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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第2章「魔族侵攻編」
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第46話「広場の戦い」

「助けてくれいいいいいいい」


 目の前にいたのは仁王立ちしているティア。

 ではなかった。


 数人が壁に打ち付けられ、頭や胴体から血を流している。

 顔をよく見てみれば、【慈しみの愛(プリズム・キャンサー)】の連中。

 集合したときにティアに楯突いていた若い男もいた。


 そして中央の広場には大型の蛇の魔獣。

 先端が二つで分かれた細長い舌を伸ばし、口を開けたときには太陽の光によって照らされた鋭い牙を覗かせている。


 この場所に集まっていたのはまだ冒険者に成り立て、ギルドに入りたての経験の浅い者達。

 だからこそ実力者であるティアがこの辺鄙な場所でリーダーとなり、万が一の事態となっても対処できるというギルド連合の判断だろう。


 しかし、想定外な出来事が起きた。

 それはA級が空から降ってきたこと。

 一度ならまだしも、二回目の襲撃がなされている。

 それに二回目はA級の魔獣が十体放出されるという最悪な事態。


「シャァァァァァァ!」


 蛇型魔獣、ボティスが長い体躯を俊敏に操り地面を這ってこちらに近づいてくる。


「おっと!」


 なんとか横に飛び込み回避をしたが、この危機的な状況は変わらない。

 なぜなら後ろにも魔獣、アンドラスが迫って来ているから。


 なんとか上手く立ち回って二体を戦わせたいところだが。


 魔獣を二体視界に捉えるも、魔獣の闘争心、警戒心は俺に向けられていた。


「どうにもおかしいな。 野生の魔獣なら自分の縄張りのためそこら辺にいるやつを片っ端から殺そうとするはずなんだが……」


 かつて〈危険領域ブラック・テリトリー〉の暮らしによって魔獣の習性は大まかながら掴むことはできていた。

 だからこそ、この魔獣たちが人間のみを襲おうとしているのが気掛かりで仕方がない。


 あいつらならできるか。


 俺はかつて瀕死にされた人物を思い起こす。

 圧倒的な魔力を誇り、俺が能力を使っても余裕をずっと見せていた男。


 シェムハザ。


 Z級のやつらならA級の魔獣を調教することができてもおかしくはないか。

 だとするならば〈未開拓遺跡ラビリンス・リメインズ〉で出会ったA級のアンドラスが強すぎたのも頷ける。


「まあまずはお前らをどうにかしないといけないか……」


 自分よりも大きく、迫力のある、二体の魔獣を見つめる。


 そして横目で重傷を負っている奴らもちらっと見てみた。


 こいつらを見捨てて、逃げるのが一番手っ取り早いし生存確率も上がる。

 助けてやる義理なんて全くないが、俺も一応【天使の加護ブレッシング・エンジェル】の一員だ。

 たぶんここで何もしなければ、なにかしらのお咎めがギルドに来てしまう。


 そうであれば、ここでやる事はただ一つ。


「リーダーが来るまでの時間稼ぎだな……」


 フリルを片手に呼び出して、魔獣を睨みつける。


 途端に二体同時に俺に攻撃を仕掛けてきた。

 翼のあるアンドラスは上から、蛇であるボティスは下から、俺の逃げる隙が無いように攻撃をしてくる。


 先に俺の元へ到達してきたのは、アンドラス。

 アンドラスの鋭い爪をなんとか刀でガードする。

 魔獣の重たい攻撃は俺の体を軽々と吹き飛ばし、地面を這いつくばってしまった。


 息をつく間もなく、ボティスが口を大きく開けてこちらを喰らおうとしてきていた。


 横に飛び、ボティスの頭近辺に刀を振り下ろす。

 しかし刀は弾かれ、反動で俺の体も仰け反った。


「っのやろ!」


 ボティスの硬い鱗は魔力で作られているわけではない。

 物理的に硬いのだ。


 相手が魔力でないならこの刀はただのなまくら。


 これは相当骨が折れる。


「マスター、なまくらではありません。 私は高貴な存在です」


「へいへい……」


 頭に直接語り掛けられるが、今はこの刀とゆっくり喋っている暇はない。


「グギャァァァ!」


 天空から鋭い爪を振り下ろしてくる。


「あっぶね!」


 空中を蹴ってなんとかその攻撃を避ける。

 空中から見た地面は抉れ、コンクリートの下に敷き詰められていたこげ茶色の土が見える。

 かなり広く距離を取りこの魔獣の対処法を練ってみるがイマイチいい案が思いつかない。


「マスター、このままでは死んでしまいます。 早く能力を」


「嫌だ」


「マスター、あなたは死にたがりなのですか? 早く能力を使ってください」


「ちょっと待て、もうちょっとでスーパーミラクルシューティングアタックが完成するから」


「……マスター、何も策が思いついていないならもっと素直になりましょう」


 心が読まれるって嫌だな。


 それでも能力は使うわけにはいかない。

 俺の能力は使った後のリスクが重すぎる。

 また魔獣がゲートから放出されれば、俺はほんとに何もできずに死ぬことになる。


 家族に会うためにも、まだ死ぬわけにはいかないのだ。


「よし、決めた。 フリル、あとは頼んだぞ」


「え?」


 俺は右手に持っている刀を握りなおして、右腕を大きく振りかぶり投擲の構えをする。


「マスター、いくら何でもそれは……」


「よし、フリル! ご主人様のため、胃の中へ行ってらっしゃい!」


 二体の魔獣が息を合わせたように攻勢に出向いてきた。


 俺はボティスに足を向け、振りかぶった刀をボティスの口に目掛けて思いっきり投げる。


「シャァァァァァァ!?」

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