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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
暴力的幸運

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従魔情報の価値

道中トレビス商長が立ち止まる。リュクスも軽く頭を抱えた。先に植えた3つのリンゴの木が大体8メートルくらいに育っていたからだ。リンゴが生っていてもおかしくない高さである。ちなみに緑甘樹のほうも同じほどの高さで実をつけていた。


「さすがリュクス様ですね。これほど育つのが早ければ明日にはリンゴの実もなるでしょう。」


「なるほど。モイザ、緑甘樹の実もリンゴも蜘蛛たちに自由に採取していいって教えておいて。後で一応果樹地帯を柵で囲わないとダメかもですね。」


「そうですね。苗木から植えれば育ちますので、実から勝手に木が生えるのを防ぐならば設置をお勧めします。」


「わかりました、ありがとうございます。」


緑甘樹の実を増やすならば枠外で苗木まで育てて移動するでもいいわけだ。今は南端の広い場所まで移動してきた二人。トレビス商長はポーチから料理セットと同じ四角い箱を取り出す。中から出てきたのは机と4つの椅子である。

すぐに座ろうとしたリュクスだったが、レササが近寄ってきていた。リュクスは少し離れて以前使っていた料理セットを広げた。こちらの料理セットには先日脚立を一緒にしまい込んでいたのだ。レササはさっそく脚立に上って茹で始めた。リュクスが席に着くとさっそく商談が始まった。


「さて、今回はまずリュクス様より情報を買いたいと思います。先日はモイザ様のスキルの情報提供を感謝いたします。長年謎だったレッサーマザースパイダーのみが糸玉を残さないといった件、仮説ですが見当が付きました。マザーになる個体が他のマザー個体からスキルを貸借し、糸玉を残さないためのスキルを習得するのですよね?」


「――――。」


リュクスについて来ていたモイザにトレビス商長が質問し、モイザはしっかりとうなずいた。


「なるほど、これで確証が取れました。ありがとうございます。こちらの情報を提供いただいた謝礼ですが、かなりの額をお渡ししたいと思います。」


「え、なぜですか?」


「レッサー種といえどマザー系統に分類される情報です。そもそもマザー系統は自身の子たちとの連携戦闘に長けています。戦闘が劣勢だと判断すると、マザーのみ逃避し子供たちが追わせないための盾となるそうです。さらに死体からできうる限り情報を得たくとも、マザー系統は死に際に自身の情報を隠そうとします。蜘蛛系統ですと肉体を溶かしてしまうという感じですね。


「自分の毒で自分を溶かすってことですか?」


「おそらくという憶測を超えることはできませんが、技術貸借の情報のおかげで、マザー系統の情報消去能力の説明が付きます。技術貸借は他のマザー系統も所持しているといえるでしょう。この貴重な情報は王都ですらも重宝されるでしょう。」


「モイザは何かわからないか?」


「――――。」


モイザは首を横に振った。死を目前とした状況になったことがないためか、はたまた肉体が勝手に起こす現象かもしれない。


「モイザ様からは確定情報を得られないのではと思っていました。死を目前としなければわからない現象でしょうからね。」


「僕もそう考えました。とりあえず技術貸借についてはそれだけの情報だったと認識して、報酬に関して受け取らせていただきます。」


「そういっていただけるとありがたいです。では続いてお聞きしたいのは、ベード様についてです。ベード様もレイト様ほどではないのですが、存在が希薄になっています。特に影を歩いているときに姿が認識しづらいです。何か心当たりはございますか?」


モイザと同じくついて来ていたベードをリュクスは見つめるが、特に存在が希薄になったようには感じなかった。存在が希薄なレイトと付き合いが長いせいか、主人であることが理由なのだろう。


