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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第87話「ジェット vs カナタ」

「さあああああ、もう間もなく特別試合が始まろうとしています! 『神の実績(シン・クラス)』の新人と、七大ギルドの新人。 もちろん『神の実績(シン・クラス)』に勝つのは簡単なことではありません、ですがここにいる三人にはどうしても期待を寄せてしまいます!」


「そうだねえ、楽しみだねえ」


「おっと、紹介が遅れてしまいました。 今回の特別試合の解説は【天使の加護ブレッシング・エンジェル】のヤマトさんです。 ヤマトさん、カナタ選手は今回どういう戦いを見してくれるでしょうか?」


「そうだねえ、私でもわかんないかな」


「おっとー! 同じギルドでもわからないカナタ選手のミステリアスさが垣間見えております!」


「あはは。 でもここにいる皆が想像しない戦いになると思うよ」


「なるほど、では早速始めましょう。 特別試合『神の実績(シン・クラス)』ジェット選手対【天使の加護ブレッシング・エンジェル】カナタ選手、試合開始です!」


 アナウンサーの言葉が止まった瞬間、ジェットは俺の元へと飛んでくる。

 ジェットの片手には金棒。

 〈桜の遺跡ブロッサム・リメインズ〉で手に入れた古代武具ロスト・アイテムだ。


 今回の試合に限り、古代武具の使用が認められている。

 どうやらジェットが本気の戦いをしたいと大会運営に直談判をしに行ったらしい。

 それならば俺にとっては好都合。


「行くぞ、フリル!」


「かしこまりました、マスター。 私久々のマスターでとても高揚しているので、全力で行きます」


 フリルが刀となって俺の右手に顕現する。

 そしてジェットの片手から金棒が振り降ろされた。

 なんとかフリルで防ぐもその重たい攻撃により、俺の足元の地面が沈んだ。


「くっ!」


 フリルが切れるのはフリルに触れている部分の魔力のみ。

 今フリルで魔力を無効化できていないということはジェットの外側には魔力が存在しない。

 つまり、ジェットは体内に魔力をながして自身の肉体を強化しているということだ。


「おい、随分強くなってるじぇねえかジェット」


 体内に魔力を流すのは簡単だが、魔力で肉体を強化するのは容易ではない。

 身に着けるにはそれ相応の訓練が必要である。

 体内に流れる魔力を自分の体のように扱い、魔力を着るように放出する。

 まず、これが難しい。

 魔力は放出して使う事が多いし、魔力は放出することで能力を使えたりできる。

 その魔力を体内のみ使用することになるので、少しでも集中力が切れてしまえば魔力が外に逃げて行ってしまうのだ。

 繊細かつ、丁寧に魔力を扱わなければならない。

 俺はそれをしないと魔獣に食われてしまうため自然と身に着けたスキルだが、こいつは俺がちょっと教えただけで簡単にやってのけた。

 この異世界で初めて才能に嫉妬した瞬間だ。


「カナタに追いつくためにこっちも必死だったんだ」


 ジェットは笑っている。

 俺のどこにそんな魅力があるのかはわからないが、今はジェットの顔など気にしている場合ではない。

 お互いが手の内を知っている相手だからこそ、俺はジェットが一番やりづらい。


「さあ、早く見してくれよ『偽りの英雄(ライアー・ヒーロー)』をさ!」


 ジェットが俺を薙ぎ払い、俺は遠くへと吹き飛ばされる。


「ああ、そうしないと勝てそうにもない」


 俺は両手を広げた。


「じゃあ本気で行くよ、ヒーロー!」


 そしてジェットの金棒が俺にクリティカルヒットする。

 痛い。

 こいつほんとに加減してねえな。


 それにしても本当に最悪な能力だ。

 でも、こうでもしないと俺はこいつのような者に勝てない。

 使うことを避けてきた一番の理由は痛いからだ。

 死にそうになるほどの痛み、爆発しそうな内臓の痛み。


「嫌な能力だよな、ほんとに……」


 偽物で、作り物で、荒唐無稽な能力。

 でも今は、この世界ではこの能力に頼らざるを得ない。

 この能力と一緒に生きる運命なのだ。

 だったら受け入れる。

 だったらこの能力で俺は生き抜いてみせる。

 そして今はこいつに勝ってやる。


「さあ本番だ」


 ゆっくりと起き上がり、ジェットを見つめる。


「俺がこの能力を使ったってことは、負けることはないぜ」


 瞬間ジェットの後ろに飛び、ジェットの首を目掛けて切りかかる。


「っ!」


 ジェットが抜群の反射神経なんとか防御していたが、この動きに追いつけていない。

 それに気づいているのはこの会場で俺だけかもしれない。

 今の俺はそれだけ些細な動きを捉えられる。


 そしてその隙を見逃すことはなくジェットのみぞおちに蹴りを入れ込む。


「ぐっ!」


 ジェットの体は先の俺のように吹っ飛んでいく。


 咄嗟に体に魔力を貼ったか。

 そこまでのダメージは負っていないな。


「お前も本気で来いよ」


「言われなくてもそのつもりだよ!」


 ジェットはこの戦い能力は使えない。

 ジェットの能力を知っている俺には効果がないから。

 ただ能力がなかったとしてもこいつの戦闘力の高さは以上だ。


 タイヨウは直観的にとんでもないことをするタイプだが、こいつ基本に忠実な動き。

 だからこそつけ入る隙が無いし、崩すきっかけも少ない。


「俺の教えた通りだな」


「だからって俺が負けるわけじゃないだろ、カナタ」


 そして厄介なことにこいつは戦うと性格が変わる。

 普段温厚なジェットだから、どうもこの攻撃的な性格はどうもしっくりこない。


 ジェットが軽々と金棒を振り回す。


「カナタ、ちゃんと筋トレしてる? 全く倒しがいがないんだけど!」


「よく言うぜ、お前もガリガリだろうがよ!」


 お互いの攻撃もさることながら、互いの口撃も徐々に過熱していっている。


 しかし、ジェットが以前よりも明らかに強くなっているな。

 〈桜の遺跡ブロッサム・リメインズ〉で出会った頃のあいつはまだまだ粗削り。

 素質こそあったが、実績でいうなら『二つ目の実績(ジー・クラス)』程度だっただろう。

 俺の指導だけではここまでは辿り着くはずもない。

 たゆまない努力こそが彼をここまで導いたのだ。


「お前実力もちゃんと『神の実績(シン・クラス)』なんだな」


「まあね。 僕が【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】を支えないと誰が支えるだよ」


 こいつはギルドを背負っているのだ。

 だから強くなれるし、成長できる。

 守る者がいるというのは、大きいことだ。

 それはポチと一緒に過ごした俺だからわかることだった。


 ニヤリと笑ったジェットが、金棒を全力で振り回す。

 ただ力の暴力で殴っているわけではない、計算して殴っている。


 お互いの実力差は均衡状態(俺が能力発動しているため)。

 このまま戦闘が長引き、不利な方は俺。

 何か打開策を考えなくてはならない。


「うっ!」


 近づいてくるジェットを蹴飛ばし、なんとか距離を保つ。


「仕方ねえ、俺もちとやる気出すかい」

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