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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第2章「魔族侵攻編」
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第47話「二体のA級」

 ボティスの口に飲み込まれていったフリル。

 でもボティスは特に何も気にしていなかった。

 少し怪訝そうな表情を浮かべたぐらいか。


 ボティスにしてみれば自分よりも何十倍も小さい異物を飲み込んだところで何も関係ないのだ。


 ボティスが俺の投擲で少し遅れたことにより、アンドラスは目の前まで迫ってくる。

 体を捻ってその攻撃を避けアンドラスの顔に魔力を込めた蹴りを見舞う。


 アンドラスは吹き飛んでいき、続く攻撃はボティスの攻撃。


 口を大きく開き、こちらを喰らおうとしてくる。


 が、それは叶わない。

 口を大きく開けた瞬間に、ボティスは黒血を吐きながら気を失ったように横に倒れた。


「よく頑張ったぞ、フリル」


 俺の言葉と同時に、フリルが口の中から姿を現す。


 ベトベトの体液を身に纏った銀髪の幼女がこちらを睨みながら歩いてくる。


「マスター、この怒りはどこにぶつければよろしいのでしょうか」


「すまんすまん、この戦いが終わったらうまいもんで食べさせてやっからさ」


 片手を挙げせめてもの詫びを入れる。

 フリルはそれでも機嫌を直すことはなかったが、これは仕方がない。


 魔獣には魔獣と呼ばれている所以がある。

 普通の生き物と比べて、魔力があるかないか。

 これが他の生物と決定的に違う点だ。

 それ以外は系統が似た生物と同じ。

 人型であれば胸に心臓はあるし、蛇であれば心臓は比較的口から近いところに存在する。

 そして生き物は心臓を止めさえすれば、基本的には死ぬ。


 魔獣だからと言って内臓に心臓を守る鱗などは存在しない。

 あるとしたら魔力による本能的な防御のみだ。


 であればフリルを投げ込むことによって体内の魔力を無効化し、フリルが心臓を少し傷つけることができればこいつは簡単に死ぬ。


「あんなに大きく口が開いてれば、何かを投げたくなってしまうのは致し方無いことだな」


「マスターの性格が新しくインプットされました。 サディスティックで残忍で私になんかただの道具としか思っていない男だと」


「そんなことないって、ほら、仕方がなかったってやつだよ」


「あなたが能力を使えば終わった話ですけどね」


 まだまだ機嫌を直してくれないフリル。


 でもこれぐらいしか思いつかなかったんだ。

 あとでちゃんと甘くて美味いものをたらふくご馳走してあげよう。


「グルルルル」


 バサバサと音を立てたアンドラスがこちらに警戒していた。


 ただこのアンドラスには〈未開拓遺跡ラビリンス・リメインズ〉で出会った奴のような威圧感は感じられない。


「さあ、一対一だ」


 ニヤリと笑い、アンドラスと対峙する。

 こいつは大きな口があるわけではないし、他の魔獣と比べても弱点はない。

 だとすればここからは地力の勝負。


「グギャァァァ!」


 空を飛んでいるアンドラスが距離を詰めてくる。

 俺もそれに呼応したように、地面を蹴って空中のリングへと上る。


 この魔獣は飛行型。

 空中での戦いは分が悪い。


 戦闘が長期化すればするほどこちらに不利な状況に傾いていってしまうのだ。


「さっさとくたばれよ!」


 刀と爪がぶつかりキーンという音を立てながら、火花を散らす。


 アンドラスの重たい攻撃がずっしりと体に響く。

 体に鞭を打つように、魔力を腕に集中し相手に隙を与えずに刀を振りかざし続けた。


 しかしアンドラスはA級。

 そんな簡単には傷一つも負わしてはくれない。


 魔力を消費し続けた弊害から少しばかり攻撃が緩くなってしまった。

 アンドラスはその隙を見逃すことはなく全身を使って俺に突進してくる。

 それをなんとか刀でガードするが、後ろに吹き飛ばされ壁に激突してしまった。


「くっそ……」


 地力の勝負になってしまえば圧倒的に俺が不利。

 いくら《自由への翼(フリーダム・フェーズ)》を使おうが、使用者が弱ければただの刀となってしまう。


 使うしかないのか。


 壁に打ち付けられた俺に魔力を使って全速力でこちらに向かってくる。


 『偽りの英雄(ライアー・ヒーロー)』の発動条件は、一度こいつの攻撃を喰らう必要がある。


 最悪だ。


 痛い思いなんてしたくないのが本音。


 でも生きるためには、生き残るためにはこうすることしかできない。


「ほんとに、面倒な能力……」


 受け入れるしかない現実。


 仕方がない。

 俺が弱いのが悪いのだから。


「グゥギャァァァ!」


「はあ、あいつがいればな」


 魔力の籠った大きな爪を振り下ろしてきた。


 目を瞑り痛みに耐える。


「……あれ?」


 しかし、その攻撃が俺に当たることはなかった。


 目を開けると片腕を失くしたアンドラスと、一人の女性。


「遅くなった」


 鞘に刀を仕舞い、静かだが圧倒的な魔力を纏っている女性。


「遅すぎる」


 はぁと再びため息をつくと同時に、体にある緊張もほぐれていった。


「そこでゆっくりと見ておけ」


 その言葉を吐いた瞬間に目の前にいたティアが消えた(・・・)

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