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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第84話「託された者達」

「……託してくれたんだ」


 タイヨウは倒れながら、ジェンにそっと語り掛けた。

 ジェンも黙ってそれを見守る。


「マークさんは俺に言ってくれた、魔族を滅ぼすのは若者だって。 俺が魔族を滅ぼすって決めた、だから、負けない」


 タイヨウは立ち上がる。

 託された者として、マークの最後の言葉を聞いた者として、タイヨウの中には覚悟ができていた。 


「そうか。 ならば君の欺瞞に溢れた希望は僕が壊そう」

 

 タイヨウはポケットに入れておいたグローブを大切に手に付けた。

 軽い素材であるはずなのに、重みが違う。

 それに魔装武具であるグローブは、まるで新品のように綺麗だった。

 マークをずっと追いかけていたタイヨウだからこそ、マークが道具を丁寧に扱っているのがわかっていた。 

 タイヨウは最後の魔力をグローブに乗せた。

 タイヨウの魔力が炎に変わり、メラメラと上昇気流のように燃え上がっていく。

 橙色の炎と青色の炎がタイヨウを包み込んだ瞬間、タイヨウは駆け出した。


「僕の目の前でそのグローブをはめるなあああ!」


 ジェンが我を失ったように叫びながら、魔力を解放する。

 いつも見ても、魔力だけで圧倒されそうだ。


「うおおおお!」


 タイヨウも負けじと雄叫びを上げながら、ジェンに向かって拳を振るった。

 ジェンは長い脚で華麗にタイヨウの攻撃を防ぎ、クルッと一回転してタイヨウの顔に蹴りを放つ。

 しかしタイヨウはふらつく様子はない。

 そのまま頭をジェンの顔面にぶつけた。


「ふんっ!」


「ぐはっ!」


 この戦いで初めてジェンがふらつく。

 タイヨウの頭は普通の人間よりも二倍ほど硬い。

 いわゆる石頭というやつだ。


「くそっ!」


「ぐっ!」


 ジェンもすぐさま態勢を元に戻し、タイヨウのみぞおちに的確に蹴りを入れた。

 やはり実力はジェンが頭一つ抜けている。

 それはタイヨウが一番よくわかっていた。

 だが、ここで簡単に諦めるわけにはいかない。


 カナタが勝つために頭を使うなら、タイヨウにできることは勝つために体を動かし続けることだ。


「うおおおおお!」


 タイヨウが行ったのはただひたすらに相手を殴ること。

 タイヨウは頭を使えない。

 だったら体を使えばいい。

 相手が疲れてくるその時までただひたすらに殴るのがタイヨウの作戦だ。


「そんな単純な攻撃、僕には通用しない!」


 ジェンの体に再び魔力が込められた。

 つまり、注意すべきは上空からの隕石のような魔力。

 しかしタイヨウは気にしなかった。

 相手がこの距離で戦うのを嫌っているからこそ、能力を発動したのだ。

 タイヨウに魔力できた隕石がぶつかる。

 それでもタイヨウは攻撃をやめることはしない。

 むしろタイヨウは攻撃のスピードを一段階上げた。


「君は何度倒せばくたばるんだ!」


 ジェンが間合いを嫌い、タイヨウを蹴飛ばす。

 地面は隕石により陥没し、ここら一帯は焼け野原と化していた。


「はあ、はあ……」


 根性でここまで持ちこたえていたタイヨウも間が開いたことにより疲れがドっと押し寄せる。


「もう諦めるんだ、君じゃあ僕には勝てない。 それなのに、どうしてマークさんは君を選んだんだ……」


「さっきから、選ばれたとか、何を言っているんだ?」


 タイヨウが呼吸を乱しながら、ジェンに率直な疑問点を質す。

 ジェンがなぜここまでマークを慕っているのか。

 なぜマークを尊敬しているのかを聞く必要があると思っていた。


「マークさんは僕が幼い時から稽古をつけてくれた師匠だ。 マークさんは僕の人生の指針でもあり、尊敬している人だった。 それなのに君みたいな弱い者のせいでマークさんは死んだ……」


 ジェンは俯くが体は震えている。


 あの時のタイヨウと同じだ。

 人生の目標だった人がいなくなった悲しみ、絶望感。

 何にも代えがたい気持ち。

 それはタイヨウにも痛いほどわかった。


 余計この試合には勝たなければならなくなった。

 これを乗り越えなくては成長には繋がらないから。

 教える、とまではいかない。

 伝えなくてはならないから。


「マーク、俺はお前に勝つよ。 勝って、マークさんの思いをぶつける」


 橙色でもなく、青色でもない。

 勇猛な赤色の炎。

 希望を燃やすのではなく、期待を背負う。


 タイヨウが見つけた答えは、進むべき道はただ一つ。

 マークを超えるヒーローになって、弱者を救う。

 それが今のタイヨウの目標であるから。


 『太陽が燃える日(メテオ・バーニング)


「行くぜ」


 タイヨウはその瞬間、ジェンの顔面に拳を入れる。

 ジェンが血を吐きながら後ろへと吹き飛んでいった。

 タイヨウの動きをジェンは見えていなかっただろう。

 ノーガードでタイヨウの一撃を喰らってしまったようだ。


 ジェンも能力を使い、足に炎を纏う。

 それと同時にジェンの魔力が空中へと放たれる。


 しかしタイヨウはもう隕石の動きなど見ていない。

 直線的にジェンの元へと行っている。

 なぜなら、タイヨウはもう感覚で隕石の動線を確認できているから。

 すぐさまジェンの元へと辿り着き、アッパーパンチを繰り出す。

 ジェンは長い脚を曲げタイヨウのパンチを防御する。

 だがタイヨウの攻撃力の方が上だった。

 ジェンは態勢を崩し、少しばかり仰け反る。

 タイヨウは右足を踏み込み、渾身のパンチを打ち込んだ。


「ぐはっ!」


 ジェンの鼻からは鮮血が流れた。


「くそっ!」


 ジェンも負けじとタイヨウの顔まで足を伸ばし、顎に蹴りを打ち込んだ。


「うっ!」


 隕石が降り注いでいる。

 ただ二人には隕石など見えていない。

 目の前の倒すべき、越えるべき相手しか見えていないのだ。


 殴っては殴り返し、血を流せば血が流れる。

 意地だけが二人を立たせていた。


「うおおおおおお!」


「おおおおおおお!」


 森が揺れるほどの魔力のぶつかり合い。

 辺り一帯の森林は焼き焦げ、広場のようにフラットな地形となる。


 土煙が巻き起こり、そこに立っていたものはジェン・ブラッド。

 このプライドをかけた戦いに勝利したのは、【王の楽園(キングダム・エデン)】のエースだ。


「君はマークさんにはなれない」


 倒れているタイヨウを見下ろし、ジェンがとどめの一撃をしようとしたその時だった。


「おい、流石に殺すのはなしだろ」

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