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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第3章「七大ギルド新人戦編」
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第73話「答え」

イチルの独特なリズムの攻撃がタイヨウを苦しめる。

 予測すらも立てられないタイミング。

 タイヨウにとっては抗えようのない波が押し寄せてきている感覚だった。

 そして重たい一撃がタイヨウの顔面にヒットし、タイヨウは吹き飛ばされる。


「違う、そうじゃない……」


 タイヨウはボソッと呟いた。

 これでは勝てない、今の自分の動きではイチルについていけないと本能がそう言っている。


「さっさとくたばりな」


 イチルが魔力を練り込み、倒れているタイヨウの元へ駆けだす。


 考えなければ、答えを出さなければこいつに負けてしまう。


(あのリズムに付いていこうとしている時点で、俺は負けている。 だったら自分のリズムで自分の舞台で戦うんだ)


「ここだ!」


 タイヨウはここぞとばかりに魔力を解放した。

 瞬時に起き上がり、上空へと飛ぶ。

 燃え盛る太陽を背にタイヨウは青色の炎に身を包み、橙色の炎を拳に纏う。


「うっ!」


 イチルは太陽を見てしまったことにより、一瞬手で目を覆う。

 タイヨウの一撃は、一瞬の隙さえあればいい。


「『太陽が昇る日(バニシング・サン)』!」


「ぶはっ!」


 タイヨウの拳は確実にイチルの顔面に当たる。

 それを受けたイチルの口からは血が溢れ出し、その場に仰向けになって倒れた。


 そして改めてタイヨウは確信する。

 自分のやり方は考えながら動くことだと。


 * * *


「【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】から一名が戦闘不能になりました」


 この森一帯にスピーカーから鳴り出た音声のように、現在の状況を伝えるアナウンスが流れる。

 このアナウンスを聞いて戦闘に影響を与えないようにしているため、名前は隠して放送されるらしい。

 俺の分析ではおそらくタイヨウとイチルの戦闘があり、勝ったのはタイヨウ。

 タイヨウとイチルの性格から考えて、長いこと相手と戦闘を楽しむことはしない。

 であれば、早期決着。

 そして勝ったのはタイヨウというわけか。


「まあ、そんなもんだろ」


 それにしても暇だ。

 寝ようとするが、〈危険領域ブラック・テリトリー〉で生活をしていたせいか身に危険が及ぶところでは寝ようと思っても体が言う事を聞かない。


「となれば、ネロが二人相手すんのか」


 正直な話【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】のイチル以外の二人は単体で見ればそこまで強くはない。

 ただその二人のコンビネーションを考えれば、勝つことが簡単な話ではなくなる。

 近距離と遠距離。

 自分達のやりやすいように空間を支配して獲物を狩っていくスタイルだ。

 どちらか一方を倒せることができれば、ネロの勝利は確実なものになる。

 ただ向こうも自分達の単体性能の悪さを知っている。

 

「まあネロの能力なら心配いらんだろ」


 ネロの『弧人に咲く一輪の花アイデンティティ・フラワー』は自由度が高い。

 自分の思うように能力を扱えるというのはそれだけでプラスの要素だ。

 後はネロがどう組み立てて、どう実践に持ち込めるかが勝負の鍵だな。


 * * *


「くっそ!」


 ネロは歯を食いしばりながら、女の子らしからぬ言葉を吐き捨てる。

 ネロが相手にしているのは近距離戦闘を得意とした【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】のジョー・ガトリンだ。

 ジョーは魔装武具『短剣』を装備しており、ネロが反撃する隙も与えないほど断続的に攻撃し続けていた。


 それにネロはジョーに目を向けているだけではいけなかった。


「もうっ!」


 ネロが言葉を発した瞬間、ネロの顔付近を銃弾のような魔力が掠める。

 ネロは遠くにいるであろう、スナイパーにも気を配らなければならなかったのだ。


(あいつが変な事言わなきゃこんな目に合ってないのに……)


 ネロが浮かべるある男とは、【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】と戦ってない唯一のチームメンバー。

