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ランダムに選ばれたのはテイマーでした  作者: レクセル
南端の街

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テイムの力

ドーンに3皿渡してしまったことで料理セットの皿が減ってしまったなとリュクスが思っていると、ドーンから皿がなぜか5枚渡された。


「えっと数が多いんだけど、ありがとう?」


「いや、感謝はこっちだ。その皿も俺はめったに使わないからな。にしても野外料理も捨てたもんじゃないな。久しぶりに外で食ったが悪くない。」


「それはよかったよ。うげっ!?」


「ん!?どうした?」


リュクスが料理セットを片付けようかというタイミングで何か背にぶつかってきた。どうにも覚えのある感覚。足元をみれば兎が見つめていた。

リュクスが昨日ノビルの根をあげた兎のようだが、あのトレインやドーンの狩りの時はいなかったのだろうか。とはいえまた来たのだからとリュクスは沢山切り分けておいたノビルの根から10個手に乗せて差し出した。


「きゅ…」


兎はちょっと戸惑ったようだが、今回は1粒その場でむさぼり始めた。やはり手からは少し戸惑ったかと残りは皿にのせたリュクスだったが、ドーンが不安そうに見てくる。


「お前大丈夫か?急にさっき声を上げてたが。というかいつの間に兎が?何を餌なんか上げてるんだお前。ん!?おま、そいつは、次から次にお前は…」


「え、何?どうしたんです?」


「お前、そいつ識別してないのか?そいつはアタックラビットじゃない。サチュレイトフォーチュンラビットだぞ。」


「え?」


---------

対象:サチュレイトフォーチュンラビット

希少性の高いその存在はとてつもない幸運とそれに伴う運命を運んでいるといわれている

その姿を見たものが翌日に金鉱石の洞窟を掘り当てたと伝説があるが

その洞窟で鉱山病にかかり死亡したという言い伝えがある

---------


識別結果が明らかにアタックラビットとは異質な存在であることに目を疑った。よく見ると、アタックラビットの毛色は茶色一色であるはずなのに、この兎の首元には白と黄色、いや、黄色ではなく金色の毛が混じっている。何らかの認識の阻害を受けていたのだろうが、リュクスが昨日見たときには見つけることができなかったものだ。


「きゅ?」


「まぁいいか。害はないんだろうな?あったら昨日の時点で僕が死んでるんだろうし。」


もし危険な生物なら昨日突進された時点でリュクスは死んでいただろう。だからこそリュクスはアタックラビットだと思い込んでしまった。おそらくこの兎はリュクスの認識をゆがませるような力も持っているのだろう。


「昨日も出会ったのか!?」


「はい、おそらく同じ個体ですね。昨日もノビルの根を食べにきました。」


「はぁ、よく平気だったなお前、というか俺ですらそいつに気が付くのが遅れた。すごい認識阻害だったが、まさか餌をもらったことで警戒が解けたのか?」


悩みこみじっと見てくるドーンを気にも留めず、兎はノビルの根を完食した。アタックラビットとおなじようにノビルがご馳走なんだろうか。だとしても自分の幸運で見つけられないのか?リュクスが悩みながら見つめるが、今日は食べ終わっても逃げずにいた。


「おいおい、こんな間近にいていいのか?お前は知らないだろうから伝えておく。この草原にいるのはほとんどがアタックラビットだが、上位種や変異種も一応いる。だがフォーチュンラビットなんかじゃない。フォーチュンラビットは一線を越えたまったくの別種族だ。だがこの見た目じゃほぼ見分けがつかないな。おそらくそういう擬態をしているんだろう。本来の毛の色は白だけのはずだ。フォーチュンラビットは希少性の高い魔物だが、危険性も高く術法を操る力があるそうだ。目撃例の少なさと、出会えて狩ろうとした奴が死亡したこともあり、情報の少ない魔物なんだが。そんな魔物のさらに上位に位置するのがそいつ。サチュレイトフォーチュンラビット。古い伝承だがそいつを見たやつが金鉱山を当ててあわや一攫千金という翌日に死亡したといわれている。あまりの不可解さに占い師を雇ったそうなんだが、その占い師が言ったのはその身に強すぎる運を受けたものはその運を持ち切れず、あふれた運は病となってその身を襲うって話だったそうだ。」


