりはしたけれど「意外」って感じではないかも。真凛って見るからに頼りになるガキ大将って感じだし、こういうお店を切り盛りしていても違和感がない感じがする。
「……すごいな由奈。店中がおいしいにおいであふれている。……澪はこんなの生まれて初めてだ」
澪ちゃんがそう言って目をキラキラと輝かせている。
「澪ちゃんは焼肉屋さんに来るのは初めてなの?」
「うん。澪はずっと海外に住んでいたから日本のこういった店に来たのは初めてだ。だから今、澪はすっごくわくわくしている。真凛がこれからどんな料理を出してくれるのか、すっごく、楽しみだ♪」
……澪ちゃんって、普段はクールな感じだけど、こんな風に素直でかわいらしいところもあるんだね。
「――制服のまんまで来ちゃったのは失敗だったかな?」
と麻生くん。
「そうだね。一度着替えてから集合でもよかったかもね」
と私。
するとゆかりが、
「今更そんなん言ってもしゃーないって。そんなの制服にファ〇リーズぶっかけて後でクリーニングすればへーきへーき♡」
と言ったので、
「そうだね、ここまで来ちゃったんだから、覚悟を決めてくかっ!」
と私も答えた。
「――いや、むしろここは制服に焼き肉のニオイをブンブンさせたまま学校に行って他のヤツらををうらやましがらせようぜっ!」
「そうだなっ!焼き肉のニオイであしたの昼メシが進むしなっ!」
……と、御門くんと大井川くん。……もう、この二人はほっとこう。




