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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
ダンジョンを進め

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第三十九層

38層も31層からと同じ飛ぶ系のトンボを発見する。今までの虫たちよりも長いせいかリュクスには大きく見えた。


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対象:マウンテンコンフュージョンドラゴンフライ

山に住む混乱を招く蜻蛉

不快な羽の音で軽い混乱状態に落とす

目と目が合った相手にはさらにひどい混乱状態に落とす

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混乱対策になるか不安感はありつつも、リュクスはフリップエリアを展開する。

混乱状態は軽い症状ならば、呼びかけか体を叩けば治るが、ひどい混乱になると拘束してでもとめなければ、そこら中に剣を振り回したり、魔法を放ったりしてくると資料に書かれていた。

普通の混乱対策はリラックスハーブから作る鎮静薬だが、リュクスはお茶にもなると聞いてリラックスハーブそのものを持ちこんでいた。

資料の内容には、蝶々と違い蜻蛉は混乱させた相手が疲弊しきった後、食すらしいと記載されていたが、どう調べたのかとリュクスは疑問に思いながら蜻蛉を見つめる。

蜻蛉はリュクス達には気づいていないようだが、飛行経路だったのか識別できる範囲からさらに近づいてきていた。非常に不快な羽音にリュクスは顔をゆがめる。

蚊のような羽音でも、蜂の様な羽音でもない、リュクスにとって聞き覚えのない音なのだが、これ以上聞いていたいとは全く思えず、炎の槍先を構えて投げ放つ。

気配を消した状態で、近い距離から蜻蛉の横から炎の槍を投げたのだ。命中するはずとリュクスは思い込んでいたのだが、ふわっと上に浮かぶことで蜻蛉はよけ、さらにはリュクス達のほうに振り向いてきた。


「今の避けられるの!?」


「ば、ばう!」


「うっ!」


ベードが慌ててリュクスに危険だと吠え叫び、リュクスは慌てて目をそらす。一瞬頭に靄がかかった感覚がしたが、頭を振り払ってすぐに復帰する。この調子では相手を真正面に見て戦えず、リュクスはどうするかと悩む。


「…きゅ。」


「レイト?声をかけてくるなんて珍しいね。で、なんでお面を持ってるの?」


ダンジョン内では不要だと思い、鞄型ポーチに入れておいたはずの兎の半面を抱え、レイトは膝の間に降りてきた。


「きゅ。」


「かぶれっていうの?それで直接見て起きる混乱を防げるってこと?」


「きゅ。」


「うーん、分かった。被ってみるよ。」


レイトが言うならと、リュクスは面を装着して、蜻蛉を視界にとらえる。蜻蛉はその場で不快な音を立てながら飛び続けるだけで、何かしてくることもなく見つめ合う。先ほどと違い混乱が起きる気配もないとリュクスはフレイムランスを構える。


「ベードとモイザとフレウは引き続き目を合わせないようにしてね。フレイムランス!」


炎の槍先を再び投げるも、ふわっと上昇して避けられる。避けることを重視して、混乱するのを待っているのだろう。ふとリュクスはVRの弓打ちゲーム内で、避けのうまい敵が出てきたことを思い出す。10本まで一気につがえられる仕様で、本体のいる位置と上下左右のよける位置を狙い、5つの矢をバラバラに打ち込むことで当てれる敵がいたのだ。

