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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
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ネティスの新たな水の力

七十二層からは皆で戦うと決めると、まずはグラドが張り切った。

最初の部屋にいたのは、ネズミの骨格を思わせる小柄なデモナリッチ。

リュクスたちを見つけるや否や宙へ舞い上がり、風と炎を組み合わせて吹き荒れる火炎を生み出した。


グラドは相手が舞い上がった瞬間には、すでにベードの背から飛び出していたが、飛行しながらきりもみ回転で炎を切り裂き、突き進むと、間合いに入った瞬間に広範囲に黒炎を放って消し飛ばした。

余波のデモナリッチの炎がリュクスたちにも押し寄せたが、それはモイザの石壁が防ぎ、降りてきたグラドを出迎える。


「あっけなく倒したけど、どうだった?」


『少しは気が晴れたが、まだまだだ!』


『ぐっ、まだグラドには及ばないか。俺もまだまだ力を見せたいです!』


『ニだって戦うよー!』


進化を果たしたとはいえ追いつけないと歯噛みするベードだったが、リュクスは少し悩む様子を見せる。


「うーん、上ではベードとモイザが頑張ったし、この層はグラドとネティスに任せてみようかな。」


『んなっ!…まぁ主がそういうのなら。』


『そうこなくては!さすが主!』


『わーい!じゃあ次から防御はニに任せて!』


『すいません。何も決めずに壁を出してしまいました。』


はしゃぐ二匹を横目に、モイザが控えめに謝罪するが、リュクスは慌てて首を振る。


「それは問題ないよ。だって何も決めてなかったんだから。」


『うん!ニも次の部屋からで大丈夫!』


『出過ぎたまねだったかと心配しましたが、安心しました。』


「レイトも、それでいいかな?」


『好きにすればいい。ただ、そうなると次の層はうぬとフレウ出番か。』


「…え?別に見ていたいなら無理に出なくてもいいけど。」


『せっかくだ。己も力をふるって見せよう。』


「そ、そう…じゃあベード、進む役はお願いね?」


『もちろん、了解です!』


意外にも乗り気なレイトの様子にリュクスは少し戸惑いながらも、戦闘で止めていたベードの足を次の部屋に向かわせる。


二部屋目は人型骨格のデモナリッチ。操るのは土と水を混ぜ合わせたと思われる泥のような魔法だった。

グラドは先ほど違い、降り注ぐ泥玉を避けつつ、黒炎を広範囲に放つ。避けられた泥玉はネティスが水の壁を張り、受け止めてみせる。

ただ石壁のように弾き返すのではなく、水壁の中に取り込んで停滞させる形だ。


『うーん、モイザの壁と違って、ニのはこうなるんだ…』


「防げてるから十分だと思うけど…氷の壁にできたらモイザみたいに防げるかもね? 」


『氷の壁?…わかった!次やってみる!』


「え?」


やってみると言って本当にできるのかと、リュクスははしゃぐネティスを不安げに見つめるが、ベードが口を挟む。


『おいおい、ぶっつけ本番でできるのか?俺だって氷の壁はまだ作れないぞ。』


『いいこと思いついたから、やれるもんねー!』


『おい、吾は戻った。次の部屋に行くぞ。』


「そ、そうだね。行こうか。」


リュクスは、もしネティスがうまくいかなくても最悪はモイザと自分で防げると考え、ベードに指示を出して次の部屋へと走らせる。


「そういえば、グラド、泥玉はよけてたけど、どうして?」


『…無駄に汚れたくなかっただけだ。悪いか?』


「ううん、変なこと聞いてごめんね。」


グラドがベードの背の上で座っている場所は、リュクスのすぐ前だ。気を使ってくれたのかもしれないと、リュクスは一瞬思ったが、すぐに次の部屋が見えてきたのでそれ以上は突っ込まなかった。


