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商業者ギルドへ行く

窓から差し込む強い日に照らされ、目をこすりながらリュクスは上体を起こす。カーテンはと思って窓に目を向ければ、リュクスの部屋の窓ではなく簡易宿の窓。

昨日のことは夢でなかった。異世界にいるのだと改めて実感しながら手元に証明を取り出した。宿代で消費して残り900リラ。

飲食はもちろん取らなくてはいけないし、ドーンの持ってたようなアイテムポーチも欲しいと考えたリュクスは、冒険者ギルドの依頼もいいが、金策といえば商業の方がもうかりそうだと考えた。

しかし商業ギルドの場所がわからないわけで、まずは冒険者ギルドで場所を聞きつつ依頼を受けるかと完全に体を起こす。しかし夜の間寝ていたわけで催してくる。

トイレに入るが便器の中の蠢くものを思い出してしまったリュクスだが、生理現象を優先して思い切って座って用を足してしまった。備え付けの紙質はいいものとは言えなかったが、別段蠢くものが登ってくるなどはなく、元の世界と同じように使えたことに安堵した。

トイレにはシンクも置かれているが蛇口らしいものは見当たらず、代わりにシンク上部に真っ青な四角推型の石がつけられている。手をかざすとその石からちょろちょろと水が出てくる。水を見たリュクスは喉が渇いてきて、これは飲めるものなのかと識別をかけた。


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対象:魔道水

魔詰石にそそがれた魔力によって生まれた水。すすぐだけであらゆる汚れを落とすが飲用も可能。

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石鹸が備え付けられていないのは水だけでも問題がないからではあったが、リュクスは一度備え付けの紙で手をしっかりぬぐった後に水を口に含んだ。別段味があったりするわけではないし爽やかだったりはしなかったが喉は潤った。

初異世界でのトイレでややあったが、リュクスは宿を出る。太陽の位置的にだいぶ朝から時間がたっているようだが、寝た時間も遅かったようなので仕方ないだろう。冒険者ギルドにと向かうわけだが真正面なのですぐにたどり着くと、5つの受付すべてで職員が対応し、どこも数人並んでいるのが外からでも見えた。

右の依頼板の前も人が多く貼り付けられた依頼も多い。そこから一枚依頼を取ってすぐに列に並ぶ人もいるわけだが列の流れ自体は早い。リュクスは受付の一番右に輝くスキンヘッドの姿を見つけ、入り口で立ち止まっても仕方ないと右の列に並ぶ。7人ほど前にいたがすぐにリュクスの番が回ってきた。


「いらっしゃい、ってお前か。依頼も持ってないようだが用件は?」


「商業者ギルドの場所を教えてほしくて来ました、依頼もうけるつもりだったんですが依頼板の前混んでいたので。」


「なるほどな。ところでなんで商業者ギルドに行きたいんだ?」


「アイテムポーチを買うためにもリラを稼ごうと思うんですけど、依頼を受けて稼ぐよりも生産で稼いでみるのもいいかと思いまして。」


「あーやっぱそうか。商業者ギルドなら北門の少し手前にあった一番デカイ建物だ。だけどポーチ買う前に一応この依頼見とけ。」


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納品依頼・アタックラビットの炭

アタックラビットの炭:10

アタックラビットを適切な火で燃やした際にドロップする

アタックラビットの炭という素材が大量に必要なので依頼します

報酬:100R


追加依頼

アタックラビットの炭:100

報酬:袋型アイテムポーチ(小)

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なぜかリュクスに押し付けられた依頼書には昨日リュクスが作り出してしまったアタックラビットの炭の納品依頼が書かれていた。


「え、これって?」


「質問はなしだ。どうしてもききたけりゃ人がすくなってからこい。期限もない依頼だからな、もし受けるつもりなら依頼書を証明に押し付けとけ。ほら、後ろ詰まってるんだからどいたどいた。」


リュクスは追い払われてしまったが後ろに人が並んでいるのはわかっていたので潔く列から離れる。人のいない隅のほうによって依頼書を見つめるが、とりあえず受けてみるかと証明の裏側に押し付けた。

依頼書が証明にと吸い込まれていく。そして証明の裏側に依頼書の内容がそのまま記入された。これで受注したことになるのだろうが、期限はないといわれたのでリュクスは当初の目的通り商業者ギルドにまずは向かうことに決めた。

その道中にはたくさんの露店が立ち並ぶ。ほとんどが食材そのものを取り扱っているか料理を扱っているようでそこら中からほんのりいい匂いがしてくるが何とか振り払う。

露店の中には時折だがドーンが使っていたような解体ナイフを取り扱う店や、片手で持てるような盾を取り扱う店なんかもあるが、その中でリュクスが気になってしまったのが革細工を扱う店だ。

ドーンがつけていた鞄型アイテムポーチの固定具や解体ナイフホルダーのついた皮ベルトを思い出す。露店の台の中が展示ケースになっていて、そこの中に腰に巻く用の黒に染められた杖ホルダー付きの皮ベルトを見つけてしまった。