蜻蛉の避け方にも効くかどうか不安面はあったが、リュクスは弓打ちゲームの打ち方を思い出しつつ、思いついた名前で炎の矢を5つ放つ。


「クロスフレイムアロー!ってあれ!?」


クロスは交差や十字の意味もあるのだが、放った炎の5つの矢が繋がり、十字の炎になって飛んで行く。

リュクスには想定外のことだったが、蜻蛉も急に十字になった炎に対応できなかったようで、たじろぐだけで思い切り命中する。

しかし炎の十字が命中しても、蜻蛉は燃え上がることも、焦げ跡がつくこともなく、炎の十字は蜻蛉を突き抜け飛んで行き消滅した。

蜻蛉の方はふらふらとした様子だがまた飛行している。即座にベードが影で蜻蛉をがっちりと拘束し、モイザの粘土矢とフレウの風矢が突き刺さり消滅した。


「はぁ、当たったからよかったけど、避けられ続けるのは厄介だね。斜めによけなかったのが奇跡だよ。」


「きゅ…」


「レイトも不満だった?とりあえずお面のことはありがとう。おかげで混乱せずに済んだよ。」


面をかぶり直接見なかったことで混乱しなかっただけとは、リュクスには思えない。フリップエリアの軽減も含めたからこそ、混乱しなかったのだろう。

リュクスがドロップを確認するとポーチに丸いものが入っていた。不意に手に取ってしまったが、それが眼球だと気づき慌ててしまいこむ。


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対象:マウンテンコンフュージョンドラゴンフライの眼球

生きていたころの力が残っているのか、見つめ続けると混乱してしまう眼球

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気持ち悪いとは思わないが、さすがに素手で触るものではなかったと、ポーチの中の眼球を識別しながら思うリュクス。用途としてはモイザの製薬くらいだろうか。


「なんか混乱効果があるらしいけど、モイザが使ってみる?」


「――――。」


「いらないかぁ。じゃあこれも売っちゃうね。それとベード、こういう厄介な相手こそもっと戦うべきだと思うから、見かけたら近づいてくれる?」


「ばぅ!」


次の蜻蛉を見つけ、まずはベードに気配を消して近づいてもらい、リュクスはフレイムランスを投げる。やはり同じように避けられてしまうが、その後はリュクス達を見つめながら羽音を立てるだけで、それ以上の攻撃はしてこない。

5つの炎矢が十字に繋がるクロスフレイムアローを打ち込むことで、蜻蛉は対処に困ったようにふらつき、結局もろに十字の炎を受けて、その後ベードにつかまりモイザとフレウの追撃で倒れる。

そんな調子でリュクス達は進みながら見かけた蜻蛉を狩っていたが、丁度30匹目の蜻蛉にリュクスが投げた炎の槍が当たる。明らかに炎の槍の速度は早くなり大きさも膨れていたからだろう。

フレイムランスが命中した蜻蛉は燃え上がったかと思いきや、次の瞬間には消滅していた。威力のほうも上がったようだとリュクスは満足し、そこからは隠密で階段を目指す。

しかし羽音の不快さがリュクスの耳につく。フリップスペース内で混乱は起こらないが、ベードにできうる限り避けて走るよう指示する。

ベードもまた羽音が不快だったのだろう。リュクスの想定よりも大回りで38層を超え、39層も同じように突破はしたが、40層目前の階段につくころには時刻は闇の刻の直前になっていた。


「さすがに進むかどうか悩むところだけど、みんなはどうしたい?」


「ばぅわぅ!」「――――…」「コ…」


ベードは夜のほうがやる気がある吠え声を出すが、ダンジョンなうえに森の中で朝も夜も関係ないはずなのだ。モイザとフレウは寝たいような声をあげる。おそらく蜻蛉の目を見ないよう意識していたのも影響があるのだろうと、リュクスは休憩することに決める。


「ベードには悪いけど今日はここで休憩しよう。40層はボスがいるわけだしね。時間がかかることも予想できるし。」


「ばぅわぅ。」


「気にするなってこと?それならいいけど、明日も走ってもらうし、確か砂地なんだっけ?元気をつけるためにも豚肉多めだね。」


「ばぅ!」


「――――!」「コ!」


「はいはい、モイザもリンゴ多めね。フレウは油は今日は用意できないかな。フレイムボールで我慢してね。」


フレウに大きなフレイムボールを渡しつつ、リュクスは油以外にも何か食べれるものがあればと思うが、今のところ思いつくものもないとレイトとベードとモイザ、そして自分自身の夕飯を準備し始めるのだった。

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