第十六層
翌日すでに13層の中間くらいまでリュクスは足を進めていた。聞いてた通りフットマウンテンホグは鼻がいいようで、ベードが気配を消してるはずなのに近くまで集まってきていた。
だが目が悪いのか、怪しい匂いがするからと近寄ってきているだけで、襲って来ることもない。リュクスはそんな豚たちを無視して進んできたのだ。
その結果が前方後方からブヒブヒブヒブヒと鳴き喚き、60匹くらい集まってしまっていた。速さで置き去りにした豚まで、遠目に迫ってきてるのがわかる。
「面倒だなぁ、そろそろ片付けちゃうか。というか匂いの気配まで消してるはず、なんだよね?」
「ばぅぅ!」
「ごめんごめん。じゃあやっぱりこいつらが異様に鼻がいいということだね。もっと鼻のいい相手だったら完全に場所がばれてたかもね。」
匂いを消すというならやはり風呂である。リュクスは宿では入っているが、ベードを洗えるほどの広さはない。最もレイトもモイザもフレウも風呂に入れてはいないのだが。
別にベード達を臭いと感じてはいないのだが、匂い要素があるならベード達も入れる風呂がほしいと考え、自宅になら作れるだろうと考える。家に帰った時にトレビス商長に頼んで作ってもらおうかなどと思いつつ、今はそんな場合ではないと頭を切り替える。
「じゃあ正面のほうはベードとフレウ、僕とモイザで後方のを片付けよう。」
「ばぅ!」「――――!」「ココ!」
戦い始めると豚たちはリュクスのウォータアローとモイザの粘土の矢であっけなく倒れていく。片づけが終わったところで、リュクスはベード前方を確認したが、ベードの影の爪とフレウの風の矢で一掃されていた。
ベードが攻撃のために動きながらでも、乗っているリュクス達も術法で対処できるようになってるのは、いい傾向だとリュクスは満足して13層を突破した。
14層は初めから寄ってきた豚をすべて倒しつつ進んだおかげか、さらに水術の練度が上がる。14層終わりの階段付近で、なにか変わってないかと、リュクスは自分を識別してみた。
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対象:リュクス・アルイン
種族:ヒュマ 歴:18
職業:ハイテイマー
スキル:〈料理〉〈集中〉〈炎術〉〈テイム〉〈従魔待機〉〈識別〉〈六感分析〉〈時空術〉〈個別指示〉〈分担指示〉〈統制指示〉〈魔獣言語〉〈愛でる手〉〈暴力的幸運〉〈棒術〉〈水術〉
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火術が炎術になったように進化すれば話は別だが、識別からではどれほどスキルが上達したかはリュクスではわからない。とはいえ水術の練度的にも威力のある技に切り替えていくことを検討する。
ランスやウェーブを思い浮かべ、ウォータウェーブならば炎の波よりも押し返しは強そうだと想像した。自分の確認を終えたリュクスは従魔たちはどうかと思い至る。
「ベード、モイザ、フレウ、識別確認していい?」
「ばぅ。」「――――。」「コ。」
「よし、じゃあまずはベードから見ていくね。」
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対象:べード・アルイン
種族:グレートディープナイトウルフ
主人:リュクス・アルイン
スキル:〈牙技〉〈爪技〉〈聖族言語〉〈潜伏〉〈影術〉〈夜陰〉〈騎狼〉
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やはりベードもスキル変化はないようだが、リュクスの目からも明らかに影術の練度は始めよりも上がっている。影術が進化したら何になるだろうかと少し思いつつ、モイザの識別に移る。
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対象:モイザ・アルイン
種族:クレイクラフタースパイダー
主人:リュクス・アルイン
スキル:〈操糸〉〈牙技〉〈毒生成〉〈統制指示〉〈分担指示〉〈聖族言語〉〈料理〉〈裁縫〉〈糸術〉〈契約借技〉〈生産技術〉〈製薬〉〈合成〉〈土魔法〉〈陶芸〉
