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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第2章「魔族侵攻編」
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第39話「警備場所」

「うーん、まあそうだな。 ヴィオラ頼む」


 一瞬考えた素振りを見せ、面倒くさくなったのかヴィオラさんにこれからの説明を頼み自身はジョッキに酒を注いでいた。


 相変わらずだな、この親父。

 一番大事なところだろうが。


「はあ。ギルドマスターが説明しないでどうするんですか」


 ヴィオラさんがため息交じりに心底嫌な顔を浮かべている。

 ただ慣れているのかヴィオラさんは事の説明を続けた。


「今回は王国と〈危険領域ブラック・テリトリー〉の間、どうやらそこに進行しているという調査を受けてギルド連合が特例で発注したクエストになるわ。ギルドに所属するものは強制的にこの警護に備えなくてはならないことはみんなも知っているよね?」


 知らない、と言いたいところだがまずは事の結末を黙って見守ることにする。


「そして今回の七大ギルド会議で警護の観点からギルド単位で動くことはせずに、冒険者の適材適所の場所で警備を担当することになったの」


「ギルド単位で動いたほうが効率的だと思うんですけど。だって他のギルドの連中と足並み揃えて守りましょうなんて『神の実績(シン・クラス)』でもない限り動かないんじゃないでしょうか」


 ネロが言葉に気を付けているも、結局尖ってしまう口調でヴィオラに質問する。


 それは俺も同意見。

 だってネロみたいなやつが他のギルドにも絶対いるから。

 こういうやつが一人いるだけで、誰かが死ぬこともありそうだ。


「まあそれもちゃんと会議の議題として挙がったらしいんだけど、今回は〈巨大橋のある街(ブリッジ・ロード)〉が主戦場であるとギルド連合は判断したそうよ。それに各担当地域のリーダーにその場の指揮を委ねるらしいわ。だから、ネロもその指示はちゃんと聞くようにね」


「はあ~い」


 ネロが不満そうにしているが、とりあえずヴィオラさんの話は飲み込めたようだ。


 ちらっとタイヨウを見ても、話し始めたときから不変の微笑を浮かべている。

 たぶんの脳のキャパをもう超えてしまったんだな。

 タイヨウ、心配するな。

 実は俺もあんまりわかってない。


「それで私たちの配置なんだけど、ヤマトさんとネロが王都近辺の警護、

 タイヨウが〈巨大橋のある街(ブリッジ・ロード)〉の警護、カナタは【天使の加護ブレッシング・エンジェル】周辺ね」


 〈危険領域ブラック・テリトリー〉との間が危険なことは言うまでもないが、わざわざ王都にも警備を入れるのか。

 それに『神の実績(シン・クラス)』であるヤマトさんまで配備している。

 相当王都が魔族を怖がっているのが伺えるな。


「王都……」


「よろしくね、ネロちゃん」


「は、はい!」


 ネロが一瞬怪訝そうな顔を浮かべるが、ヤマトさんが一瞬にしてその表情を掻き消した。


「タイヨウ、大丈夫か?」


「おう! とりあえず魔獣をぶっ倒せばいいんだな!」


 うん、大丈夫じゃないね。


「それと各担当のリーダーだけど、〈巨大橋のある街(ブリッジ・ロード)〉にはマークさんが、ネロはミエルさん、カナタは【王の楽園(キングダム・エデン)】のティアさんね」


「ティア?」


 聞きなじみのない人物に想像がつかない。


 誰を言われてもわからないが。


「ティアさんは【王の楽園(キングダム・エデン)】第二支部のリーダーよ」


 ネロがぼそっと呟く。


「【王の楽園(キングダム・エデン)】にリーダーどれだけいるんだよ」


「ティアさんは相当強いわよ。世間では今一番『神の実績(シン・クラス)』に近いって言われているわ」


「へ~」


「……話した私が悪かったわ」


 ネロの熱弁にうまく答えることができなかった。

 ネロは意外に【王の楽園(キングダム・エデン)】周辺のことに詳しい。

 まあ、それだけこのギルドに知名度があるということか。


 ただ強いならばそれでいい。

 〈未開拓遺跡ラビリンス・リメインズ〉の二の舞みたいにならなければ、それだけで十分だ。


「マークさん……」


「よかったじゃない、タイヨウ。あんたが憧れてるマークさんと一緒のところで」


「こうしちゃいられない! 俺修行してきます!」


 そういうとタイヨウは席を立ち、足早にギルドから出て行ってしまった。


「ほんとに単純バカね」


「マークさんって人とタイヨウに関わりでもあるのか?」


「ええ、昔タイヨウが魔族に襲われていたところをマークさんが助けてくれたらしいわよ」


「ふーん」


 人の過去に興味もないし、詮索するのも別に好きではない。


 ただ気掛かりなことは、タイヨウの性格が裏目にでないことだけ。

 こればかりは〈未開拓遺跡ラビリンス・リメインズ〉の頃からずっと心配している。


「大丈夫なのか、タイヨウ一人で」


「そこは全く心配いらないわ。なにせマークさんは『神の実績(シン・クラス)』だから」


 * * *


「タイヨウ」


「お、カナタか」


 ギルド近くの森でタイヨウは修行を積んでいるというのをネロから聞いてここまでやってきた。


「随分気合入ってるな」


「まあな。なんてたってあの『太陽神』と一緒だからな、足手纏いにはなりたくないんだ」


 『神の実績(シン・クラス)』にはそれぞれ固有の二つ名がつくらしい。

 そしてそのうちの一人が『太陽神アポロン』マーク・ウェスト。

 ヤマトさんも、マークならそう簡単にはやられないって言ってたな。


 まだ『神の実績(シン・クラス)』の実力を間近で見たことはないが、ヤマトさんを見て魔族の最高位であるZ級のシェムハザが逃げて行ったことを考えれば、それだけ強いということか。


「カナタも修行しにきたのか?」


「いや、俺はお前の様子を見に来ただけだ」


「ん?」


 俺がここに来た理由は言葉の通り、タイヨウを見に来ただけ。

 なにか引っかかってしまうのだ、こいつの性格が。


「あ、そうだ。じゃあ俺と手合わせしてくれよ!」


「手合わせ?」


「だってカナタはあのA級の魔族を一人で倒したんだろ!?」


 羨望の眼差しでこちらを見ているタイヨウ。


「俺は相手にならないぞ」


「よしっ、どこからでもこい!」


 そういえばこいつはヤマトさんと違って、根から話聞かないタイプだった。


 まあ仕方ないか。


「え?」


 俺はタイヨウの足を払い、その場で倒れさせた。


 負けてやってもよかったがそれじゃあどうせこいつは納得せずにしつこく俺に勝負を仕掛けてくるだろう。

 だから隙をついて勝つことが、一番手っ取り早いのだ。


「ははっ。やっぱ強いな、カナタは」


「不意打ちは得意でな」


 タイヨウが夜の空に散らばる無数の星を見ながら、納得した笑みを浮かべている。


「タイヨウ、死ぬなよ」


「ああ、大丈夫だ」


 その大丈夫という言葉でまた更に心配の色が濃くなっていく。


 タイヨウという男は危険を顧みずに弱者を助けてしまう。

 自分が死ぬことがあっても、逃げることは絶対にしないのがタイヨウという男だ。

 俺もいつから人の心配ができるようになっちまったんだろうな。

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