「それは種族が変わったからだと思います、進化したといって伝わりますかね?」


「進化されているのですか!気が付きませんでした。なんという種族に進化されたのですか?」


「ナイトバイトウルフですね。」


「ナイトバイトウルフですか。確か闇夜に隠れ影に隠れ獲物を捕らえる魔物だったはずです。それで影に入った際に姿が認識しづらかったのですね。」


ベードは伏せながらトレビス商長の言葉にどこか誇らしげな顔をした。新しいスキルにあった潜伏と夜陰が関連スキルなのだろうとリュクスは考える。


「ナイトバイトウルフはこのあたりには生息していない魔物です。ですがこの森で進化したのであれば、ぜひ進化状況を知りたいのですが。」


「うーん、すいません。答えられないです。」


リュクスは答えたくなかったわけではなく、進化の現場に居合わせなかったのだ。レイトなら知っているはずだが、レイトが教えるかどうかもわからない。


「そうですか、それは残念です。この森で他にナイトバイトウルフが生まれる恐れがないかも答えられませんか?」


「申し訳ないです。答えられないというか、わからないというのが正しいですね。」


『否。』


「ん!?レイト?」


いつの間にかレイトが机の上に乗り移り首を横に振った。だが問題はそこじゃない。リュクスは今レイトから『否』と聞こえたのだ。


「おや、レイト様は何かご存じで答えてくださるということですか?」


『是。』


今度はうなずいたレイトからリュクスは『是』と聞こえた。『ぜ』と『ひ』とはつまり肯定と否定の一文字のことだろうとリュクスは考える。


「えっと、どうやらそのようですね。あの、トレビス商長には今レイトが何か言ったように聞こえましたか?」


「えぇ。キュ、とかわいらしい声を上げていましたね。鳴き声の意味は分かりませんがうなずいていただいたので大丈夫ですよ。」


「そ、そうですか。」


『ん?』


リュクスは振り向いて首をかしげたレイトから『ん』という声が聞こえた。リュクスだけがわかる言語ならば、魔物言語のスキルの影響で少し言葉がわかるようになったのだろうと納得した。


「大丈夫ですか、なにか不安面があれば言っていただいても。」


「いえ、大丈夫です。問題ありませんよ。モイザとベードは飽きたら他行っててもいいからね?、この土地の中だけだけど。」


「ばぅ。」「――――。」


二匹はリュクスの近くて待機するようだが、リュクスからはまだ二匹の言葉は理解できないようだ。


「ではレイト様。ベード様がナイトバイトウルフとなった経緯ですが、直接はお聞きできないのがすこし不便ですね。うなずくか、首を振るかでお答えいただきますね。」


『是。』


「ナイト、夜の名を冠するということは、夜に進化したのですか?」


『是。』


「バイトは確か噛むという意味ですね、牙を重点的に上げたのですか?」


『否。』


「違いますか、では何かほかのスキルが影響しているのですよね。」


『ん。』


『ん』は肯定でも否定でもない言葉の時にリュクスに聞こえる言葉のようだ。どう答えれば伝わるかと困るレイトにリュクスは少し助けに入る。


「えっと、新しいスキルとして影術と潜伏と夜陰を所持していました。」


「なるほど、リュクス様も情報ありがとうございます。では一つずつ確認します。進化条件に必要スキルに影術はありますか?」


『是。』


「潜伏はありますか?」


『是。』


「夜陰はありますか?」


『否。』


「なるほど、潜伏と影術ですか。インヴェードウルフは潜伏は使わない種族のはずです。見かけた獲物はすべて襲うのが彼らですから。犬といい狼といい、東の魔物には困ります。実は東にいるはずの鹿の魔物の素材を入手できないので。」


「え、そんなのがいるんですか。」


鹿の魔物の情報は資料室にもない物である。餌としては兎もいるのだろうが、あれは草原の魔物だ。森の中にも食えるものがいなければ犬と狼がどう生きるのかという話になるだろう。


「街付近では絶対見ることはできませんよ。かなり森の奥に生息しているらしいのですがね。そこに行くまでに犬や狼の邪魔が激しいのです。偵察があっという間にレッサードッグにやられる鹿を一度だけ見たらしいです。識別できなかったそうなので資料にも載ってない魔物ですね。」


「そんなに弱いんですね。弱肉強食だから仕方ないんでしょうけど。」


「おっと、話がそれてしまいましたね。潜伏はしない種族ですが、可能性はゼロじゃありません。ですが影術に関しては不明なんですよね。もしかして、レイト様がご教授したのですか?」


『是。』


「ま、まさか他の魔物に術法を教えるほどとは思いませんでした。なるほど、それならこの周辺で新たな発生はまずないといえますね。お手数おかけしました。ベードさんについてはありがとうございます。ただ、申し訳ないのですが、このままもう少しお付き合いください。」


『ん。』


まだ話があるのはリュクスとしてはいいのだが、『是』と『否』と『ん』が常であるより、できれば普段は「きゅ」と聞こえたほうがいいと考える。

言語が理解できるのもスキルなのだ。言葉で聞きたいときにだけ意識すればいいように、イメージすれば切り替えられるかとリュクスは「きゅ」で聞こえてほしいとイメージする。


「では次は言語についてお聞きしたいのです。私たちの聖族言語についてかなり理解しているようですが、そちらはリュクス様の従魔になる前から理解していましたか?」


「きゅ?」


首をかしげているので、肯定でも否定でもなかったようだが、リュクスにもちゃんと鳴き声で聞こえた。とはいえまだ言葉で聞こえたほうがいいし理解しやすいだろうと頭の中で切り替えた。