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モイザも変化なしだが土魔法に集中しているので、もしかすれば陶芸のスキルの向上を狙っているのだろうかとリュクスは睨んでいた。
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対象:フレウ・アルイン
種族:デュアルアトリビュートチキン
主人:リュクス・アルイン
スキル:〈転体〉〈炎魔法〉〈卵産〉〈炎食〉〈聖族言語〉〈油術〉〈風術〉〈風食〉
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同じく変化はないが、フレウも風術に集中し始めている。思い返せば皆が魔法に偏り始めている。リュクスがあまり肉体的な攻撃をしてないのも、原因の一つだろう。ベードに乗って戦ってるので前衛後衛などないようなものだ。
それならば棒術を上げるかと、リュクスは15層のマウンテンカウと対峙した際に、ベードに気配を出させる。牛は近くのベードに驚きながらも迫ってこようとするが、聞いてた通りのろい動きだ。
ベード上で杖を握り思いついていた術法を使おうとしたリュクスだったが、ウォータランスは手に握るイメージが強すぎてうまく作れず、ウォータウェーブはまだ発動する気配もないと、一番作りやすいウォータボールを杖先に作りだして放つ。
水弾が顔面で弾け、牛は少しひるんだが、顔を振って突進を再開する。さすがに一発で仕留めるのは無理だったかと、今度は杖先に炎を凝縮するイメージで球体を作り上げる。
「フレイムスフィア!」
放たれた炎の球体に正面からぶつかり、後方に転倒するようにのけぞる牛。すぐさま燃え上がり、焼失した。しかしリュクスとしては杖として使ってるだけで、棒として戦闘に使ってるわけではない。
次の牛を発見したリュクスはおとなしく一旦ベードから降りる。杖を片手に接近し、牛もリュクスに気づいて突進してくる。
「スロウダウン。からのフリップスペース。」
よけれない突進ではないが、リュクスは練習もかねてスロウダウンをかけた。そして横腹を思い切り杖で殴り付ける。
ゆったりと吹っ飛んでいく牛。シュールだとリュクスが見つめていると、吹っ飛んでいく途中で牛は消失してしまった。タフと聞いていた割にはこの一発で沈んでしまったのは、リュクスとしてはあっけなく感じた。
そこからはベードに乗って気配を消し、牛の真横を通過してもらいつつ、リュクスは杖で殴り飛ばしてみた。牛たちがリュクスの杖の一発で沈んでいく。さながら無双気分を味わいリュクスは気分爽快に進む。
リュクスの狩り漏らしはモイザとフレウが処理していく。特に16層からは当たり所が良くてもしぶとく生きてた牛がいたほどであった。
2層分杖を使ったわけだが、杖の威力が上がったとはいまいち感じなかったリュクスだが、何かしら成長しているのだろうと考える。
13層から16層まで豚と牛のおかげで肉はたんまり集まる。リュクスは牛肉を夕飯に使ってみたのだが、食べるならやっぱりラッシュホグやイビルカウの肉のほうがおいしいと感じる。ベードも一番のお気に入りはラッシュホグの肉で変わらないようだ。
これは全部売っちゃってもいいだろうとリュクスは考える。リプレならば何か生産に使うとのことで、リュクスはいざとなれば南肉の街に転移できるのだから。
17層からはどうするかをリュクスは考える。あまり敵対的でない馬を倒すのもどうかと思い、20層まで駆け抜ければいいだろうと結論付けた。
「ベードには悪いけど、15,16層も走るばかりだったけど、17層からも走ってもらおうと思うんだ。疲れてはいない?」
「ばぅわぅ。」
「それじゃあ明日からだね。結構な時間だった。」
全然疲れてないといった感じで返事するベードに、手持ち時計を確認するとすでに光十の刻であった。時計を観なければずっと青空で時間間隔が狂いそうだと、リュクスは軽くため息をついた。




