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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第2章「魔族侵攻編」
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第66話「疑念」

 円卓の机に七人のギルドマスターが連ねる。

 上下関係を無くし、お互いの立場を均等にするためにこの円形の机が設置された。

 しかし、それはあくまで形式上の話。

 魔族侵攻の責任は今回の総指揮官であるミエルに向いていた。

 【王の楽園(キングダム・エデン)】ギルドマスターのミエルは机の上で手を組み、険しい表情を浮かべている。

 会議の議題は、魔族侵攻の被害の整理及び予想を遥かに上回った魔族の力を確認するためだ。


「どう受け止めているわけ、ミエル」


 【慈しみの愛(プリズム・キャンサー)】ギルドマスターのルーエは円卓の机を指でなぞりながらミエルを問いただす。

 いつもの余裕を見せながら、妖艶に語り掛ける。


「『神の実績(シン・クラス)』も一人殺されてるしな~」


 机に大きな脚を乗せた【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】ギルドマスターのブルシットが嫌みのようにぼそりと呟く。


「今回の魔族侵攻に関しては私自身も事の重大さを重く受け止めている。 そこで私から提案がある」


「提案?」


 【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】ギルドマスターのアルがミエルの言葉に優しく聞き返した。


「今回の被害は甚大だ。 そこで新たに『神の実績』を三人追加し、さらに国全体にあるギルドの戦闘力の底上げをする」


「『神の実績(シン・クラス)』に三人追加はまだわかるとしても、ギルドその底上げって何をするわけ?」


 嫌そうな顔をしながらルーエが聞き返す。

 この会議に集まった一同もミエルの発言には納得しきれていない。

 今はミエルの言葉に注目せざるを得なかった。


「ギルド対抗戦の実施だ。 まず第一段階として、七大ギルドのみで新人戦を行う」


 ミエルは表情を変えることなく、淡々と言葉を述べる。


 ギルド対抗戦の実施は、七大ギルド会議で何度か議題に出た内容。

 しかし、【王の楽園(キングダム・エデン)】の知名度と実績を考えるとこのギルド以外のギルドが乗り気ではなかった。

 そのため毎回先送りにされていたが、今回魔族侵攻があったせいでこの意見に反対することはできなくなってしまう。


 つまりミエルが叶えたかったギルド対抗戦を実施できるという大義名分を得たということだ。

 【天使の加護ブレッシング・エンジェル】のような実績もないギルドからすればギルド対抗戦の一つや二つあったところで何も変わらないが、【慈しみの愛(プリズム・キャンサー)】のような【王の楽園(キングダム・エデン)】に肩を並べるギルドともなると対抗戦の結果で知名度が左右する。

 そのため対抗戦の実施は反対意見が多くなってしまい、実現までは至っていなかった。


 ルーエは嫌そうな表情を浮かべるだけで、反論することはできていない。

 他のギルドマスターも特に言う事はなさそうだ。


「『神の実績(シン・クラス)』に追加する三人だが。今回の魔族侵攻で実績を上げたトリ・スターの三人、【王の楽園(キングダム・エデン)】ティア・アゼレア、【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】ジェット・ロースター、【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】オネスト・アンフィーの三人を予定している」


 この三人には納得だ。

 魔族大侵攻で実績を上げた者だから。

 マークという『神の実績(シン・クラス)』の中でもトップの知名度と実績だった者がこの世を去った。

 であるならば、それに代わる『神の実績(シン・クラス)』を作ることが世間のためにも作る急務。

 失った信頼を取り戻すためにも、新たな英雄が必要なのだ。


「異論はなしとし、今回の七大ギルドギルド会議は閉会とする」


「ちょい待ち」


 普段なら一言も喋らず会議が終わるというのに、珍しくクロガネが手を上げて会議の終了を止めた。


「なんだ?」


 クロガネの珍しい発言に他のギルドマスターも注目していた。


「今回の魔族侵攻、なんかおかしくねえか?」


「何が言いてえんだクロガネ」


 ブルシットがクロガネの発言に食い付く。


 心底面倒くさそうにクロガネは言葉を続けた。


「何で王都にZ級のやつらが集中しなかったかって事が妙に引っかかる。 このセルティナを落とそうとするのであれば、あのゲートで一度に王都にZ級を下ろした方がいい」


「確かにね。 なんで魔族達はわざわざ戦力を分散したんだろうね」


 アルが付け加えるように今回起きた事実を説明する。


「あのゲートで運べる魔力の量は決まってるんじゃねえの?」


「いや! あのゲートから降りてきた魔族の魔力の総量は今回出現したZ級の魔力に並ぶ、つまり王都にZ級を集中させることは可能だ!」


 熱く語るのは、【命を賭して戦う者(ブロッケン・ウォール)】ギルドマスターのソルジーだった。

 このギルドは魔族侵攻で一番ギルドの人員を派遣していた。

 それによって魔族侵攻の詳細はこのギルドが一番情報を持っている。

 だからソルジーの発言は信頼度が高いのだ。


「で、クロガネ。 それだけだったらこの場にいる全員わかってることでしょ、つまり何が言いたいの?」


「俺が引っかかってるのは魔族側の意図だ。 今回の侵攻の目的が王都を落とすことではなかったとみている」


「……であれば、何が目的だというのだ?」


 ミエルがじっとクロガネの方を見つめる。


「侵攻が目的だったわけじゃなく、俺らの実力を確かめたかった。 それも元々あった情報と照らし合わせるために」


「何が言いたいのかさっぱりわからないわクロガネ。 見当違いもいいところよ」


 呆れた顔を浮かべるルーエ。

 クロガネの発言には根拠も何もない。


「俺の思い過ごしならそれでいい。 ただ、もしこの中に裏切り者がいたとしてそいつが魔族側に情報を伝え、各地にZ級を派遣していたとするなら次の侵攻は俺ら全員死ぬぞ」


 クロガネの言葉に会議全体に緊張が走った。

 裏切り者。

 この国の防衛も兼ねている七大ギルドにそんな人物はいるはずがない、いてもらっては困る。

 困るだけでは済まない。

 この国を揺るがす一大事だ。


「クロガネの疑問は私も感じていたことではある。 その疑問を放っておくわけにはいかない、もう一度魔族侵攻の目的を慎重に考える必要は大いにある」


「もし、裏切者がこの中にいるとしたら?」


 ルーエがこの緊張を壊すように話す。


「ただちに処刑する、それまでのことだ」


 ミエルの言葉に一同は顔色を変えることはなかった。

 ただしクロガネの発言は七大ギルド連合の信用に関わる問題。

 それはここに連なる者全員がわかっているはずだから。

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