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ゆな×ともっ! 夢見る彼女と天使な彼氏。~私の天使は最強です!~  作者: 根岸佳孝


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麻生くんは、スゴいのだ。6 バスケで勝負!その2

 ――試合再開。


 御門くんの精神攻撃のせいで片岡くんのメンタルはガタガタになってしまった。……いけ好かないやつだとは思ってたけど、ちょっと、かわいそう。……三田さんはもっとかわいそう。


 思わぬ形で彼女バレ&彼女とのイチャイチャを見せつけられた片岡くんのファンたちはすっかりシラケ切ってしまっていたが、すぐに気を取り直して、伊達くんを全力で応援する方向に気持ちを切り替えてきたようだ。……あんたら、イケメンだったら誰でもいいんかい…………。


 …………だが、次の犠牲者はその伊達くんだった。


 ――今度は大井川くんが伊達くんの周りをうろうろし始めた。

「なんだよ大井川、お前も御門みたいに俺の邪魔するのか? だが、残念だったな、俺は片岡みたいに隠してることも後ろ暗いことも何にも…………」

 伊達くんが余裕の表情で大井川くんにそう言った、次の瞬間――


「――う〇こっ!」

 ……大井川くんがバカになった。


「あんこいんこう〇こえんこおんこ……」

 あっ……あれはっ、小学校低学年のバカ男子の禁断の必殺技、「()んこ五十段活用」っ⁉

 ……何気ない単語の中に放送禁止用語が何個か混じる、大変キケンな技だ。……特効、五十パーセントの確率でお母さん、もしくは先生を召還し、自身がダメージを受ける。

 ……でも、なんで大井川くん、こんなアホな技を……。って思って伊達くんの方を見てみると――


 ……伊達くんが完全にツボに入っている。笑いをこらえて死にそうになっている。


「……やっぱり思った通りだぜっ」

 御門くんがドヤ顔で言う。

「あーゆースカしたヤツは男子の通過儀礼を通過してないからこういった技に弱いんじゃないかと思ったら、予想通りだったぜっ!」

 そう言って、アニメのヒーローのようなポーズを決めて、カッコをつける御門くん。

 ――いや、やってること、ちっともカッコよくないよ……。

 ……当たり前だが二人は女子たちから大ブーイングを受けた。だがそんなブーイングの嵐もどこ吹く風で二人はニヤニヤしている。


 大井川くんは一発退場は免れたものの、今度おんなじことをやったら即退場、と言うことになった。

 ……だが、これで伊達くんと片岡くん、二人の精神とチームワークはガタガタになった。

 その(すき)に、大岩くんと三星くん、そして麻生くんの正統派の攻撃をする三人のコンビネーションがつながった。

「行くぜっ、麻生っ!」

「大岩くんの力強いパスをジャンプして空中でキャッチした麻生くん、そのままくるりと上空で一回転すると――そのまま華麗にダンクシュートを決めた。

 これにはブーイングをしていた女子たちもあっけにとられている。

「ウソ……、なんであの子、あんな高い距離をジャンプできるのっ……?」

 だが、三人の攻撃はまだまだ終わらない。

 完全に調子を失った伊達くんと片岡くんは自分たちのフォーメーションを取り戻せずに苦戦している。

 おまけにさっき退場にならなかった大井川くんが嫌がらせのように伊達くんの周りをうろうろしていて、伊達くんは彼の顔を見ると笑ってしまうために伊達くんの視界と動きが制限されてしまう。

 その(すき)に三星、大岩、そして麻生の三角オフェンスがどんどん洗練されていく。

 その巨体に似合わない、柔道部コンビの機敏な動き、そして誰もがノーマークだった麻生くんの高い身体能力に、見ているみんなが、いや、プレーしている伊達くんと片岡くんまでもを圧倒していく。


「んだよ大岩たちっ!メチャメチャ素早いじゃんっ!どうしてあの身体であんな動きができるんだっ⁉」

「――何なのよあのず〇だもんみたいな子っ⁉ なんであんなチビが何であんな高くジャンプできるのよっ⁉ 伊達くんたちよりもいい動きしてるじゃないっ⁉」

 ……ずん〇もんみたいな子って、麻生くんのことか? ……まあ、確かに似てなくはないけどさ……。


 三人の攻撃に、最初の点数差はどんどん縮められていく。


「――何やってんだよっ、樫村っ、山藤っ! お前らもちっとは仕事しろよっ!」

 焦った片岡くんが、山藤くんたちを怒鳴りつける。

「えーっ、最初に『俺たちが全部決めるからお前らはぼーっと突っ立ってればいい』って言ったのは、お前じゃんかよォ……」

「時と場合によるだろっ! バカかっ、お前らっ!」

 ……片岡くんが逆ギレする。……それを聞いた山藤くん、片岡くんの言葉にカチンときたのか、

「あぁんっ……? なんだよその言い草はよォ……? ……自分たちで全部やるから邪魔するなって言ったり、今度は俺たちに仕事しろって言ったり、ちょ―っと、都合良すぎやしませんかぁ?片岡くぅん?」