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杖ホルダー付き皮ベルト

レッサードッグの皮を使った腰に巻くようのベルト

杖を使うもののためのホルダーが添えられている

値段:300リラ

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思わぬところで見たこともない魔物の名前を見てしまったリュクスは少し残念がる。彼としてもこれはゲームではないのだからしっかりと事前に魔物情報を調べるべきという気持ちもあるが、やはり未知を体験したいという気持ちもありできれば素材情報は見たくはなかったのだ。

それはともかく300リラならば買えなくはない金額であり、さらにはリュクスがずっとベルトを見ているので買ってくれるのかとにっこり顔の店員に引くに引けなくなってしまった。


「すいません、このベルトください。」


「はいどうも、300リラになります、証明を重ねてください。」


そんな感じでつい300リラ散財してしまったリュクスだが、受け取った黒ベルトを早速身に付けて杖をホルダーにさして満足そうに歩き始める。商業者ギルドにつくまでは我慢と思っていたはずなのに露店は散財の危機だなとできる限り見ないようにして歩いていた。

そして到着したのは商業者ギルド。冒険者ギルドや宿も大きかったがこの建物はどちらよりも縦にも横にも大きい。このあたりでも一番大きい建物だ。

目立つのでわかりやすくてよかったけどと思いながらリュクスは扉を開く。入ったそこは元の世界で見たような商談スペースほどの広さで建物の大きさを感じない空間だった。しかも目の前が受付のようで机越しに座っていた女性がすぐに立ち上がって声をかけてきた。


「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか。」


「えっと、商業者ギルドに登録しようと思いまして。」


「かしこまりました、まずはお座りください。」


リュクスは誘われるままに扉を閉めて向かいの椅子に座ると、受付の女性も座ってリュクスへの対応を始めた。


「よろしくおねがいします、早速ですが、登録に関してすでに証明のほうはお持ちですか。」


「はい、持っています。」


「では、こちらで作成の必要はありませんね。ギルド登録の為この後は試験を受けていただくことになります。」


「あ、ちょっと待ってください、試験についてなのですが、どのくらいの期間がかかりますか?」


「そうですね、速い方でも半日、稀ですが遅い方だと3日かかった方もいます。」


稀とはいえ場合によっては3日もかかるような試験なのかとリュクスは少し悩み始める。早めにポーチは欲しいから冒険者ギルドの依頼を優先するか、露店で目に入ってしまったが袋型のアイテムポーチは売っていたので値段によっては買ってしまうのもありだろうか。


「えっと、実はアイテムポーチが早めにほしいので、金策のために商業者ギルドに入ろうと思ったのですが、時間がかかるのであれば。」


「でしたらこちらに来たのは正解ですよ。登録完了と同時に鞄型アイテムポーチの小サイズをお渡ししています。ちなみにですが、鞄型の小サイズでも相場額は8000リラ。露店でやすく買えても極小サイズで5000リラというところでしょうか。」


「かなりの値段ですね、冒険者を始めたての人はアイテムポーチどうしてるんですか?」


「冒険者ギルドでは分割できる袋型の極小サイズを100リラで3日間レンタルしているそうです。大きいものだとすぐにいっぱいになってしまうようなものですが、軌道に乗るまでは小さな素材を集めることが多いのでそちらを使う方も多いとのことです。」


レンタルできるアイテムポーチがあるなんてドーンは教えてくれなかったとリュクスはすこし不満げながらも、そのサイズでは本当に駆け出し用だったかと思い直す。


「鞄型の小サイズはどのくらい入るのですか?」


「鞄は中が分割されていて、大きいものを入れたとしても他の分割部分があるので意外と色々入れることができますよ。この小サイズですと6つに分割されていて、どこも同じくらいの量が入りますね。」


「なるほど、教えていただきありがとうございます。それなら商業者ギルドの登録試験受けたいです。」


「かしこまりました、では内容をご説明します。試験の一つ目は生産試験です。こちらは得意なものでなくても構いません。もちろん生産系スキルを所持していない方でも大丈夫です。行いたい生産を申していただければ、その生産の基礎を含めて指導させていただき、指導終了時点で試験は終了です。試験二つ目は売買試験です。有人露店を模した設備で売買を学んでいただきます。購入に関してはどなたでも行えますが、露店主の場合には様々な制約がありますので。」


商売の主軸が自由すぎるわけじゃないのなら、今日買った串焼きもベルトも比較的適正価格なんだろうと今更ながらに思ったリュクスであった。


「まず一つ目の生産試験を行うのですが、ご希望はありますか?」


いろいろとやってみたいことを浮かべたリュクスだったが、すでに所持しているスキルがあるのだからと料理で行くことに決める。


「料理でお願いします。」


「かしこまりました、ではこちらへどうぞ、ご案内します。」

アイテムポーチの説明を変更

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