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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
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混沌の終焉

キメラを相手に、リュクスたちは分散していた。

飛び立とうとするキメラだが、三つ頭の意思はバラバラで、意識が散っている。

黄色い鷲は魔法を防いだレイトを、青白いドラゴンは近縁種であるグラドを、赤い獅子はリュクスを、それぞれ睨みつけている。

それはリュクスたちの狙い通りの動きだった。


『やはり、俺たちへの警戒が弱まった!攻撃するぞ!アイスランス!』


『了解です!ストーンランス!』


『むー!ニたちだって強いんだよー!フロストランス!』


ベードは背後に回り込もうと走りながら、背にいるモイザとネティスと共に氷と石の槍先を放つ。

強靭な馬の胴体に突き刺さったかのように見えたが、キメラの肉体は一切無傷。

どうやら、たいしたダメージにはなっていないようだ。

しかし、飛び立つ直前に獅子の顔が一瞬、ベードの方向を向く。


「今!ディメンションスラッシュウェーブ!」


リュクスはいつも放つよりも魔素を少し溜め、空間斬撃波を放つ。

だが、獅子の顔はすぐにリュクスへ向き、斬撃波は蹄で踏みつけられて防がれる。


「…駄目か。いや、でも警戒はしてくれてる。」


空を取られたが、同じく飛べるフレウとグラドが挟み込む。

しかし、不死鳥姿のフレウは巨体なのに、ほとんど意識もされていない。


『コッ!ムカつくやつだぜ!俺なんて眼中にないってか!インフェルノアローレイン!』


業炎の槍先を雨のように降らすが、キメラの黒翼が軽く羽ばたくだけであっけなくかき消されてしまう。

フレウは苛立つように羽をばたつかせたが、グラドは珍しく冷静なまま目を細める。


『フレウの炎はわれの黒炎にも劣らないのだが、完璧に対応されるか。』


いつも寝こけているフレウだが、グラドはある意味一目置いていた。

自身と同じく飛行できるものであり、炎と風を操るもの。

特に炎と風の魔法化という面で、グラドは自身よりもフレウのほうが優れているとすら考えている。


グラドの黒炎ブレスなどは魔素を混ぜた力そのものを吐き出す技で、魔法とは少し異なる。

黒炎は強力ゆえに、槍先へと形を変えるのも一苦労。

編み出したスパイラルならば、キメラの先ほど使った防御くらいは撃ちぬけるだろう。

だが、ドラゴンの顔は常にグラドへ向いており、溜めを要する技など悠長に使えない。


空を飛ぶ三体の上で、バチバチと雷が鳴り響く。

鷲頭とレイトの雷が相殺し合い、激しい轟音を鳴らしている。

空のグラドとフレウを守るためとはいえ、地表から高高度に魔法を作り上げるなど、魔素の消耗は激しいだろう。


ドラゴンの口がグラドに向いたまま白く光る。凍てつくブレスの兆候だ。

獅子頭も口元に炎を溜め、リュクス目掛けブレスを吐き出そうとしている。

ベードたちの魔法も、ただでさえ先ほどもたいしたダメージにならなかったのに、離れた空中ではさらに威力が落ちてしまう。

フレウ自身が一番よく理解していた。今、この状況を打開できる可能性があるのは自分だと。


『舐めんなよ!しゃあねぇから、とっておき、食らいやがれ!』


不死鳥姿のフレウの全身が燃え上がる。

そのまま炎を後ろに吹き出しながら急加速する。

その姿はまさしく燃え上がる不死鳥そのもの。


業炎の突進にいち早く気が付いたのはドラゴンだった。

氷属性ゆえの、炎に対する警戒だったのだろう。

長い首を伸ばして顔だけ向きを変え、燃え上がるフレウ目掛けて凍てつくブレスを放つ。


『ぐぉぉお!』


突進の勢いは落ちたが、燃え上がる炎は衰えず、ドラゴンブレスと拮抗する。


『っ!任せろ!ブラックスパイラルブレス!』


すぐにグラドが力を溜め、螺旋の黒炎ブレスを吐き出す。

それに獅子頭が気が付き、炎のブレスをグラドに向けて放つ。

しかし螺旋黒炎の威力はすさまじく、獅子のブレスを引き裂いていく。


だが、キメラも受けるべきではないと判断したのだろう。

魔法展開も二つのブレスも止めると同時に、空中姿勢を崩してわざと落下し、螺旋黒炎もフレウの突進も回避した。

視線を地表に向けていた獅子頭と鷲頭は、にやりと笑っていたが、空を見ていたドラゴンだけは苦い顔を見せる。