 ――と、やさぐれたチンピラのような顔になって片岡くんに正論パンチを繰り出してきた。そして、

「――俺、もうやーるきなくしたっ! ……あとは二人で勝手にやんなっ!」

 と言って、コートのど真ん中でふて寝を始めてしまった。

「……ボクだって、一文にもならないのに、キミたちの引き立て役をする義理はないからね……。……つーか何でボクがキミの彼女のために頑張らなきゃいけないんだよ……。……〇ねばいいのに」

 ……陰気な樫村君が、吐き捨てるように片岡くんに言う。

「ちょっと待てっ⁉片岡と伊達がいるから何もしないで勝てると思った俺の立場はどうなるんだよっ⁉」 

 ……と、情けないことを言っているのは宇佐美くん。……いや、キミの立場なんか、知らんがな。


「どう思いますか、園宮さん。この展開を……?」

 理愛ちゃんがアナウンサーのモノマネでゆかりにたずねる。

「……完っ全にバスケ部コンビの戦略ミスですね。彼らは自身の力を過信しすぎるあまり、他のメンバーとの(きずな)を作るのをおろそかにしていた。……絆はチームプレイの基本、ひいてはバスケットボールの基本。彼らは自分たちのテクニックに溺れてしまった結果、最も大切なチームプレイの基本を忘れてしまったということですね。これは言ってしまえば彼らの自業自得。……そう、彼らの傲慢(ごうまん)の罪が生み出した悲劇と言えるでしょう」

「ほうほう、なるほどなるほど……」

 理愛ちゃんが相槌(あいづち)を付く。

「――つーか、熱い絆を作れないやつらにバスケをやる資格なんてねぇよっ! ――いっけーっ!麻生くんっ!」

 ゆかりが解説ごっこをやめて、身を乗り出して麻生くんたちを応援しだした。


 ――こうなると試合は一方的だ。チームワークが完全に崩壊してしまった伊達くんたちには、麻生くんの猛攻を止める手立てがない。

 山藤くんと樫村くんは完全に試合を放棄しているし、唯一動いている宇佐美くんはあわあわしているだけで麻生くんたちの敵ではない。


 思わぬジャイアントキリングの予感にもともと伊達・片岡コンビをよく思っていなかったらしい男子はざまあ見ろとばかりに大興奮で声援をあげ、女子は思わぬ事態に悲鳴を上げている。

 ……そして、もちろん私は――

「よっしゃぁっ!やっちゃえ、麻生くんっ!」

 ――ここぞとばかりに麻生くんのことを応援した。

 ゆかりだけでなく理愛ちゃんも麻生くんたちのチームを応援している。


 一人三田さんだけは、

「勇士く―――んっ!頑張って―――――っ!」

 泣きながら片岡くんのことを健気(けなげ)に応援している。


 ――あと一歩で逆転だ。そこまで伊達チームを追い詰めた、次の瞬間だった。

「チックショ―――っ!」

 自棄(やけ)になった伊達くんが、思わず麻生くんの腕を掴んでしまった。

「あっ…………!」

 ――麻生くんの動きが止まる。

「――アブねぇっ!」

 ――後ろから走ってきた大岩くんが麻生くんにぶつかりそうになる。

 麻生くんは間一髪でよけるも、急ブレーキをかけた大岩くんにさらに後ろからやってきた片岡くん、宇佐美くんが跳ね返され、将棋倒しになる。……ボーっと突っ立っていただけの樫村くんも巻き込まれる。

 将棋倒しになった三人にしんがりを走っていた三星くんが足を取られる。


 ……そして最後に、三星くんの巨体が伊達くんの上に襲い掛かり、伊達くんがその下敷きになった。


 ――その様子を目の前で見ていた大井川くんが一言――

「――ピ〇ゴラス〇ッチ♪」


(イヤ)ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ――体育館に、ファンの女の子たちの悲鳴が、響き渡った。


 ……そして、最後にコートのど真ん中で肩肘(かたひじ)をついてふて寝をしていた山藤くんが後ろを振り返って一言。

「……なんだバカヤロウ。」

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