フレウとモイザの進化
リュクスは炎術の練習でアタックラビットを的にフレイムボールを飛ばす。燃えた兎をウォータで消火しようとしたのだが、始めのうちは出せる水の量が少なく、火が強すぎて消えることなく燃え尽きてしまった。
何度か試すうちにウォータで出せる水の量が多くなり、フレイムボールで燃えた兎の消火に成功する。素材を剥ぎ取れる死体として残っていることを確認したリュクスだったが、結局はフレイムアローかフレイムランスでとどめ刺したほうが、燃えないので死体回収の面では楽だと結論付けた。
あらかた今まで使ってきた火術のスキルアーツが炎術でもできることを確認したリュクスは、フレイムハンドを発動してみる。
普通火術系統は手から少し離して出現させるものだが、この技は完全に手に炎をまとってる。だがリュクスには炎の熱さは感じず、ほのかに温かいと思う程度で、服に燃え移ったりする様子もない。
試しにアタックラビットを殴ったのだが、殴った個所は焼けた穴が空いてしまい、素材にはできそうになかった。
初めのころは解体にすら少し抵抗感のあるリュクスだったが、今では体に穴を開けても気持ち悪いと感じなくなっていた。慣れなんだろうと思いながらも、リュクスは冷静に穴の開いた兎を焼却処分する。
炎術の確認を終えたリュクスは、水術での消火ができたので、ウォータボールくらいは出せるかと試し始める。水のボールを作り出すイメージをすると、丁度バスケットボールほどの大きさの水の塊を作り上げることに成功する。
威力を試しにアタックラビットにぶつけると、打ち出した速度も相まってか、一発で倒せるほど威力が出た。
バシャっと音立てて地面に水が散らばり、そこら中濡れてしまう。火術と違い水術は狙った相手以外にも影響があるようだ。
水ならそのうち乾くかと、リュクスは試しに自分の手の上に水を出す。ただの水なので識別はできなかったが、危険な水には思えず少し舐めてみると、水石で出してる水と同じ物に感じた。
今のリュクスではウォータボールを作り出すのが限界のようで、他のスキルアーツも試したが水術では作り出せなかった。水術を使うなら繰り返し使い特訓が必要のようだ。
この様子だとしばらくは炎術も新しいスキルアーツが難しくなってしまったかもしれないと思い悩みながら、ベードと合流して南兎草原を後にした。
自宅に戻ったリュクスは水石を使わず水術の水を使い料理をしてみる。別段味が変になったりもせず問題なく使えることを確認する。最も水術の水で作ったものはジャガイモを茹でただけだったので、豚肉と炒めてベーコンポテトもどきを作り上げた。
リュクスはその日の残りは家で空間術と時術の練習をして終えたが、レイトとフレウはまだ帰って来ていなかった。明日には帰ってくればいいがと就寝した。
翌日のリュクスは出かけるか悩んだが、家にいることに決め、自宅で引き続き時空術の練習を昼食まで続けた。リュクスがベードと共に昼飯を食べている最中にリビングの扉が開き、レイトとフレウが入ってきた。
「おっ、お帰り。って、フレウかなりきつそうだね。」
「コ…」「きゅきゅー。」
レイトはしかたない奴めというようにため息をついた。リュクスはフレウの様子を見たのだが、少しやせたように見えるほどにやつれていた。
「識別させてもらいたいけど、ご飯はどうする?またフレイムボールで大丈夫かな?」
「コ!」
フレイムボールを所望するフレウに夕飯時に油も用意してやるかとリュクスは考えつつ、炎を吸わせながら識別をかけた。
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対象:フレウ・アルイン
種族:デュアルアトリビュートチキン
主人:リュクス・アルイン
スキル:〈転体〉〈炎魔法〉〈卵産〉〈炎食〉〈聖族言語〉〈油術〉〈風術〉〈風食〉
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リュクスからすると見た目の変化は少しやせたように思えただけだったがフレウは進化していた。種族からラウンドの名称が消えてたのだが、丸っぽい姿も大きさもさほど変わってない。
風術を覚えて風も食べれるようになったようだが、どんな特訓してきたんだとリュクスはレイトをチラ見する。ベードの時も考えていたことだが、レイトはどうやって術法を教えているのだろうと悩んだが、レイトの謎は今に始まったことじゃないから気にしてもしょうがないと諦めた。
