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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第77話「大勝負」

 七大ギルド新人戦二日目。


 残ったギルドは四つ。

 新人戦唯一のシード、現代最強ギルド【王の楽園(キングダム・エデン)】。

 実力はトップクラス、【慈しみの愛(プリズム・キャンサー)】。

 戦闘力の高さは随一、【命を賭して戦う者(ブロッケン・ウォール)】。

 そして今大会のダークホース、【天使の加護ブレッシング・エンジェル】。


 この新人戦に四傑が揃った。

 そして第二試合が始まろうとしている。

 第一試合と比べて明らかに人が多く、賑わいも一日目の比ではない。

 それはなぜか。 

 皆、【王の楽園(キングダム・エデン)】の新人を一目見ようと集まっているからだ。


「なんかすごいアウェーですね」


 ヴィオラが辺りを見渡しながら、ぼそっと呟く。


「まあこんぐらいでいいんじゃない」


 ヤマトは落ち着いた様子で会場の様子を観察していた。

  この会場に【天使の加護ブレッシング・エンジェル】の勝利を信じているものなどいないに等しい。

  『黄金世代ゴールデン・エイジ』と騒がれ、その筆頭と呼ばれる三人が【王の楽園(キングダム・エデン)】に存在する。

 彼らの雄姿を、戦いを観客は楽しみにしているのだ。

 あくまで【天使の加護ブレッシング・エンジェル】は当て馬扱いだ。


「お兄ちゃんは気にしてないと思いますよ」


 隣にいたティアは微笑んでいた。


「てかティアちゃん、ここに座ってていいの?」


 ヤマトも困惑した様子でティアに尋ねる。

 本来であれば自分の所属チームを応援しなくてはいけない立場のはずだが、ティアはこの場所に座っている。


「私は【王の楽園(キングダム・エデン)】のリーダーの前に、お兄ちゃんのファンです。 そこにギルドの垣根はありません」


 ふふっと笑う姿にヤマトはまだ慣れていない。

 こんなに嬉しそうに、楽しそうにするティアは想像もつかなかったから。

 でも、ヤマトはたった一回カナタ達の試合を一緒に見たからこそわかっていた。

 ティアは本当にカナタのことが好きなんだと、愛しているんだと。


「さーあ二日目第二試合がもう間もなく始まろうとしています! 解説は第一試合に引き続き、『神の実績(シン・クラス)』であるジェットさんにお願いしたいと思います。 ジェットさん、今回の試合展開どのようなものになるでしょうか?」


「そうですね、下馬評を見れば【王の楽園(キングダム・エデン)】に分があるように見えますが【天使の加護ブレッシング・エンジェル】は一日目の試合を二人で勝っています。 それにカナタ選手はまだ実力を見していません、鍵を握るのは間違いなくカナタ選手でしょうね」