「きゅ?」


かわいい見た目して恐ろしい存在なわけで、リュクスはそんなの存在を二回も見てしまった。というかいまも足元にくっついてるのだ。あまりにもくっついているそいつに違和感を感じもう一度識別する。


----------

対象:サチュレイトフォーチュンラビット

種族:サチュレイトフォーチュンラビット

主人:リュクス・アルイン

スキル:〈飽和幸運〉〈極雷魔法〉〈縮地〉〈異常耐性〉〈属性耐性〉〈察知〉〈飢餓耐性〉〈環境適応〉〈隠蔽〉〈種族偽装〉〈感知阻害〉〈天雷災〉〈聖族言語〉

----------


明らかにさっきの識別内容とは違うのにリュクスは考える。これは自分を識別したときのスキルも見える表示みたいだと。なぜ急にと思ったが一つ思い当たる節があった。


「もしかしたらテイムできたみたいです?」


「テイム?テイムってまさか、上に確認してた従魔契約のことか!?」


「あ、それです、それ。多分なんですけど兎のスキルが見えたので。」


「あーテイマーとか言ってたか?それが従魔契約者ってことなのか。従魔にした魔物のスキルが見れるようになるって聞いたが、なるほどな。」


ドーンにテイマーだの魔物使いだの言った時には微妙な反応だったが従魔契約なら伝わったようだ。ドーンが確認したのが上といっていたがギルド長とかだろうかと考えてるとテイムした兎がリュクスの足元をぺちぺちと叩いていた。


「きゅー!」


「今話し合ってるとこなんだけど。もしかして名前がほしいのか?とはいっても、どうするか。」


リュクスは対象と種族があったがどちらもサチュレイトフォーチュンラビットだったことを思い出す。テイムしたなら名前を付けるべきなんだろう。しかし名づけは大切だ。変な名前を付けると愛着も薄れる。だが考えすぎてもいい案が浮かぶリュクスでもなく、普通に種族名から引っこ抜くことにした。


「名前はレイト、でどうだ?」


「きゅい!」


「どうやら気に入ったみたいだぞ?」


「そのようですね、よかったです。」


リュクスが手を伸ばしてもレイトは逃げる様子もないのでちょっと持ち上げてみた。抵抗もされずに持ち上げられるレイトはもふりとしたいい手触りだ。


「よろしくな、レイト。」


「きゅ!」


「うぉ、なんだ?」


リュクスが顔を近づけたら急に手から飛び出てリュクスの肩に乗り、さらにリュクスを上っていき頭上で落ち着いてしまった。器用に肩に後ろ脚を乗せ、前足は頭の上という状態だ。リュクスとしては重くはないが、はたから見たらかなりメルヘンなさまだ。


「はっ、そこがお気に入りの位置ってか!結構お似合いだぜリュクス!」


「やめてくださいよ...」


「しかしとんでもないものを従魔にしたな。でもわかってないとぱっと見てもまじでアタックラビットにしか見えないな。」


リュクスの頭上で寝息が聞こえ始める。今はドーンから見てもアタックラビットにしか見えないようだ。

それならば問題も起きないかとリュクスは考えた。


「あの、アタックラビットとしてなら、従魔として街に連れて行っても平気ですかね?」


「アタックラビットの従魔がいるってのも、かなーり目立つと思うぞ?そんな弱小魔物をどうするんだってな。まぁサチュレイトフォーチュンラビットよりは確かにましだな。アタックラビット扱いならば門兵にもなんとか俺が言えば言い訳が立つ。」


「じゃあだますようで悪いですが、アタックラビットってことにしておきましょう。」


「そうだな。んで休憩はすんだか?食えば魔素も回復するはずなんだが、俺は精神的にはどっと疲れた。まぁ肉体的には問題ないわけで、お前が平気なら残り40の兎炭を集めるぞ。」


「それがあったんだった。でも行けます。こいつ激しく動いても平気かな?」


ちょっと頭上のレイトを気にしつつ、リュクスは反復横跳びしてみる。さらに頭を傾けてみたりもする。まったく動く気配がない、どう固定されてるのかと上を睨むもスースーと寝息を立てたままで器用なもんだ。


「大丈夫みたいだな、よし行くぞ。」


「はい。」

saturate(サチュレイト)⇒飽和する

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