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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第86話「サプライズ」

「ここでついに決着! 優勝は【王の楽園(キングダム・エデン)】です!」


 アナウンサーの声をきっかけに、座っている場所が揺れるほどの歓声が沸き上がる。

 観客も総立ちで【王の楽園(キングダム・エデン)】の優勝に歓喜しているようだ。


「どんだけ人気なんだこのギルド……」


 この騒がしさで耳が取れてしまいそうなほど煩かった。


「はあーあ、君が勝ってればこの歓声は【天使の加護ブレッシング・エンジェル】のものだったかもしれないのになあ」


「まだ言うんすかチェロさん」


「私は意外に根に持つタイプなの!」


 ふんっと顔を反らしたチェロさん。

 意外に俺って繊細なんだよ? もうちょっと優しく扱ってくれてもいいじゃない。


「ヤマトさんこの人寝ても覚めてもケロっとしていないんすけど」


「あはは」


 ヤマトさんは相変わらず笑っている。

 ヴィオラさんがチェロさんをなだめているが、明らかに俺はこの人に嫌われている。

 それにタイガーさんに関しては、出会ったときから一回も言葉を交わすことはなくなぜかずっと睨んでいる。


 え、【天使の加護ブレッシング・エンジェル】ってアットホームなギルドじゃなかったの?

 蓋を開けてみれば残業だらけ、人間関係最悪なブラックな職場だったんだが。

 だったら最初から転職の時に言っておいてくれよ。


「さあ、これにて新人戦が終了しました。 これより表彰式を行いたいと思いますので、七大ギルドに参加した人達は至急中央にお集まりください」


「さあ行っておいで」


 ヤマトさんが俺らに声を掛ける。


「てか俺らいらないでしょ」


「そうね、帰って修行した方がいいわ」


「くかーっ、は!」


 タイヨウ君、寝てちゃダメでしょ。


「まあまあ、最後ぐらい、ね?」


 まあ駄々をこねたところで行くしかない。

 席を立ちあがり、俺ら三人は会場の中央に向かった。


 それにしても先ほどのヤマトさんのニヤリとした笑みが忘れられない。

 何かよくないことが起きそうなそんな予感がした。


* * *


「これにて七大ギルド新人戦の表彰式を終了したいと思います! 皆様、ありがとうござ、え、あ、はい。 わかりました!」


 アナウンサーの歯切れの悪い言葉が会場全体に響き渡る。


「七大ギルド新人戦はこれにて終了しましたが、これより最近『神の実績(シン・クラス)』になったばかりの三人との特別試合が開催されるようです! えーっとこれには正直私自身も驚いています!」


「おー!?」


「いいぞー!」


 観客の歓声が一段とまた大きくなった。


「えー、今から『神の実績(シン・クラス)』になったばかりの三人には新人戦で輝いていた人を指名していただき、その人物とこのコロッセオで一対一のガチンコ勝負をしていただきます!」


 何が起こるかと思えばそんな事か。

 まあ俺には関係のない話だ。

 どうせ【王の楽園(キングダム・エデン)】の三人が選ばれて終わりだろう。

 早いところ帰ってヤマトさんの手料理を食べたい。


「さあまずはオネストさんからどうぞ!」


「そうだな。 ジェン・ブラッドでいい」


「ではお次はティアさん!」


「私はロアと戦うわ」


 お、ポチもきちんと仕事モードに入っているな。

 お兄ちゃんも感心モードだぞ。


「最後は、ジェットさん。 張り切ってどうぞ!」


 ここまでは順当。

 だが、どうやらタイシは体調不良のため今回の表彰式は欠席しているらしい。

 だとすればジェットが選ぶのは【慈しみの愛(プリズム・キャンサー)】の誰かか、もしかしたら【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】の誰かかもしれないな。


「えっと、カナタ選手で」


「はい、かしこまりました。 カナタ選手ですね、ってカナタ選手!?」


 カナタ選手か。

 確かにあいつは新人戦でも輝きを放っていたし、【王の楽園(キングダム・エデン)】であるタイシにも勝っている。

 だとすればジェットが選ぶのも頷けるな。

 それにジェットとは親交があったらしいし。


「っておい!」


 俺はつい叫んでしまった。


「ジェット、どういうことだ!」


 列の真ん中から中央の台に立っているジェットに向かって暴言に近いような言葉遣いで叫ぶ。


「よろしく、カナタ」


 なぜかジェットはにこやかに手を振るだけだった。

 やられた、ヤマトさんの笑みはこういう事だったのか。


「拒否! 断固反対だ!」


 どかどかと歩きながらジェットの目の前まで行く。

 そうするとジェットは台を下りて、俺に耳打ちをしてきた。


「ここで僕と戦わなかったら、あの時の秘密をばらそうかな」


「あの時の……」


 一瞬でジェットの言葉がわかってしまった。

 秘密とはかつて【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】の時にやってしまった事だ。

 〈桜の遺跡〉で見つけた温泉。

 苦労に苦労していた体だからこそ、見つけた時の喜びはすごかった。

 そして俺の心に性欲という二文字が浮かび上がってしまった。

 唯一の男であったジェットを俺の目的達成のための駒として扱うことにして、完璧な計画を遂行した。

 結果は言わないが、今となれば若気の至りという奴。

 しかし、あの時ジェット約束したはずだった。

 男と男の約束をしたはずではないか。

 それをこいつは簡単に破り捨てた。


「ああ、わかったジェット。 男と男の契りを忘れたお前を叩きのめす」


「いいね、僕も全力で行くよ」


「なんと! ジェットさんが指名したのは【天使の加護ブレッシング・エンジェル】のカナタ選手だー! カナタ選手は今回の新人戦では寝たり、降伏したりして確実に爪痕を残した選手と言ってもいいでしょう」


 アナウンサーちゃん、俺が気にしていることズバズバ言わないでくれる?


「さあ特別試合は準備が整い次第、この会場で行います。 会場にいる皆様今しばらくお待ちください」


 ジェット、こう見えて俺は細かい男だ。

 全力で叩きのめす。

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