「なるほど、ありがとうございます。 前回の試合ではなんと試合中に寝てしまっていたカナタ選手、今回の試合ではどんなことをやってみせるのか注目です!」


 アナウンサーの声が止んだ途端、場内では【王の楽園(キングダム・エデン)】コールが沸き起こった。


  「カナタ達は大丈夫でしょうか?」


  ヴィオラが心配そうな顔を浮かべながら中央に映し出されたスクリーンを見ていた。


「大丈夫、なのかな? カナタ君はわからないけど、あの二人は負けるとはさらさら思ってないよ」


 気持ちの面では負けているわけではないとヤマトは信じていた。

 一人だけ気持ちの面で負けてそうな男の子がいるという事実をヤマトは口にしなかった。


「お兄ちゃんも大丈夫ですよ」


 ティアはヴィオラと打って変わって楽しみにしていそうだった。

 兄の雄姿を見るのが楽しみで仕方がなさそうだった。


「お兄ちゃん、ああ見えてすっごい負けず嫌いなんです」


 ふふっと笑うティア。


 それを見たヤマトはこれで一安心だった。

 一番カナタを知っているティアが言うのであれば間違いはない。


 * * *


「おい」


「え?」


 試合会場の森の中、【王の楽園(キングダム・エデン)】のジェン・ブラッドが姿を現した。

 なぜこいつが試合前の大事な時間にこの場所に現れたのだろうか。


「タイヨウ・ステップズ、ネロ・リーベル、カナタ・アゼレア。 お前たちに僕たちが負けることはない」


「ああん?」


 試合前にそんなことをわざわざ言いにきたと考えると、腹が立ってきてしまう。


「何、わざわざそんなことを言いにきたわけ? そんなのやってみないと分からないわよ」


 その通りだネロ。

 もっと言ってやれ、そして一発ぶん殴ってやれ。


「それはない。 試合中に寝ているような男がいるチームに負けるわけがない」


 ギクッ


 ジェンの言葉が直接心に直接刺さる。

 こんなに心の奥底に直接攻撃してくるとは、こいつできる?


「あれは俺らの作戦だ。 ネロも言ったように、勝負は最後までわからないぞ」


 タイヨウのガッツを持ってジェンに反発している。

 さすがタイヨウ、修業の成果が出ているぞ。


「ふっ、まあいい。 タイヨウ、君とは決着をつける必要がある。 覚悟しておいてくれ」


「おい、卑怯なことせず一人ずつ戦えよ」


 俺は念を押した。

 ここで【王の楽園(ルビを入力…)】にチームプレイなんてされたら、さすがに勝てない。

 修行したのはあくまで個人のスキル上昇だけなのだ。

 フォーメーションなんて組まれようものなら呆気なく負けて終了だ。


「君たちがそれを望むならそのように戦えとチームメンバーに伝えておこう。 ただし、その方が君たちの勝つ確率下がると思うがね」


 反感を持たせるような言葉を言い残して、ジェンは自分の陣営に帰っていった。


「え、タイヨウなんかした?」


 なぜかジェンはタイヨウに対して遺恨を持っているようだった。

 もしかしたら、魔族侵攻の時に喋っていたことがあるのかもしれない。


「いや、俺は初めて会ったけど……」


「え、じゃああいつのあの態度はなんなんだ?」


「まあどうでもいいでしょそんなこと。 それよりも目先の試合に集中しなさい」


 ネロはもう臨戦態勢だ。

 たぶんこの中で一番、この試合に懸けているのがネロだ。

 いつになく真剣で、この試合を望んでいたからこそ厳しい修行にも耐えていたのだろう。



「そうだ、円陣組もう!」


「嫌よ」


「拒否」


 俺とネロは間髪入れずに拒否をする。

 そんな青春じみたこと俺とネロにできるか。

 常に斜に構えて生きてしまったからこそ、このように友達がいないではないか。

 な、ネロ?


「まあまあそんなことを言わずにさ、ほら」


 タイヨウが半ば強引に俺とネロの肩を掴み、円陣を組む。


「ほら、カナタ一言」


「え、俺?」


 こういうのはやったことがないし、やりたくもない。

 しかし、タイヨウの顔を見ればそれはそれは期待に満ち溢れた羨望の眼差しであった。

 これは演技では表現できない。


 期待されてしまっては仕方がない。

 俺は意外にも期待には応える主義何でね。


「うーんまあ俺はお前らと会って間もないし、特別お前らに恩情を抱いてるわけでもねえ。 ただここまで世話してやってるんだ、せめて勝って俺を見返してくれよ」


「何それむかつく」


「ははっ!」


「それに会場は【王の楽園(キングダム・エデン)】一色、俺らが勝つなんて誰も予想していない。 悪役には最高の条件だ」


 タイヨウとネロの顔を見る。


「悪者上等、こっちの方が面白れえよ。 あとはやるのみ、暴れてこいお前ら」


 俺に人を動かせる言葉なんてない。


「あんたもね」


「よしっ、【天使の加護ブレッシング・エンジェル】ファイト―、オー!」


 タイヨウのみが発した気合に俺とネロがどぎまぎしながら合わせる。


 そして試合開始のアナウンスが流れた。

 当初の作戦通り、一対一の各個撃破に向けてタイヨウとネロは森を全速力で駆け抜けていった。


「さあ、俺もちょっと気合を入れるかい」


 ゆっくりと森を歩く。

 あれだけ大口を叩いたんだ、俺も足を引っ張るわけにいかない。

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