三部屋目にいたのは犬の骨格を持つデモナリッチ。放ってきたのは大量の鋭い風の刃。

グラドは一部屋目と同じくきりもみ回転で弾き飛ばし、突進を続ける。

一方で、大量の風の刃はリュクスたち襲う。だが、ネティスは分かっていたように前ヒレを上げた。


『ウォーターウォール!にっ、フロストブレス!』


ネティスはまず水の壁を作り上げ、そこへ向かって飛び出す。口から氷の息を吹きかけると、瞬時に凍り付いた壁が完成し、飛んでくる風の刃を見事に弾き返した

ただ氷の壁を魔法単独で作るより手間はあるが、ネティスの凍結は一瞬で、ほとんど差はない。


『わーい!うまくいった!』


「それはいいけど、グラドのほうはちょっと大変そうだね。」


グラドのほうは再び自慢の黒炎を燃え広がらせたのだが、デモナリッチは自身の周りに水球を作り上げながら後方へ下がることで、その黒炎を何とかしのぎ切ってみせる。

初めは全員を一気に倒そうと風の刃を放ってきたが、今度は赤黒い瞳で一瞬リュクスたちを睨んだかと思うと、グラドだけを狙うように巨大な風の刃を一発だけ打ち放った。


『しゃらくせぇ!』


グラドも自らの翼に風を纏わせ、その風の刃を相殺してみせる。相手が後退するのに合わせ、グラドも追いつこうと翼を羽ばたかせるが、再び放たれた巨大な風の刃に動きを止められる。焦れて黒炎を放っても、水球によって防がれ、かわされてしまう。


避けるだけなら黒炎の燃え広がりは相手の飛行速度を上回るはずだ。水球だけなら黒炎で打ち破ることもできるだろう。だがデモナリッチは初弾の黒炎からその性質を読み切っていた。

飛行速度ではグラドに劣るが、風の刃で距離を保つ。互いに有効打を与えられぬまま、空中戦が続いていった。


その様子を眺めていたリュクスの元へ、ベードからペタペタとネティスが戻ってくる。


『ねぇねぇモイザ!あの、土を消しちゃう魔法?ってどうやるの?』


『急ですね。もしかして、あの水球を消すつもりですか?』


『うん!そしたらグラドの炎が届くでしょ?』


「邪魔したらちょっと怒りそうだけど…」


『ふん。あの程度の守りに対策できぬグラドが悪い。やってやれ。』


『わぁい!それで、どうやるの?』


きらきらとしたまなざしで見つめてくるネティスに、根負けしたようにモイザもベードから降りて説明を始める。


『…わかりました。もっとも、私も具体的に説明はできないのですが、イメージは相手の土を砕くような感じです。初めは壁が崩れるのを見て、それを魔法にできないかと試したのがきっかけですね。魔法によって出来上がった直後を狙うと上手くいきます。壁以外も壊せるようになったのは進化のおかげです。』


『うーん?えっと、土の壁が崩れるイメージ?』


ネティスはいまいちピンと来ていない様子で、モイザもどう説明すべきか首をかしげる。その様子を見て、リュクスは思いついたアドバイスを伝える。


「ネティスだと水だよね。お風呂で泡って見たことあるでしょ?」


『うん!あるよ!』


「あの泡が割れるのを覚えてるよね?そのイメージで、あいつの水球を割れないかな?」


『ちょっとわかったかも!やってみる!』


高い天井付近で飛び合うグラドとデモナリッチ。距離はあるが、ネティスは両前ヒレをデモナリッチの動きに合わせて動かしていく。

再びグラドが黒炎を放つ。デモナリッチが対応するように水球で身を守る。その瞬間、ネティスは前ヒレ同士を打ち合わせるように叩いた。


『ブレイクウォーター!』


デモナリッチの水球はネティスのヒレの音に合わせるようにパンッと割れる。唖然としたように下を向いたデモナリッチだったが、黒炎の勢いに呑まれ消滅していった。


『わぁい!うまくいった!』


『今のは、相手が水球だからうまくいったに過ぎない。上で見た津波なら消せないだろう。』


『あっ!そうだね…でもちょっとわかってきたから頑張る!』


『またネティスも強くなりそうだ…』


レイトの指摘に一瞬しょぼくれたネティスだったが、すぐに元気を取り戻し、ベードの上に飛び乗る。

そのベードはというと、進化で少しは追いついたかと思えたネティスの力に、少し天を仰いでいた。


天からはグラドが下りてくる。リュクスは両腕を上げ迎え入れたが、その顔は悔しげだった。


『あの程度の水の守りを突破できなかった…』


『もう少し空での戦い方を考える必要があるな。』


「そういえばスパイラルは使わなかったけど、どうして?」


『あれは地上でしっかり力を溜めなければまだ使えないのだ。ネティス、今回は助かった。』


『ほんと?良かったー!主がグラドが怒るかもって!』


『吾だけに時間をとらせすぎるわけにはいかないからな。残る部屋で挽回してみせる!』


リュクスの予想に反し、グラドは素直にネティスに感謝し、残る部屋での挽回を誓う。リュクスはその様子に軽く微笑み、ベードに先を進ませる。


残る五部屋でもネティスとグラドが力を見せ、少し苦戦する場面もあったが、何とか突破していく。

結局七十二層は一部屋増えたうえ、戦闘でもかなりの時間がかかり、ほぼ二日がかりでの突破となった。

そしてリュクスの提案で、七十三層にはそのまま突入せず、一度自宅へ転移し、しっかり休みを取ることにした。

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