「聞き方がよくなかったですかね。どのようにお聞きすればよいでしょうか。」


「あ、それじゃあ僕が聞いてみますよ。」


「わかりました、お任せして拝聴しておきます。」


「じゃあレイト、僕の考えを聞くからさっきと同じ感じで答えてね。まず、僕たちの使う聖族言語は言葉として理解しやすいけど、僕にテイムされるまでは完ぺきではなかったかな。」


『是。』


リュクスの考え通り、何となく聖族言語を聞き取れても、認識するスキルがなく理解しきれてなかったなら納得がいくのだ。


「聖族言語は言葉が多いから、理解はできるけど発音は難しい?」


『是。』


「魔物言語は言葉が少ないから発音はできるけど、僕たち聖族には理解が難しい?」


『是。』


リュクスは言語スキルについて理解した。レイトたちが聖族言語を覚えても普通に会話できないのは、聖族言語をしゃべるというのが難しいのだ。しかし言葉の意味は分かるから、聞く分にはほぼ理解できる。

逆にリュクスは魔物言語があるのだが、完璧には言語を理解できてない。それはほぼ単語ほどしか発音していないのに、結構複雑な意味を持った言葉になるからなのだろうとリュクスは考える。もちろんそんな複雑な言語を今のリュクスが発音できるはずはない。


「申し訳ありません、今の話は?」


「あ、すいません、ちょっとこっちの話が混ざってましたね。」


「いえ、大丈夫です。今の話だけでもほしい情報を得られましたので、私はそれまでで十分です。情報購入のお話は以上ですので、次のお話に入らせていただきます」


レイトはリュクスの頭上にと戻る。やはりお気に入りの場所なのだろう。次は金の話だろうとリュクスは少し気合を入れる。


「大丈夫です、お願いします。」


「今回の3つの情報は非常に高額になってしまうため、金銭面でお渡しするのではなく、違うものをご提供するという形にしたいのです。」


「なるほど、金銭でなくても問題ないですよ。」


「ありがとうございます。今回ご提供するものは雨防止用屋根張りはもちろんなのですが、それだけでは全く足りませんので、住居となる家と新たな土地として南東側の広がった土地となります。」


「は?え?」


「ご希望でしたら向かい側の土地もご提供できますが。」


「ご希望じゃないです、十二分です、ありがとうございます。」


「はい、では承諾いただいたということでここにサインを。縛り名はかかなくても問題ありませんので。」


リュクスは慌てて否定し、差し出されたトレビス商長の書類を確認する。屋根建築、家建築、土地譲渡の3点のみで裏にも何か書かれている様子はない。書類の下部にリュクスの名をサインした。


「はい、承りました、このような形になってしまい申しわけありません。」


「いえ、大丈夫です。ちょっと多すぎて驚いてるくらいです。ちなみに、向かいには何ができるんですか?」


「向かいは今すでにある解体所を一度解体して広げる予定です。」


なんの施設かと思っていたリュクスだが、解体所とは魔物の解体を仕事とする施設である。だが土地から見える位置のため人の出入りが見えるのだがあまり多くはなかった。それなのに広げるのかと少し疑問になる。


「解体所って結構な人数が使うんですか?」


「はい、私たち商業ギルドでは特に活用しております。解体所に行くまでは徒歩になってしまいますが、大量の魔物の解体を行うならばやはり施設が必要ですからね。一応どんな方でも利用できるのですが、冒険者の方はこのあたりの魔物などほとんど自身で解体してしまうので、大通り沿いを一見すると利用者は少ないように見えますね。大通りより北側の通路のほうが家も近いですから。」


解体所の北側のほうから人は入るということだろう。そのまま広がるならばリュクスとしても、余計な心配は不要だったと思い、何の気なしに大通りを見たのだが、昨日まで石壁だけだった場所にすでに門が出来上がり、大通りも門まで続いているのだ。もちろん南東の扉も出来上がっている。夜のうちに全て済ませたのだろう。


「結構長くお話してしまったようですね。そろそろ昼食時ですよ、リュクス様はどうしますか?」


「そうですね、皆さんは持ち込みの食事があるんですよね?」


「作業員たちのことですか、彼らには露店で買うように伝えておきました。」


「えっと、買っていただくのもあれなんですが、僕が作って渡したらまずいですかね?」


「構いませんが、リュクス様はお優しいのですね。では作業長に伝えてまいりますので、製作してお待ちください。すぐに作業できるよう、サンド系でお願いいたします。」


「わかりました。」


軽くお辞儀しあった後、トレビス商長は露店方面にと歩いて行く。リュクスは新たに購入した料理セットを用意しサンドイッチの準備を始める。

今回は少し趣向を凝らし特別に豚肉と兎肉のダブルサンドにしてみることに決める。どちらの肉も野草の風味にマヨとしょうゆとも合うのでケンカしないだろう。もし機材があればホットサンドでも作りたいなどと考えつつ、料理し始めるのだった。

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