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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
暴力的幸運

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広がる南端の街

ガンッという激しい音の後、ガラガラと音を立て外側に石壁が崩れていく。事前に知っていたからか、音に敏感なベードも蜘蛛達も少し驚いた程度で済んだようだ。

石壁はきれいに四角いブロックに崩れて、向こうには新しい石壁ができており、これからはあそこまで街となるわけだ。

つまり聖族の領域が広がったわけだが、南端の街の規模を見るだけでも聖族の領域の狭さがうかがえる。この大地の北半分は丸々魔族の領域であり、街や街道以外も魔物だらけなのだから。

石壁が完全に崩れ終えると、術士たちがブロックを回収していく。聖域の力が残っているのだろう。さらに東門から南東扉にかけての通りと、南東扉を出たところに敷かれていたはずの石畳みもなくなり土が見えていた。全て術士が回収したのだろう。

術士たちがブロックを集め終わると南側にと集合し、衣装は同じだがリーダーと思われる人物が話をはじめた。しかし丁度リュクス達が見える位置で、術士の数人が話に集中しきれずリュクスの従魔に片目を向けていた。リーダーは話し終えるとリュクスの土地をよけるように南端の大通りに歩き始める。この後教会から転移で王都にと帰還するのだろう。

丁度目もあったのでリュクスは軽くお辞儀をしておくと、先頭のリーダーだけがお辞儀を返す。彼らを見送り終えたリュクスにトレビス商長が話しかけてきた。


「私はこの後、新規の土地の所有権についてギルド長と街長を交え話をしてこなければいけませんので、これで失礼しますね。」


「はい、この後が大変なのですね、頑張ってください。」


街の三巨塔が新しい土地をどうするのかを話し合う大事な会議になるのだろうとリュクスは予測しつつ、石壁の撤去も終わって静かになったかと、東門側の自身の露店に移動し始めた。

だが蜘蛛達の巣を越え緑甘樹とリンゴの木を植えた場所で立ち止まる。緑甘樹も異常な成長速度といわれたのだが、リンゴの苗木もすでにリュクスの背と同じくらいまで伸びてるのだ。

明らかにリンゴの成長速度も速い。リュクスについてきてたモイザも期待するかのようにじっとリンゴの木を見ていた。


「もしかして緑甘樹よりもリンゴのほうがうまかったのか?」


「――――!」


モイザは素早く二度うなずいた。よほどリンゴの木ができるの楽しみなのだろう。先日購入した50個はリュクスが1つ食べた以外は全て蜘蛛たちに渡してしまったのだ。

リンゴの追加購入と、合わせて苗木も追加で育てるべきかとリュクスは検討していた。今のモイザの様子からも3本では足りなそうだが、これだけ成長が早いならばと思ったわけだ。

果樹地帯を後にしリュクスは自身の露店に到着した。予想通り人影もなくリュクスは一安心して露店を覗く。残っているのは野草とレッサースパイダーの糸玉が20ほどだけ。モイザの糸玉とサンドと茹でた実は売り切れていたわけだ。


「モイザたち忙しそうにしてたけど、大丈夫?」


「――――。」


大丈夫だと言いたげに首を振るモイザをみたリュクスだったが、一部の蜘蛛たちはずっと糸玉補充をしていたはずなのだ。気を使われたのかと売上見たリュクスだったが思わず息をのんだ。

前回引き出した後から溜めておいたままだったわけだが、最終売り上げが169300リラとなっていた。サンドはリュクスが補充した分のみだが、糸玉と茹で緑甘樹の実は蜘蛛たちが補充していた分がもはやわからない。だがかなりの数を補充したのは確かだろう。リュクスが水晶のリラを証明に移し所持金は278900リラになった。


「嬉しいんだけど、本当に無理してない?」


「――――?」


首をかしげたモイザからは何てことはない雰囲気が漂っていた。丁度糸玉を運んできた個体が一匹。胴体の上に糸球を重ねて20個一気に運んでいるのだ。そして展示ケース下部にと糸玉を入れていく。

これだけで展示ケースに補充できるわけだが、毎回持ってくるのも大変だろうと、リュクスは袋型小サイズポーチを一つ取り出す。中身は全て特大ポーチに移し、運び役の蜘蛛であったレサキにと渡した。

