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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
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302/325

進化を果たした二匹

レイト、ベード、モイザと別れて四日。

他従魔たちの気遣いもあったからか、はたまた初日にブラックドラゴンへ名前を与えるという特大の出来事があったせいか、リュクスは少し寂しさを覚えつつも、それ以降は普段通りに日々を過ごしていた。


もっとも、今日は三匹の帰還日。

リュクスはいつもより早く起き、朝から落ち着かない様子で自宅にいたが、昼前のこと、簡易神殿の部屋がふわりと光を放つ。


「おっ!帰ってきたかな?というか、転移してくると少し光るんだ。」


リュクスは自分が転移で帰ってくることはあっても、誰かが簡易神殿へ帰ってくる場面を見たのはなんだかんだ初めてだった。

ベードも通れるよう作られた大扉を開くと、そこにいたのは一回り大きくなり、毛並みもさらにモフモフとしたベード。

大きさこそ変わらないが、黒かった体色が濃い茶色に変わったモイザ。足先も八本すべてが白く染まっている。

そして満足げな表情を浮かべ、ベードの頭上に乗るレイトの姿だった。


「みんなお帰り。」


『はい!ただいまです!主!』


『ただいま戻りました。主。』


『まぁまぁ満足いく特訓だったな。』


素直じゃない言い回しをしながらも、レイトはすぐにベードからリュクスの頭上へと飛び移る。


重さはほとんど感じない。気配を消しているせいか、意識していなければ存在感すら薄い。

それでも、やはり頭上にいるほうがしっくりくる。


リュクスはそんな自分に少し呆れながらも、グラドが頭上に乗ろうとしてきたことを思い出し、ふっと頬を緩めた。

そして、進化を果たし帰還した二匹を改めて迎え入れる。


「二人とも無事に進化できたみたいだね。さっそく識別してもいいかな?」


『もちろんです!』


『ぜひ、進化した私たちを見てください。』


----------

対象:べード・アルイン

種族:フロストシャドウフェンリル

主人:リュクス・アルイン

スキル:〈牙技〉〈爪技〉〈聖族言語〉〈深潜伏〉〈影魔法〉〈夜陰〉〈騎狼〉〈氷層魔法〉


対象:モイザ・アルイン

種族:アースシンテシスカルキノス

主人:リュクス・アルイン

スキル:〈毒生成〉〈統制指示〉〈分担指示〉〈聖族言語〉〈料理〉〈裁縫〉〈契約借技〉〈生産技術〉〈製薬〉〈合成〉〈大地魔法〉〈陶芸〉〈染色〉〈操糸魔法〉

----------


同時に二匹を識別するリュクス。

進化したことで、二匹とも種族そのものが変わっていた。特別にスキルが増えたわけではないが、一部は明らかに上位へと進化している。

そんな二匹のうち、まずはさらに巨体となったベードにリュクスは顔を向けた。


「ベードはフェンリル?僕の知ってる限りじゃ、伝説級の魔物だったはずだけど…」


『そうだな、フェンリルは強い種族のはずだ。』


『どうでしょうか!主!』


「うん、すごくかっこいいよベード!」


胸を張るベードを素直に褒めるリュクス。そこへレイトが補足を入れる。


『とはいえ、進化でフェンリルになったベードは、生まれつきのフェンリルよりは劣る。それでも当面はグラドとも競えるであろう。』


「進化固体のほうが劣るんだ…」


『幼き頃からフェンリルとして生きれば、それだけで育ちも違うからな。』


「…なるほど。」


人でさえ、生まれや環境で差が出る。魔物ならばなおさらだろう。

リュクスは納得まではいかないがそう理解し、気を取り直してモイザへと目を向ける。


「モイザは…カルキノス?なんか前に一度見たことがある名前だけど…」


『私以外のカルキノスを見たのですか?』


「いや、この世界じゃなくてね。元居た世界でのおとぎ話でって話。…あ、そうだ。たしかカニ座のモチーフだった。」


モイザの疑問にリュクスは慌てて訂正を入れたことでリュクスは思い出す。元の世界で、カニ座を象ったキャラクターとしてカルキノスという名が使われていたことを。


『モイザは蟹ではない。蜘蛛だ。もっとも、己も初めて知る種族ではあるがな。』


「うーん、こっちでは蜘蛛の伝説的な生き物なのかも。なんにせよ、二人とも改めて進化おめでとう! みんなにも見せに行こう! 」


『そういえば、他の方々が見えませんが。外ですか?』


「うん。僕は家で待ってたけど、みんなは外で自由にしてるはず。…でも、転移の光を見たからもう来てるんじゃないかな。」


リュクスはレササたちがすぐに駆け付けられたのも転移の光を見たからだろうと見当をつけた。そのため、今回の光で従魔たちも外に集まっているだろうと家を出る。

案の定、家の前にはフレウ、ネティス、グラドが待ち構えていた。ただ、他の従魔たちの姿はなく、遠くにトレントの姿が見える程度だった。

リュクスは少し気を遣わせてしまったかと感じながらも、いつも一緒にいる従魔たちとの再会に、心の奥で喜びを噛みしめた。


『コッ!ベード!また一回りかっこよくなりやがって!強くもなったんだろうが、絶対変異して追いついてやるぜ!』


『まぁ、それはいいが…いつも寝てるのに、珍しく起きてるな。』


『なんだよ!起きてたら変か!主がさみしそうにしてやがったから、しっかり寝れてないだけだ!』


フレウは一通り騒ぎ立てると、定位置であるベードの頭上に陣取り、すぐに眠りについてしまった。


「…いつもの場所がなくって寝つきが悪かったんじゃない?」


『どうだろうな。それよりも、己らがたった四日いない程度で不安がったのか?』


「いやいや、初日だけだよ。でも…それもある意味で吹き飛んだけどね。」


リュクスの曖昧な返しに、レイトが鋭く目を細めた。


『何かあったのか?』


『おう。われの父様に会いに行ったのだ。』


『…何をしている?戦いを挑まれたりはしてないだろうな?』


「何とか僕は戦いにならなかったよ。グラドは力を見せてたけどね。…あと、名前をあげた。」


『…名を渡したということは、まさか従魔にしたのか!?』


「し、してないよ!グラドに名前があることを羨ましがったから、名前だけあげたの!従魔にはなってないよ。」


リュクスが慌てて否定すると、レイトは大きく息を吐いて安堵し、ベードとモイザも肩をなで下ろすように表情を和らげた。


『よかったです。せっかく進化して強くなったのに、俺たち以上の従魔がまたできたのかと…』


『主、お気を付けください。名前を渡しただけでも、主なら従魔にしてしまいそうですから。』


「さ、さすがに触れてないし、名前だけでテイムはできないと思うよ?」


『どうだろうな。お前のテイムという力も覚醒で強力になっている可能性がある。…また会いに行くつもりなら、その時に識別で名前を確かめろ。』


「うっ、りょ、了解。」


従魔となっていれば、リュクスの苗字であるアルインが名に刻まれる。

先日グラドの父にグランと名を与えたわけだが、もちろんリュクスとしてはテイムしたつもりはなかった。

とはいえ、ネティスの時のように思いがけない形で従魔化した例もある。リュクスは少し不安を覚えつつも、いつかの再会の折に必ず識別をかけることを心に刻んだ。

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