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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第2章「魔族侵攻編」
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第40話「【王の楽園】第二支部リーダー」

 今にも雨が降りそうな、どんよりとした曇りがかった雲が空中を支配している。


 俺がいる場所は【天使の加護ブレッシング・エンジェル】から少し外れた街の中。

 三者三葉の冒険者ばっかりであったが、ギルドに所属している真っ当な奴らであるため〈未開拓遺跡ラビリンス・リメインズ〉のようにオラオラしている人物などは見られなかった。

 〈危険領域ブラック・テリトリー〉との間ではない場所で緊張感もなく、それぞれの表情にも余裕が見られている。

 同じギルド内で談笑している者も多いのか、ピリピリとした空気は感じることはできない。


「時間だ」


 その冒険者たちの円の中心にいた女性が口を挟んだ。

 その言葉、たった一つの言葉だけで冒険者たちの注目を集める。

 黒い短髪がよく似合う女性で、クールな見た目の大人な女性。

 見る者を恐怖で怯えさせるような切れ長の目が周囲に恐怖感をもたらすが、その目を差し引いても端正な顔立ちをしている。

 出るところはくっきり出ており、へこんでいるところは筋肉質とわかる程度に締まっている身体。


「私がこの区域を担当することになった、【王の楽園(キングダム・エデン)】第二支部リーダーだ」


 まるで先生のような口調で皆を諭すような喋り方。

 今一番『神の実績(シン・クラス)』に近いと言われている人物。

 アーノルドのようなリーダーシップがあるわけでもないし、ミエルのような威圧感があるわけでもない。

 けれど、世間の評価は高い。

 世間知らずの俺が何もわからないが、ネロのような【王の楽園(キングダム・エデン)】ファンからしたらきっと見る目も変わってくるだろう。


「ねえねえ、ティアさ~ん。なんで自己紹介しないの~?」


 ギャルの女性冒険者がティアの言動に疑問を投げかけている。


「必要ない、ここの地域の守りは個人の判断に任せる。私からは以上だ、何か他に質問のあるものはいるか?」


 冒険者がざわざわとし始める。


「ちょっと待ってください! いくら僕たちがギルドに所属しているからって指示がなければバラバラに行動して確実な守りができないと思います!」


 困惑した表情を浮かべた冒険者の一人がティアに対して、声を荒らげていた。


 まあ言いたいことはわかるな。

 せっかくギルド連合が適材適所に決めた人物が集まっているというのに、それでは元も子もないのではないか。

 というのがこの青年の主張だろう。


「そうか。なら、貴様は自分のギルドで行動しろ」


「え?」


「ここの地域に指示待ち人間はいらない」


「ちょっと、それはいくらなんでも……」


「自分で考えて行動しろ、他の者もこいつと同じ意見であれば帰ってもらって構わん」


 反論を述べた青年を始め、その場にいた冒険者は口を閉ざしてしまった。


 リーダーシップはないが、それと同じぐらいの恐怖感がこの女性にはあるってことか。

 天下の【王の楽園(キングダム・エデン)】のリーダーになるには飛びぬけた何かが必要。

 この女性の怖さ、これがリーダーとなった所以だろうか。


 そしてその場にいた冒険者たちも納得しきれていない様子で散らばり、中心にいたティアもどこかへ歩き出す。


「お姉さん、厳しいね」


 孤独なったティアに声を掛けた。


「カナタ・アゼレアか。どうした、帰りたくなったか?」


「あれ、俺会った事あったっけ?」


 急に名前を呼ばれて驚いてしまった。


「この場にいる冒険者の名前は全て覚えている。それぞれの特徴もな」


「へぇ~、だったらもう少し素直になったらどうなんだ?」


 不敵な笑みを作りながらティアを見た。


「素直になれとは?」


「あんた本当は守りたいんだろ? ここにいる冒険者たちを」


「何が言いたい?」


 少しムッとした表情を浮かべながら、こちらを睨みつけてくる。


 なぜかこういう本音を隠すタイプはからかいたくなってしまうのは俺の悪い癖だな。


「今回集まったのはギルドに所属している者が大勢だ。 何も所属していないやつらに比べたら帰属意識はそれなりに高い」


 俺の言葉に口を挟むことはせずにただ俺の言葉を聞いてくれている。


「つまり、あんたが【王の楽園(キングダム・エデン)】でのリーダーであっても、各々のギルドのほうが愛着がある。 もしかしたら、言う事を聞かないやつだって出てくるかもな。 だったら、言う事を聞かせるよりもギルド同士のコミュニケーションを信じてそのメンバーで戦った方が生存率は上がる」


 だとするならば。

 俺の意見が正しいのならば。

 一点言いたいこと、言わなければならないことがある。


「え、じゃあ俺は一人?」


 話をしながら論点が整理され、ふと振り返れば非情な現実が待っていた。


「……そういうことになるな」


「うーん、まあいいか。誰かと一緒になんて俺ができるわけねえしな」


「不安なら私と来るか?」


「いや、怖そうだからいい」


 その誘いを一瞬で断る。

 たぶんティアは怖い。見た目からしてもそう思う。

 なにか自分が下手なことをすればぶん殴ってきそう。

 暴力反対、恐怖政治反対。


「そうか……」


 すぐにティアは踵を返して俺とは反対側に歩いて行ってしまった。


「さて、俺はどうすっかな」


 ここら辺は【天使の加護ブレッシング・エンジェル】よりも少し外れた街。


 おそらく魔族もここまでは進行してくることはないだろう。

 〈巨大橋のある街(ブリッジ・ロード)〉や〈北にある大地(ノーサン・アイランド)〉といった〈危険領域ブラック・テリトリー〉と面している場所には『神の実績(シン・クラス)』や国の兵士、さらに超戦闘特化ギルドの【命を賭して戦う者(ブロッケン・ウォール)】が守っている。


 国の真ん中付近にあるここに魔族が流れ出てくることがあればそれは大問題である。


「何も無ければいいがな」


 そして俺は誰もいない場所へと向かって行った。

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