 しかし、ネロも二人でできると了承してしまったからこそ引くに引けなくこうして二人も相手にしなくてはならない。


「ねえねえ、あんたのお仲間はどこっしょ?」


 サングラスを掛け、肌はこんがりと小麦色。

 太陽に照らされた金髪が余計に鬱陶しく感じる。

 そこら辺の海に行けば必ず一人はいるようなサーファー男こそジョー・ガトリン。

 ネロからしてみればこういう男は見るだけでも嫌気が差す。

 人生を楽観的にとらえ、世界は自分中心に回っていると錯覚しているバカ。


 もちろんネロはジョーとは一言も喋ったことはない。

 ネロの感覚、イメージ、第一印象だけでネロはこう結論付けていた。


「ぶっとばす!」


「え、なんで急にキレてるっしょ?」


「うっさい!」


 ネロは杖をジョーに向けて魔力を解放した。


「そんな全力で魔力使ったらなくなっちゃうっしょ!」


 ネロの周囲には棘のあるツタが生えだす。

 太く長く、それでいて生命力に満ち溢れた緑。

 ジョーに向けて四方八方からツタが絡みにいく。


「っしょ!」


 しかし、ジョーはツタを一本一本切り裂いていく。

 ジョーの剣裁きは素早く、それでいて正確だった。


「思ったよりもやるじゃない」


 ツタがジョーに当たることはなく、ネロの攻撃は終了した。


「このぐらい余裕っしょ!」


 ジョーは短剣を投げて、大道芸のように短剣を弄んでいる。


「いいのそんな余裕で?」


「全然大丈夫っしょ! あんたもそんなに余裕かましてたら俺のマブダチのロックが黙ってないっしょ!」


 はーあとネロは大きなため息をつく。

 改めてこいつの事が嫌いであると、ネロは体の底、心の奥底からそう感じた。


「それは無理ね」


「なんでっしょ! ていうかロック、さっさとかましちゃえっしょ!」


 しょ、しょと言いながら指をパチパチと鳴らすジョー。

 しかしロックからの弾丸は一個もネロの元には飛んでこなかった。


 それもそうだ、なぜならロックはもう戦闘不能になっているのだから。


「【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】から一名が戦闘不能になりました」


 ネロとジョーに機械音のアナウンスが流れる。


「……っしょ?」


 ジョーの顔はみるみる白くなっている。


「さっきのツタ、あれはあなたを騙すためのフェイクよ」


 ネロは静かに、怒りを言葉の裏に隠しながら話した。


「それは無理っしょ! だってロックがいたのはここから一キロぐらい離れてるところ、魔力をそれまで解放し続けるのは無理があるっしょ!」


 ジョーは顔面蒼白になりながらも激しくネロを問い詰める。


 ネロは黙ってしまう。

 ジョーの動揺に呆れてしまった。

 一人になればなんて脆いこと存在なのだろうと、ネロは再び呆れてしまう。


「魔力は全力で解放し続けても一日は持つようには鍛えてきているわ。 それに私が狙ってたのは最初から遠距離からチクチク打ってくる意気地なしの方よ」


「ち、ちくしょーっしょ!」


 ジョーは悔しさを滲ませながら、ネロに突撃する。

 最初にあった余裕などは微塵もなかった。

 ジョーは魔力を解放してネロの元へ迫って来ているが、ネロは落ち着き払っている。

 戦う素振りを見せることはなく。


「しょっしょ鬱陶しい」


 ネロはそっと杖を仕舞った。

 もう決着はついているのだから。


「っしょ?」


 突撃しているジョーの下からツタが生える。

 瞬く間にジョーがツタに包まれた。


「もう決着は私が能力を発動した時からついているわ」


 『弧人に咲く一輪の花アイデンティティ・フラワー』には一つだけ弱点があった。

 その弱点とは魔力をふんだんに使ってしまい、使用範囲が限られてしまうこと。


 ネロは他の者と比べても魔力量は多い。

 それが血筋なのかわからないが、他者と比べても魔力が多いネロであっても能力を持続させることには限界があった。


 しかし、ネロは能力の唯一の弱点をヤマトとの修行によって補うことに成功する。

 だから一キロ先に離れているスナイパーに能力をぶつけることができたのだ。


「これで私たちの勝ちね」


 ピコン


「【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】から一名が戦闘不能になりました。 【仮面の道化師】が三名戦闘不能になったので、【天使の加護ブレッシング・エンジェル】の勝利です」


 機械音のアナウンスでネロ達【天使の加護ブレッシング・エンジェル】の勝利が確定した。

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