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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
デモナの地

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黄金のスカラベ

休息日のあと、リュクスたちは岩盤地帯と砂漠地帯の境目へ戻って来ていた。

いつもなら朝に転移してくるのだが、今回はアンフィスバエナの習性を考え、夜のうちにわざわざ再びフレウの力を借りて、転移門から空を経由して帰還する形で。


『コッ…こうなるなんてな。なんかこの間のが恥ずかしいぜ。』


「それはごめん。でも伝える前に寝ちゃったし、わざわざ起こしてまで言うことじゃないでしょ?」


『確かにな。んで、魔物の気配はどうだ?』


「僕は今のところ感じないよ。」


うぬも遥か遠くの地中にアンフィスバエナを感じ取れるが、起きてくる気配はないな。』


『んじゃ、着陸するぜ。』


フレウが地表に降り立っても、事前に感じていた通り、魔物に襲われることはなかった。

先日と同じく、すぐにベードへとバトンタッチすると、フレウはそのまま眠りにつく。


「それじゃあ、ベード、砂場はちょっときついかもしれないけど、よろしくね。」


『問題ありません!では、出発します!』


ベードは意気揚々と砂漠地帯へ走り出す。

宣言通り、砂に足を取られることもなく、いつも通り順調で軽快な走りだ。

かといって、特別な魔法を使ってるわけではない。

硬い岩盤地帯でも、柔らかい砂地でも走破できる肉体にベードが進化したのは、ひとえに主であるリュクスを乗せて、どこでも快適に進みたいという願いの結果なのだろう。


しばらく砂漠地帯を進むと、まずはレイトが、続いてリュクスも魔物の気配を感じ取る。

地表にも砂中にも蠢く気配から、夜でも動く魔物のようだ。


「…小さい気配ではあるけど、数が多いね。アンデッド系じゃないといいけど。」


『おそらく、それは違う。ここまで感じたアンデッドの気配とは全く異なるからな。』


「おー、さすがレイト。そんなこともわかるんだね。」


感心するリュクスに、レイトは少し白い目を向けた。


『むしろ、お前はなぜわからぬ?タラスクの時は弱点であるへその位置までわかっただろう?』


「あー、もしかしたら識別してるかどうかが関係してるのかも。識別する前だと、感知した魔物の大まかな大きさはわかるけど、細かくはわからないんだよね。」


『なるほど。お前の感知は識別をしてこそ本領を発揮するのか。』


「そういうこと。丁度姿も見えてきたし、識別してみるよ。」


かなり近づかないと姿を見つけられなかったのは、この世界の魔物にしては珍しく、人の拳ほどの大きさしかなかったからだ。

月に照らされるその姿は、コガネムシそのものだが、全身が黄金に輝く。

ただ金というだけならば、レイトも金の毛色になるが、それとは違う無機質な金色で、生物らしくない怪しさを放つ。


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対象:ゴールドスカラベ

肉体が金そのもので作り上げられたスカラベ

生物でありながら体温を持たず、金属と同じ性質を持つ

大量の群れで行動し、他生物に襲い掛かる

噛み砕かれた箇所は不完全な黄金へと変質し、その部位は些細な衝撃で崩れ落ちる

スカラベそのものも生命力を失うと、砂のように崩れ落ち、肉体を残さない

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「うへぇ、噛みつかれた場所が黄金になる?しかもまた倒しても素材が残らないタイプの魔物みたい。」


『つまり、黄金化ということか。石化のように、直す手段がないか調べられないのか?』


「うーん、石化みたいな明確な単語はないけど、試してみる。」


リュクスが識別表示の黄金へと変質の部分を意識すると、新たに識別内容が表示された。


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対象:黄金化

肉体の一部が黄金に変質する現象

石化と違い一瞬で全身が変質することはない

複数個所が黄金化すると、毒のように全身に回り、黄金像が完成する

些細な衝撃で崩れ落ちるうえ、黄金としての価値はなく、治療手段もない

----------


「…治療手段はないらしい。アンフィスバエナより、よっぽど危険だね。」


目の前のスカラベの群れは、数えるのも億劫になるほど大量。

無機質な金色ではあるが、虫らしい姿はそのまま。

リュクスは元の世界で誰からも嫌われていた害虫を思い出してしまい、思わず俯き口をふさいだ。


対して、レイトは冷静にスカラベの動きを観察する。

群れはリュクスたちに向かってくるわけでもなく、砂に潜ったり、軽く飛び跳ねたりしている。

その動きから、レイトはスカラベが砂そのものを食している可能性を感じ取った。


『ベードの気配には気づいていないようだな。』


「…そうだね。」


『どうしたんだ主?顔色が悪いぞ?』


俯いたリュクスをグラドが見上げていた。

リュクスはすぐに取り繕い、苦笑いを見せる。


「あー、ごめんグラド、大丈夫。それより、まっすぐ進んで踏んだりしても面倒だし、ちょっと回り込もうか。」


『了解です!』


『ベードならば踏むことはないと思うが、まぁいい。』


リュクスの頭上にいたレイトも、不調に気づいたようで、軽く鼻息を鳴らすだけで、追及はしてこなかった。


さらに進むと、再びスカラベの群れの気配を捉える。

しかし、今度は先ほどの比ではなく、砂漠一面を覆うほどに多い。

それがまるで波のように蠢いているのを感じ取ってしまい、それだけでリュクスは苦い顔を見せた。


「…さすがに多すぎる。気持ち悪いよ。」


『お前がそんな風に言う魔物が出るなんてな。』


「僕だって苦手なものくらいあるよ。」


『まぁいい。ベード、とにかく避けて進め。あの量はさすがに危険だ。』


『りょ、了解です!』


ベードもまさかレイトから危険といわれるとは思わず、少し緊張気味に進路をずれて進んでいく。


やがて日が昇り、太陽に砂漠が照らし出される。

時折、群れからはぐれた黄金のスカラベを見つけるが、より金の輝きを増しているのに、そこに美しさは全く感じられない。

それは、スカラベが虫の姿だということのほかに、普通の砂漠だと思っていた場所が、黒ずんだ砂地だったからだろう。


リュクスも、月の光を浴びているにしては、少し薄暗い砂地だと思っていたが、黒ずんでいることには気づけなかった。

濁った魔素が砂にまで浸食している影響だ。

見た目こそ歪だが、リュクスには砂地自体にはそれほど不快感を感じない。


なぜだろうとリュクスは少し考え、以前ウロボロスより見せられた白の大地を思い出す。

水鏡のようなものに映し出されただけの景色なのに、異様な恐怖感を与えたあの光景。

それに比べれば、黄金スカラベの群れなど、嫌悪感こそあれど、さほどのものではないと、リュクスの心境は少なからず落ち着いた。

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