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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第82話「背負う者と恨む者」

 『青碧の海皇帝オーシャン・ポセイドン』に映る世界は未来。

 ネロは今、三秒先の未来が見えている。


 ロアの魔眼は魔力量を上げるだけだった。

 トルールの家系を確認すれば、魔眼を持つ者は特殊な能力が備わっている。

 だが、ロアの『青碧の海皇帝オーシャン・ポセイドン』は魔力を上げるだけでそれ以外の特殊能力がなかったのだ。

 ロアが優秀だったからこそトルール家次期当主としての地位を確立することができていたが、これがロアでなかったらネロのような扱いを受けていたかもしれない。

 

 魔眼は最初に生まれた子供しか発現しない。

 そのため、トルールは最初に生まれた子供のみを大切に厳しく育てる。

 ネロとロアが同時に生まれたとき、トルールでどれほどの喜びがあったかネロは手に取るようにわかった。

 しかし、トルールは子供を子供として見ていない。

 トルールを存続させ、繁栄させるための道具としてしか見ていないのだ。


「背負う者と恨む者同士決着をつけましょう」


 ネロが杖を構えて凛とした姿で立つ。

 満身創痍で決して華やかとは言えない。

 しかし、強大で巨悪な敵であるトルールにに立ち上がる一人の可憐な女子。

 それこそがネロ・リーベルだ。


「ええ、これで私と姉さんは対等になった。 ここからが本番」


「そうね、でも《《対等》》ではないわ」


 ネロは地面を杖でトントンと叩いた。

 そして木のようなものが生えてくる。

 太く逞しく、そして凛々しい大樹。

 緑の葉っぱが青々と生い茂り、枝の先には一個だけ金のリンゴがなる。


 『やがて大きな花になるシード・オブ・ワールド


 ネロは金のリンゴに手を伸ばし、それを丁寧に包み込むようにして手に取った。

 そのリンゴを齧る、齧る、齧る。

 喉に残ったリンゴをごっくんと飲み込み、ネロは目を瞑ってリンゴの後味を堪能していた。


「悪いわね、ロア。 本当はこの能力を使わず倒したかったけど、あんたがやっぱり強かったわ」


 ネロはこの金のリンゴを食べたことにより魔力量が回復した。

 『やがて大きな花になるシード・オブ・ワールド』はロアと戦う前に発動しておいた能力。

 この能力は魔力で作った種を蒔き、戦いを行っている地面から少量ではあるが種に養分が供給される。

 そして魔力が溜まったタイミングで発芽。

 その木になった金のリンゴを食べれば供給された分魔力が回復する。

 ネロは魔力を半分ほど使い種を植え、発芽するまでこの機をずっと待っていた。

 修行をしたからこそなんとか魔力が半分でもロアと戦えたのだとネロは考える。

 付け焼き刃の修行でも、尊敬するヤマトと行った修行。

 ミアと同じぐらい大好きなヤマトとの修行は楽しかった。

 きつかった、苦しかった、でもそれ以上にヤマトがずっと見ていたことがネロにとって何よりも嬉しかったのだ。

 ミアしか見てくれなかった過去。

 それでもミアが見ていてくれたから、ネロは耐えられた。

 ヤマトが拾ってくれた今。

 絶望の淵を彷徨っていたネロを拾ってくれたからこそ、こうしてトルールに反逆できるチャンスがある。

 だから、負けるわけにはいかない。

 ミアとヤマト、血は繋がっていなくてもネロにとってのかけがえのない姉の期待を背負っているのだから。


「『果てのない大航海アンチャーテッド・アクアドーム』!」

 

 ロアが能力を発動するも、ネロはその領域に立ち寄るはずがない。

 なぜならネロには未来が見えているから。


「見えてるわよ」


 ネロは魔力を使うことで一瞬で距離を離す。


「それにしても、やっぱりあんた凄いわね。 どこにそんな魔力を隠していたのかしら」


 改めてロアの魔力量に感心してしまう。


 しかし、感心していてはいけない。

 未来に向かって走っていくしかないネロはここで立ち止まるわけにはいかないから。


「ロア、どこまでいってもあなたは私の妹よ。 ありがとうロア、強くなったわね」


 なぜ感謝を述べたのかわからない。

 なぜ妹の成長を褒めてしまったかはわからない。

 ただネロが最後の一撃を放つ前に見えた未来があった。

 それは満面の笑みでロアが笑ってくれていたこと。

 彼女は本当に何も知らないのだ。

 ミアが死んだことも、ネロが家を出た理由も、トルール家の恐ろしさも。

 ただただ姉の帰りを待っていただけだったと、この笑顔をみてネロは思った。

 家族である姉に帰ってきて欲しかっただけだった。

 でもこれで姉が自分よりも強いことを証明してくれた。

 それが何よりも嬉しいのだということだろう。


「おかえりなさい、お姉ちゃん」


 倒れていくロアはやっぱり笑っていた。

 ロアのその言葉は数少ない楽しかったトルール家の記憶を呼び戻してくれたのだった。


 * * *


「素晴らしい!」


 コロシアムの特別席でゴッシュは手を叩いて喜んだ。


「まさかゴミの中にも資源ゴミがあったとは!」


 ゴッシュは高々に笑った。


 かつて自分が捨てたゴミの中に宝物があったのだから。


 これでトルール家が国のトップに立つときは近いとゴッシュは確信した。

 ロアに宿った魔眼には絶望していた。

 なぜ自分の子供が二人も魔眼に恵まれなかったのか。

 

 しかし、嬉しい誤算だったのはロアが傑作だったこと。

 トルール家で類を見ない魔力の才能の持ち主であった。

 だからロアは捨てなかった。

 使い道はいくらでもあると思っていたから。


「おい、この大会が終わり次第ネロを連れ戻せ」


 近くにいたメイドに声を掛けたゴッシュ。

 ゴッシュはピースが全て当てはまったときのような快感が脳を伝っていた。


「かしこまりました。 ただしネロ様なので少々手荒な真似はさせていただいても?」


「構わん、元はゴミだ。 死ななければどうあってもいい」


 お辞儀をして一瞬で消え去ったメイド。

 ゴッシュがいる特等席は光がそこまで差し込んでいないので、何人のメイドがいたかは定かではない。


 ただし、ネロが連れ戻されてしまうのは明白であった。

 それはトルールに仕えて居る者は全員、ネロと同程度の魔力量を持っているから。

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