その様子をモイザが羨まし気にじっと見ていた。モイザ用に袋型中サイズポーチの購入が必要かとリュクスは軽く笑う。モイザの器用さならばベードのような触れるだけポーチでなくとも収納できるはずだと。


「とりあえず頑張ってくれてるみたいだし、リンゴを買ってくるよ。そのあと僕は宿に帰るけど、大丈夫かな?」


「――――。」


モイザのうなずきを見てリュクスはひとまず蜘蛛たちの頑張りをねぎらうためにも、すぐに食べれるリンゴの追加購入にと向かう。

リンゴ農家で上限である50個と苗木3つを購入。無人露店の購入制限は日付さえ変われば同じ人物でも購入は可能である。リュクスはすぐに自身の土地に戻りモイザにそのままリンゴ50個を渡す。

モイザが蜘蛛たちに配りに行くのを見送り、リンゴの苗木を植えこむ。また育つように軽く突くと、その足でまっすぐ宿にと戻ったのであった。

翌日、リュクスは商業者ギルドの店で袋型ポーチ中と料理セットを購入。そのまますぐに自分の露店に顔を出しに行くのだが、道中ベードに目を向ける人も少なくなっていた。おそらくベードの存在に慣れたのだろうとリュクスは考えていた。

リュクスが露店に着くとモイザとレサキが出迎えた。早速モイザにポーチを渡したいリュクスだったが、トレビス商長も屋根建築の人もいない今のうちに露店の補充を済ませることに。

昨日の夜のうちに作っておいた豚肉サンド100個分と兎肉サンド100個である。兎肉サンドは150リラで設定したが、売れ行き次第ではまた変えればいいとリュクスは強気になっていた。

値段設定を終えたころに、トレビス商長と頭にタオルを巻いたいかにも作業員という雰囲気のヒュマの男衆20人がリュクスの土地にと到着した。


「お待たせしてしまいましたでしょうか、これから作業しますね。」


「いえ、大丈夫です。僕が早く来てしまっただけなので。作業員の方々もよろしくお願いします。」


「おぅ、商長からの直々の指名依頼をうけたからな。俺達20人と商長で2日でパパッと仕上げるぜ。それで、そっちの狼と蜘蛛があんたの従魔ってやつかい?」


作業員一人がベードとモイザ、レサキに目を向けると、他の従業員達も不安げにそちらに目を向けた。作業員たちはいい肉体を持っているのだが、戦いに関しては得意でないのだろう。


「そうです、僕の従魔たちですね。危害をくわえなければ各々動いてるだけなので、お気になさらずに。普通に言葉も理解しているので、邪魔な場合は退くように言ってください。」


「ばぅ。」


「――――。」


「おう、返事もできるのか?それなら助かるぜ、作業の邪魔なときは遠慮なく声かけるぜ。」


ベードは一鳴き、モイザとレサキは前足の一つをあげて反応する。それを見た作業員達はあからさまにほっとしていたのだが、厳密にはもう一匹リュクスには従魔がいるのだ。だが頭上にいるレイトの紹介は不要かと考えていたのだが、トレビス商長が訪ねてきてしまった。


「私は指示係として作業しますので、少なからず時間もあります。それと、レイト様についてはご紹介なさらなくてよいので?」


「存在が希薄なやつなので、無理に紹介することはないかと思ったんですけど。一応周知した方がよかったですかね?」


『ん。』


「ん?」


またレイトから声が聞こえたような気がしたリュクスは思わず頭上に目を向けた。トレビス商長はその様子を見て少し悩み込む。


「それもそうでしたね、やはり今も頭の上にいらっしゃるのですよね?」


「そうですね、今も頭上にいますよ。珍しく起きているようです。」


「頭の上にも従魔がいるのかい。まぁそこが居場所なら俺達には関係ないな。商長、さっそく予定通り始めちゃいますよ?」


「はい、こちらはリュクス様と商談をしますので、始めてください。リュクス様、ここでは人が通るかと思いますので南端へ行きましょう。」


「わかりました。作業員の方々、改めてよろしくお願いします。」


「おう、任せとけ、野郎どもやるぞ!」


作業員たちはさっそくポーチから様々な大きさの木材を取り出すのだが、リュクスの土地内でなく聖域が広がってできた広いスペース側に資材を置いていってるのだ。

まだ誰の所有地でもないはずなので、トレビス商長が許可出してのことなのだろうとリュクスは思い、トレビス商長に連れられ南端側にと移動していった。

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