「フレウは風を覚えたみたいだけど、僕は水を覚えたよ。あとは土があったら基本属性4つそろうね。」
「――――。」
「ん?モイザ?いつの間に。」
どうやらレイトたちと一緒にモイザも入ってきていたようだ。モイザはどうやら土術を覚えたい様子であった。
「別に無理に覚えなくてもいいんだよ?」
「――――…」
モイザが落ち込んだ様子で言葉を出す。リュクスには完璧には言葉の意味は分からなかったが、言いたいことは理解できた。ベードだけでなくフレウも戦闘面で強くなったわけだが、モイザは製作面ばかりで戦闘面では大きな進展がない。
「製作面で役に立ってるし、やりたいことだったんでしょ?無理に強くならなくてもいいんだよ?」
「キュ?」「――――。」「キュ。」
リュクスが諭したのだが、レイトとモイザで話し合い、二匹で特訓に行くことに決めたようだった。
「特訓に行くんだね。僕もついてみてもいい?どんな特訓してるのか気になるんだよね。」
「きゅ。」
「ダメ?そっか。じゃあ他のことして待ってるけど、早めに帰ってきてね?」
「きゅきゅ。」
「先に進んでてもいいって?僕はレイトとモイザが戻るまで待ちたいかな。もうちょっと術法の特訓しておくよ。次は熊と戦う予定なんだし。」
リュクスとしては次はついにフォーアームベアを相手にする予定なのだ。下手しなくても相当な苦戦になるとリュクスも想定しているので、準備しすぎというほどでいいだろうと考えていた。
レイトたちは東の森のほうに行くようでリュクスは二匹を見送る。町の外までどんな特訓をしに行くのかとまだ気になってしまったリュクスだったが、頭を振り払ったリュクスは、術法特訓を再開するのに意識を切り替えるのも含めて、依頼を受けに冒険者ギルドにと向かった。
依頼分のアタックラビットを水術で倒したリュクスは、南兎平原でフレウの風術も見せてもらっていた。翼から風を出すのは鳥らしさが際立つ。
フレウがなにか思いついたようで、油と炎と風のコンビネーションを見せびらかす。油弾を風でまき散らしながら、さらに炎を纏わせアタックラビットをまとめて倒す様子はなかなかに圧巻であった。
その日の残りは空間術と時術の訓練で時間を過ごす。夕飯には片栗粉を使った唐揚げを作り、残った油はフレウが喜んで吸い尽くしていた。
翌日もリュクスは家中で特訓して過ごし、レイトとモイザの帰宅を待っていたが、日の暮れる直前にようやく二匹は帰宅した。モイザの毛の色が明らかに茶色い毛色になっている。体格は変わってないが進化したのだろうとリュクスはねぎらいをかける。
「お帰りモイザ。お疲れさま。リンゴ切ってあるけど食べる?」
「――――!」
リュクスが切り分けたリンゴを出すと、嬉しそうに食べ始めるモイザ。その様子に微笑みながらもリュクスはモイザに識別していいか確認する。
「モイザ、識別するよ?」
「――――。」
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対象:モイザ・アルイン
種族:クレイクラフタースパイダー
主人:リュクス・アルイン
スキル:〈操糸〉〈牙技〉〈毒生成〉〈統制指示〉〈分担指示〉〈聖族言語〉〈料理〉〈裁縫〉〈糸術〉〈契約借技〉〈生産技術〉〈製薬〉〈合成〉〈土魔法〉〈陶芸〉
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「モイザは土魔法なんだね。フレウは風術だったのに。」
「きゅ…」「コ…!」
「うーん?努力不足?でも進化できてたんだし、風も食べれるようになったんだからいいと思うけど。モイザも土魔法だけじゃないんだね。」
土魔法だけでなく、製作系の新しいスキルで陶芸も覚えているようだ。どんなスキルか気になるが、今日はもう遅いので明日にでもトレビス商長に聞いてみるかとリュクスは思い至る。
クレイということは地面を操るような土魔法じゃなく、粘土を操る技なのだろうかとリュクスは悩む。どちらにせよ今から見せてもらうにも日が沈む時間だ。モイザも気丈にふるまっていたが、疲れがあったようで、リンゴを食べ終えると少しぐったりとしてしまう。いろいろ明日にしようとリュクスも今日はもう休むことにした。




