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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第78話「設定完了」

「よお」


 待ち構えていたのは、デカいハンマーを担いだ【王の楽園(キングダム・エデン)】のタイシ・ラープトン。


 少し癖毛の髪を全て後ろへすきあげている。

 俺の経験則ではあるが、おでこを出しているやつは大抵自信家。

 こういうタイプに勝つことこそが、俺の異世界でのストレス解消。

 俺からすれば気分も上がる最高の相手だ。


「デコだしタコ助野郎だな」


「おっと、まずは言葉攻めかい?」


 ニヤニヤした笑みを浮かべながらも余裕をぶっこいている。


 予想通り。

 まず負けるはずがないと思ってくれているみたいだ。

 勝負というのはその余裕一つで戦況は大きく変わるというのを知らないらしい。

 それもそうか。

 【王の楽園(キングダム・エデン)】期待の新人ともなれば今までの人生で苦労なんてしたことないだろう。


「お前に構ってる時間ねえから、さっさとかかってこい」


 俺も余裕を見せ、敵を煽って見せた。


 この勝負はいかに相手が俺を弱いと思っているかが勝負の分かれ目。

 俺が勝てる道筋はこいつがいかに俺を舐めくれるかだ。

 今の俺はフリルもいなければ、能力も使えないただの人。

 唯一俺の片目にある魔眼が使えるが、魔力に依存するため常時発動していられない。


「それがあんたのやり方なら俺は否定しないよっ!」


  タイシが言葉をした瞬間、俺の視界から消える。

 

「あっぶね!」


  咄嗟に魔眼を使い魔力の流れを見て魔装武具で受け止める。


 危なかった。

 この武器じゃなかったら腕が骨折していてもおかしくはない。

  魔装武具マジック・アイテムソード』。

  魔力の放出度合いで剣の長さを自由自在に操れる。


  ヤマトさんが持ってきてくれた、今回限りの俺の相棒。

  ちなみに〈危険領域ブラック・テリトリー〉での相棒は魔力で強化した木の枝。

 それに比べたらどんなに扱いやすいことか。

 

「おいおい、さっきの勢いはどこよ!」


  人の体ほどあるハンマーをぶんぶんと振り回してくる。

  タイシには魔力を使ってハンマーを振り回していない。

  己が持つ膂力のみでこのドデカいハンマーを振り回しているのだ。

 

「とんでもねえバカ力だな。 つまりその恵体でなんとかなってきた証拠だな」


 ニヤリと笑いながら、ハンマーを剣で躱し続ける。


「よくわかってんじゃんよ」


 ハンマーに魔力が込められた。

 この一撃が自分の体に直撃したら体が吹っ飛んでしまう。

 それは魔眼を使わなくとも、本能でわかったことだ。


「『世界が割れる衝撃波アース・ショックウェーブ』!」


 咄嗟に空中に飛び、なんとかその一撃を喰らわずに済む。

 ただ、空中から眺めた地面は物の見事に亀裂が走り、所々地面が盛り上がっていた。

 それだけ今の一撃は恐ろしかった。


「とんだバカ力だな」


 魔力のコントロールなどはガン無視。

 無差別に、地球でも叩き割るかのように攻撃してくる。

 だからこそこの一撃が最強となっているのだ。


「それは褒め言葉として受け取っておくよ」


 呼吸一つ乱れていない。

 圧倒的な魔力を使っていながら、涼しい顔をしている。


 よかった。

 こいつにこの余裕がなかったと思ったら、正直戦いは苦しいものになっていたから。


「助かった。 やっぱりお前は俺らが予想していた通りだった」


「ん、そりゃどういうことだよ?」


「お前が【王の楽園】で一番弱いってことだ」


「どういうことだよ」


 徐々に表情が険しくなっていくタイシ。


「俺らの作戦は各個撃破。 だったら【天使の加護】でも一番弱い俺がお前と戦うのは必然だろ?」


「かっちーん。 雑魚になんて言われよう気になることはないが、ジェンとロアさえいなかったら俺が【王の楽園(キングダム・エデン)】ではナンバーワンだよ」


へへっと笑い声を出すが、顔は笑っていない。


いい感じに俺の言葉攻めが効いているな。


「その考えじゃお前が一番になることなんてねえなあ」


「よ?」


きょとんとした顔で俺を見ていた。

試合の映像は見てきたが、こいつの性格まではわからなかった。

だが俺の推測通り、自信に満ち溢れて弱い者は視界にも入れていない。


「お前が知らないようだからもう一度だけ言ってやるよ。 【王の楽園(キングダム・エデン)】の中でお前が一番弱い」


 完全に怒らせることに成功した。

 さあここからが正念場だ。


 一瞬にして俺の前に辿りつく。

 自分の体ほどあるはずのハンマーを軽々と担ぎながら、大きく振りかぶって俺を殴ってくる。


「っ!」


 相変わらず重たい一撃だな。


 秋に舞う紅葉のように俺の体は軽々と吹き飛ばされてしまう。

 なんとか足でブレーキを掛けたが、タイシはそれを見逃さない。

 俺を吹き飛ばした後も、一瞬で俺の眼前まで辿り着き攻撃してくる。

 俺に休む隙を与えてはくれない。

 怒りがハンマーに籠っているかの如く、一撃一撃も重たくなっている。

 タイシは怒りに身を任せてハンマーを振り回してくると思いきや、確実に防御のないところを的確に責め、かつフェイントも入れてくる。


 ただ俺も黙って防御しているわけにはいかなかった。

 デカいハンマーを巧みに操っているとは言え、細かい動きはできない。

 その隙を見て蹴りを腹に入れ、なんとか距離を広げる。


「さっきの言葉取り消せよ」


「事実なんだから取り消すもなにもないだろうが、雑魚」


 魔装武具に魔力を注ぐ。

 俺のただでさえ少ない魔力を使うのだ。

 ここからはゆっくりと相手のペースに乗っている場合ではない。


 魔装武具は形を変えて鞭のように伸びていく。

 この魔装武具は魔力の注ぎ方によって形を変えることができる少し特殊な魔装武具。


 俺は距離を詰めることはなく、今の位置から動くことはなくチクチク相手を攻撃する。

 タイシと戦う時に注意しなくてはいけないのは、あの暴力的な攻撃力だ。

 先ほどまではタイシの攻撃力を確認するためにわざと近距離で戦闘していたが、あれが長引くと不味かった。


 だからこそ今は距離を取って戦う。

 今からは気持ちが良い戦いはできなくなるぞ。


「っくっそ」


 タイシも詰めたくて仕方がない様子だが、俺はタイシの視界外から曲がってくるように剣を操る。

 よってタイシもどこから攻撃されるのかを気を遣うしかならず、防御にリソースを注ぐしかない。


 ただこれを続けていても不利なのは俺の方。

 単純な魔力量の差によって負けてしまうから。


 だからこそ次なる一手が必要。

 弱い奴が強い奴に勝つためには頭を使って、少ない可能性を手繰り寄せるしかないのだ。


「いつまでやるんだよ!」


 痺れが切れたのか、能力を使って地面を叩き割る。

 周囲には土煙が巻き起こり、視界が遮られる。


 ここだな。

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