じゃりン子真凛ちゃん2 ノブレス・オブリージュ?
「――何を大騒ぎしているの、あなたたち」
首藤さんが坂場さんたちをにらみつけてきた。
「騒いでるのはこの子たちですよっ、結女さんっ……」
「……先に挑発したのはあなたたちでしょ? そうやって庶民の皆さんのことを見下してかかるのはお下品ですわよ?」
――あら、首藤さんは案外話の分かる子なのかな。……「庶民」って言葉が気になるけど……。
「わが名門聖玉館学園が何故庶民の方々に門戸を開いているのか、分かりますか? ……それは地位や身分にかかわらず、優秀な人材を集めるため。――ひいては私たちの為なのです」
――んん? ……「私たちの」為?
「優秀な人材との出会いは、将来社会の指導者になることを義務付けられている、私たちにとって必要なこと。……そして、そんな庶民の皆さんをいつくしみ、温かい心で見守ることが、指導者たる我々の義務、……そう、ノブレス・オブリージュの一環なのです」
「……でもお言葉ですが結女さん。ほかの子たちはともかく、この二人が我々の求める、優秀な人材になるとお思いですか? ……私には、とてもそうとは思えませんが……」
風間さんの反論に、首藤さんは一瞬、言葉を詰まらせるが、
「……寛容の心が大事です。……今はたとえ下品でどうしようもない方でも、この学園での学びを通じて立派なレディになるかもしれません。辛抱強く待つのです。それこそが我々支配層の義務なのです……」
……何つーか、坂場さんたちとは違う角度で、私たちのこと、バカにしてない? ……むしろ、丁寧な言葉を使ってる分、首藤さんの方がたちが悪いってゆーか……。
「なんだよ首藤! ……お前、ツンケンしてるヤツだと思ってたら、案外話のわかるやつじゃーんっ!」
――いや真凛、アンタ完っ全に首藤さんに見下されているよ?
「よしっ!友情の証だっ!……ホルモン焼き、食うか?」
そう言って自分のドカベンを首藤さんに差し出す真凛。
「……うっ……。」
――首藤さんが真凛のホルモン焼きを目の前にした途端、吐き気を催した。
「……ごめんなさい、海渡さん。ちょっと気分が悪くなってきたわ。……ほむら、雷華、虹虎、私たちはカフェテリアに行きましょう。……この教室は空気が悪いわ。」
そう言って逃げるように真凛の前を後にする、首藤さん。
その様子を見ていた坂場さんが、真凛を怒鳴りつける。
「ほらっ!あんたがホルモン焼きなんて下品な食べ物を食べてるから、結女さんの気分が悪くなったじゃないのっ!」
「なんだとーっ!ホルモン焼きのどこが下品なんだっ!うちのおバァはなっ!ホルモン焼き一本で俺たちを養ってきたんだよっ! 俺の悪口は言ってもいいけど、ホルモン焼きの悪口は言うなっ!」
――いや、あんたさっき「下品最高」とか言ってたじゃん……。
「そういうド根性なところが下品なのよっ! だから成り上がりの庶民は嫌なのよっ! 話が通じないから……」
「んだと―っテメェっ!このホルモンを一口食ってみやがれってんだっ! テメェのそのマルチョウみたいにネジくれ曲がった根性、叩き直してやるっ!」
「嫌よっ!動物の内臓なんて、食べたくないわっ!」
「てめぇらがありがたがってるフォアグラだって鳥の内臓だぞっ! ましてやあれは病気になった鳥の肝臓じゃんっ!」
「気持ちの悪いこと言わないでよっ!……私、フォアグラ好きなのにっ!そんなこと言われたら気持ち悪くて食べられなくなっちゃうじゃないのっ! ……もう、話にならないわ。海渡さん、園宮さん。あなたたちは私たちにかかわらないで。……ううん、私たちの視界に入らないで。それがお互いにとって一番いいことなのよ」
そう吐き捨てて、坂場さんたちはカフェテラスの方に行ってしまった。
「なんだぁ? あいつら、ケッタクソの悪いやっちゃなぁ ……」
「ほんとホント、失礼だよね、マリリン」
――いや、アンタらも大概だし正直言ってどっちもどっちだと思うよ……?
……あ、そうだ。今日の晩ごはんはいらないっておかあさんに連絡しないと。