落下するキメラの真上にリュクスの姿を見たからだ。


「ディメンション、インパクト!」


馬の胴に打ち付ける拳に乗せた激しい衝撃波が、キメラの強靭な肉体の表皮を砕き、その勢いのまま地面へ落下させる。

意識が逸れた瞬間、リュクスはキメラの上空へ即座に転移していたのである。


「ライトリィ!で、落下は抑えつつも、このまま追撃!」


リュクスは手ごたえを感じてはいたが、キメラの黒翼が一瞬羽ばたき、威力を緩和された。

気配もまだ健在であると強く感じさせたため、そのまま空から追撃を試みる。

しかし、落ちたキメラから自分に何か伸びてくるのを感じ取り、すぐに退避する。


「っ!ショートテレポート!」


背後に数センチだけの転移だが、そのまま落ちていれば緑の蛇に噛まれていただろう。

キメラの尾が蛇頭だったことをいまさらながらに思い出す。


「あっぶな…」


『よく避けた。ライトニングスピア!』


伸びきった蛇の尾が、レイトの放った雷の槍で引き裂かれる。

そしてキメラの三つ頭が同時に痛みと怒りに満ちた咆哮を放つ。


「う、うるさっ…でも、今がチャンス!って、え?」


リュクスとレイトに三つ頭の顔が向く。

それは先ほどまでよりも明らかに憎悪に満ちた表情。

そして、三つ頭とも口が開くと、白と赤と黄色の光が混ざりあい始める。


『このブレスはまずいな。グラドの…いや、グランのブラックブレスなどとうに超える、純粋な魔素の塊だぞ。』


「ど、どうゆうこと?」


『つまり、反撃などしても暴発する。』


「っ!みんな退避!」


従魔たちはみな追撃しようと集まっていたが、リュクスの怒号に足を止める。

だが、この距離で散開しても巻き込まれるのは必然と分かるほど、キメラの魔素が著しく膨れ上がっていく。


「…ふざけんなよ。悪あがきにもほどがあんだろ。」


『…リュクス?待て!その力は駄目だ!』


リュクスの言動がおかしいことに疑問をもったレイトだったが、リュクスの白い瞳が白く光り始めたことに気が付く。

聖族に与えられた覚醒の光。だが、本来一度しか行われないはずのものが、リュクスはすでに何度も起こしている。

それが体と精神にどれほど影響するかを、レイトは不安視していた。

だが、リュクスは軽く頷いた。


「大丈夫、わかってる。でも、行く。」


レイトは止めようと前足を出したが、すでにリュクスは魔素を溜めるキメラの正面へと飛び出していた。

そして口元に集まる巨大な光に右手をかざしながら突っ込む。


「魔素を愛でる手。」


キメラの暴走する混ざりあった魔素が、リュクスの手に絡みつくように吸い取られていく。

巨大だったはずの光はどんどん縮んでいき、光を抑えきると同時に、リュクスの手がキメラの三つ首が生える根元を押さえ込んだ。


「お前、やりすぎだよ。」


グシャリという音と共に魔物特有の紫の鮮血が大量に飛び散る。

強靭なはずのキメラの肉体は一瞬で砕け散り、跡形もなくなった。

立ち尽くすリュクスの周囲だけ、鮮血は一滴たりとも降り注いでおらず、足元の黒ずんだ大地がよく見えた。


従魔たちはあっけに取られて動けずにいたが、レイトだけは悲しげながらも叱るような表情でリュクスに近づいた。


『…お前こそやりすぎだぞ。』


「…そうだね。でも、あぁしないと危なかったからさ。」


『…どうやら、リュクスのままのようだな。ならばいい。』


「うん。出来れば僕も、あんまり使いたくはない。」


リュクスはキメラの魔素を吸いつくした右手のひらを上から抑えた。

これは魔素を愛でるというだけで、混沌の魔素すらも容易に奪い尽くせる力。

つまり、魔素が命の源でもあるこの世界では、他者の命を容易に奪えてしまう力であると、理解してしまった。


リュクスは大きく息を吐いて、落ち着きを取り戻す。

光り輝いていた瞳も元に戻り、従魔たちと合流していく。

リュクスの面持ちに、従魔たちも誰もうまく言葉が出ずにいたが、レイトがため息交じりにリュクスの頭上を陣取る。


『あんな魔物が居た場所だ。少し離れても他の魔物はいないだろう。一度自宅に帰るぞ。』


「…そうだね。そうしよう。」


この場所ならば確実に魔物が来ないだろうが、リュクスも血の跡がひどい場所を使う気にはなれず、ベードに乗って戦いの場より離れたのち、自宅へと転移した。

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