「従属子、彼氏さんと話す!」
学校でこんなに視線を向けられて緊張しない人間などこの世に存在するのだろうか。
クラス替え告白事件の後、一礼だけしてから彼女とは一度分かれ廊下からクラスへと向かっていた。
「…あの人がクラス替え告白事件の…」
「えぇ~!意外とタイプかも…」
「ちょっと!寝取る気!?」
噂の伝達速度早すぎるだろ…。
すぐにクラス替え看板の場所を離れたが、周りでの噂が絶えず、俺の周りにみんなとの一定の距離が存在していた。
気まずい…。
しかし告白が成功した嬉しさからか、去年とは違って少しのニヤケと大きな心の余裕があった。
教室に着いて、所定の位置に着席した。その後、すぐに机に突っ伏した。なぜなら…
「あの人が相田君…?告白したんだって?」
「去年は失敗してたよな」
「今年はどうだったの?」
「成功したって噂だぜ…!」
いや、恥ずいって!!!
クラスの話題と視線がすべて自分に向かっていた…。
羞恥に晒された俺の肩をクラスメイトだった田中が叩いた。
「よっ。」
「…なんだお前か…」
「なんだとはなんだ。クラス中が勇斗の話題で持ちきりだぜ。」
「…だろうな~ハハハ」
「去年もそうだったな。少しは学んだと思ったのに。」
「気づいたら告ってた…。」
「…それ前も言ってたよな。」
「んで、そのお相手が転入生ってことは聞いたけど、どうなの?かわいいの?」
「…。あぁかわいいよ。すごくかわいい。」
「やるじゃあねぇか!」
田中に背中を強く叩かれた。
この会話は周囲の聞き耳を立てたハイエナたちに聞かれているが、気にしていたらもう何も話せなさそうな気がして観念した。
そして、渦中の転入生が姿を現した。
たくさんの女子友達を連れて。
「ステラちゃん可愛すぎ~!」
「ステラは可愛すぎるかもしれません!」
「ステラちゃんLIME交換しよ~!」
「ぜひぜひ!ステラは皆さんと友達になれて嬉しいです!」
「ステラちゃんおもしろ~!」
転入してすぐにクラスカーストトップレベルだった…!さすが俺の彼女…!(彼氏面)
黒板に書かれた席を確認し、こちらに向かってきた。
あいうえお順だったため、席は僕の前だった。
目が合った。
「…。」
「…。」
「…。」
田中も含め少し緊張が走った。
「ほ、本日はお日柄もよく…。」
「…。」
「…。」
彼女はすぐに後ろに振り返った。
「…え。」
「…。」
「…はぁ…。」
「君もアイダっていうんだね!運命だね!さっきは名前も言わないで逃げてっちゃうからステラ不安だったんだよ!」
「…。」
「…。」
思考回路が一時停止した。
「あれ?どうしたの?」
「…。」
「…。」
ブワァっと急に涙が出てしまった。
背中をさする田中。
「お前にもようやく春が来たんだな…サスサス」
「グスッ。ウン。ウン。」
「えっ?」
「あ~。ステラ?さん。はじめまして。相田の…いや勇斗の友達の田中っす。こいつ前に告白してこっ酷く振られてことがあってさ、軽いトラウマ抱えてたんだわ。要するにこれは嬉し涙だから気にすんな。」
「なるほど?」
ステラはキョトンとした顔で田中の話に納得した。そして、
「ほ~ら彼氏さん。泣かないで~。」
顔を上げたらすぐそばにステラがいた。
とっさに顔を隠した。
「なんで顔隠すんですか~?」
「…かわいすぎて直視できない。」
「///」
「…なんかこっちまで恥ずかしくなってくるんだけど。」
「す、ステラは、泣いている彼氏さんも、か、かっこいいと思ったり…」
「!?」
はぁ???何だこの生物??
かわいすぎるだろ!!!!!
涙を拭って、正面から見つめ合う。
「…。」
「…ニコッ。」
かわいすぎて俺は気絶した。
…………………………
目が覚めると自己紹介が終わっていてみんなが体育館に移動したようだった。
目覚める前の記憶が…ああ思い出した。
思わずにやけていた。
すると突然後ろから指で突かれた。
「ビクッ」
振り返ると彼女がいた。
「こんにちは。彼氏さん。」
「ビクッビクッ」
驚きを隠せなかった。
「二人きり…ですね!」
「…。」
寝起きの脳みそではよく理解できなかった。
「彼氏さんが突然気絶して、入学式のために体育館に移動しなきゃだったんですけど、起きなかったので起きたらステラと来てほしいとのことです!」
「…なるほどな」
きっとクラスの奴らが気を利かせたのだろう。
「すまなかった。君の彼氏として…」
「そんなことよりです!いい加減自己紹介してください!」
「…え?」
「ステラまだ、彼氏さんから名前を聞いてません!」
「…確かに」
「彼氏さんって呼ぶのにも疲れました!」
「…悪かったな。俺は相田勇斗。呼び方は…何が良い?」
「勇斗が良いです!」
「じゃあそれでいこう」
「ステラは愛田従属子です!」
「うん。知ってる。ステラって呼んでいいか?」
「はい!じゃあ体育館に行こっか」
「はい!」
俺はステラと体育館に向かった。
「いきなり告白なんてしちゃって…ごめんね?」
「え?」
「自分で言うのも何だけど、思い立ったら止まれないんだよね」
「そうだと思いました」
「え?」
「告白されたときも迷いのない顔をしてましたよ!」
「…ありがとう。」
お互いに交わした会話はこれが初めてだったがこれから仲良くやっていけそうな気がした。