「従属子、加害者になります!」
目の前に、笑顔に笑う女の子が見える…。
必死に手を伸ばす彼女の目には大粒の涙が見えた…。
「…と…勇斗…」
ジリリリリリ…
「勇斗アンタいつまで寝てるの。学校遅刻するよ!」
母の声で起きる朝は気分が悪い。
「ふゎぁぁあ」
開けられたカーテン、まくられた布団。時間は朝6時半。
整えられた食卓に、母の作った料理が並べられていく。
「いただきます!」
「今日入学式だかんね!事故るんじゃないよ。」
そういえば今日から俺はもう高校二年生らしい。
すぐに朝食を済ませて、いつも通りの2時間ランニングコースへ向かう。
「いってきます!」
「いってらっしゃーい」
………
「ホッ…フッフッ…ホッ…フッフッ…」
一定のリズムで呼吸を整える。
………
うちの高校は都会から少し離れた自然の多い場所にある。
もう多くの人がクラス替えの張り紙に集まっていた。
「ホッ…フッフッ……ふぅ~」
「よぉ。勇斗今日も元気だな」
「あいつまだ2時間も走ってんのかよw俺なら3日でギブだな」
同級生だった友達もちらほら。
クラス替えの張り紙から自分の名前を探す。
特にすごく仲の良かった奴はいなかったし、可愛い女の子と一緒になれたらラッキーと思った。
1組
愛田従属子
相田勇斗
江ノ島妙子
…
お。あった。
自分の名前が二番目にあることが珍しかったため、とある名前が目に入った。
「愛田従属子…?」
いやいや。親のネーミングセンスなさすぎだろ。読めねぇし。そもそも従属なんて子供につける名前としてどうなのさ。
「おや?今ステラの名前を呼びましたか!?」
隣から見知らぬ女子が声をかけてきた。
「ステラ…さん?は呼んでないと思うけど…?」
「いやいやステラはね!従属に子供ってかいてステラなんですよ!」
「お…おぉ…。」
元気な子だな~。自分で言うのも何だが、元気が売りな性格をしていた自分が押されていたことに少しむず痒さを感じていた。あと、かわいい…。
「従属って読んじゃってたよ」
「ステラはね!今年から転入してきた転入生!なんだよ!」
通りで今まで見かけなかったはずだ。
いやこんなヘンテコネームの元気100%女がいたら学年レベルの人気になっていただろう。
…かわいいし。
…めっちゃかわいい。
僕には座右の銘がある。
【獅子奮迅】だ。
迷ってる時間があったら一気に突っ走りたい。
そんなわけで一年生のときに少しやらかしてしまったことがある。
衝動的なものだった。
クラス一の美人に入学早々告白して振られてしまったのだ。
おかげでクラスの女子からは白い目で見られてしまったが、男子の友達は多くできた。…後悔はない。
その過ちを俺は今繰り返そうとしている。
「好きです!一目惚れしました!付き合ってください!」
「はい!ステラは喜んでお受けします!」
「「「えぇ~!!!!」」」
周りの生徒達の驚嘆の声の中、俺は大きくガッツポーズをした。
この事件は、クラス替え告白事件として長く語られるのであった…。