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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第1章「未開拓遺跡編」
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第19話「未開拓遺跡」

 太陽も真上に上り、雲ひとつない快晴の下で遺跡探検にいく冒険者が続々とそろい始める。

 冒険者たちの年齢層は三十代ぐらいの中年男性中心であったが、ちらほらと若い冒険者も点在していた。

 表情は険しそうで、これから戦争にでも行くような表情をしているものもいれば、ニヤリと笑いながら余裕を見せるもの、ナンパをしている者、多種多様な人物がここには集まっていた。

 装備もしっかりしており、鉄兜を被っているもの、大きな斧を担いでいるもの、さらには表情や体格さえ見えない頑丈そうな鎧を装備しているものもいる。


 そして俺はというと。


「やっぱいいなあ、遺跡調査は!」


 目に活力が湧いてくるのがわかるほど遺跡調査に心躍らせていた。

 これから一緒に探索する冒険者たちを観察してはいるが、実際心ここにあらずといったところであろうか。


 〈迷宮遺跡(ラビリンス・リメインズ)〉。


 もちろん未開拓遺跡である不安要素は拭えないが、難易度が高いということはそれだけのものがあると確信している。

 長年の遺跡探索で得た経験からくる勘のようなものではあるが。


 そんな危険な場所だからこそ、そこにしかないものがあるというもの。

 そしてその存在とは、宝の存在。

 探索済みの遺跡にはほぼないと言っていいほどの貴重な物。

 その宝には希少な鉱石はもちろん、この世で発見されていなかったものも中には存在する。

 それだけで難易度が二つ三つ上がったという事例もあるらしい。

 難易度にそこまでの信頼はしていないが、それだけ貴重なものであるという一つの目安にはなる。

 それがあるかもしれないというだけで、この遺跡調査の楽しみが数倍にも数十倍にも跳ね上がる。

 加えて報酬も三十万ペイ。

 こんなにおいしい話があっていいのだろうか。


 よだれが滴るのを押さえながら、改めて周りに目を配る。


「確かタイヨウもここに来てるって話だったけど……」


 しかし、人数が多いせいか中々目的の人物を見つけることができない。


「おい!」


 目を凝らしながら探していたところ、後ろから怒号のような声が聞こえる。

 嫌な予感が頭をよぎった。

 その声は聞いたことがある声で、なおかつこの声の主にあまりいい思い出がない。

 というかない。

 恐る恐る振り向くと、そこにいたのはこの前つい怒りのままに足を折ってしまった人物であった。


「よく俺の前にのこのこ面出して来やがったなあ!」


 俺は反射的に本能的に、勢いのまま声を荒らげる。

 それもそのはず、絡まれ、胸倉を掴まれ、しまいには財布まで取られた。

 それを思い出すだけで、怒りが込み上げてきてしまい我を忘れてしまう。


「あぁん? やんのかこらぁ!」


 メンチを切り、最大限の威嚇をしてくる男。

 金髪のリーゼントがよく目立ち、目つき顔立ちともにヤンキー感丸出し。

 筋骨隆々の体で自分よりも一回り高い身長で見下ろしてくる。

 その憎くて悪しくて、嫌いな男、イチルという人物がそこにいた。

 そしてもちろんのこと取り巻き二人のガリとデブだか、ニチカとミチだかわからんやつらも一緒にいる。


「ちっ。まあ、ここで事を起こすのはやめようぜ。今から楽しい楽しい遺跡調査が待ってるんだ」


 手が出る一歩手前まで行ったが、やはり遺跡探索の前にことを荒立ててしまってはいけない。

 大人な自分をほめてあげたいほどだ。

 そのイチルもなぜか今日はおとなしい印象を受ける。


「お前に折られた足もこの通り、万全の状態だ」


 足をパタパタと動かしながら、快調した様子を見せつけてくる。


「治り早すぎるだろ。体の八割カルシウムでできてんのか?」


 あっけらかんとして、その復調具合に水を差す。

 確かに足を折った際、綺麗に真っ二つに折ってやったということは記憶しているがそれを踏まえてもイチルの足治りは早かった。


「あ? カルシウムってなんだそれ」


 キレ気味にこちらを睨みつけてくる。

 もうこの態度、対応にすっかり慣れてしまった。


「おい! またやっているのか!」


 イチルと口論をすると、俺の背後からまたしても聞きなじみのある声がしてくる。

 そして、遮るように視界へ入ってきた一人の青年。

 それは俺が探していた人物。

 オレンジの髪に、若い見た目で細身ではあるが、その細い体からも筋肉もしっかりと確認できる。

 優しい顔をしていながらも、切れ長の目の奥からにじみ出ている熱さが伝わってくる青年。

 かつてイチルから助けてくれたヒーローがそこにはいた。


「てめぇはあんときの……」


 イチルが悔しがるように眉間にしわを寄せながら睨みつければ、タイヨウも引き下がるまいとイチルを睨みつける。

 まるで両者の間に火花が散っているようだった。


「けっ! 遺跡では後ろ気ぃつけろよ!」


「ろよ!」


「よ!」


 相も変わらず練習しているかのような息の合ったコンビネーションだと感心するも、今日のイチルには前会った時の威勢は感じられなかった。

 若干の不安さを覚えるが、まずは当初の目的の一つであったタイヨウに会うことができたからよしとしよう。


「久しぶり!」


 そしてタイヨウが快活な声と満面の笑みでこちらに手を差し伸べていた。

 その笑顔、眩しすぎる。


「ああ、この前といい、今回も助けてもらっちまったな」


 俺もその手に応えるように片手を握る。


「いやいや、気にしないでくれ。俺が勝手にやったことだから」


 照れながらも謙遜するタイヨウ。

 こういう人柄の人物は俺も気に入っている側面がある。

 こういう素直で純粋タイプはこちらが気を張らなくても済むため、安心して話せるのだ。


 が、この行き過ぎた正義感は少しばかり気掛かりであった。

 遺跡探索において一番大事な事は自分の命を守ること。

 変に他人を助けようとすると足元をすくわれる。

 俺の過去の経験からその事は誰よりも深く、大事にしていることであった。

 まずは自分の命、それを守れない者から死んでいく。

 それが遺跡探索だ。


「あら、私たちと同じぐらいの歳のやつもいるじゃない」


「ん?」


 声のした方に目をやると、タイヨウと年も同じぐらいの少女が喋りかけてきた。

 艶やかな緋色の髪をツインテールにして結びあげ、切れ長の目によって気の強そうな印象を受けるが、透き通った白い肌から見える顔は美少女と呼ぶにふさわしい。

 体型もスレンダーで、シュッとしているが全体のバランスが整っているため美人であると思う。

 そして、なぜかその人物に睨みつけられている。


「こちらは?」


 どうしてにらみつけられているのかわからなかったが、その答えを求めるようにタイヨウに答えを促す。


「ああ、こいつはネロ・リーベル。ちょっと気難しいやつだが、仲良くしてやってくれ」


 タイヨウはネロのほうを見て、慣れた様子で優しく説明してくれた。

 こいつがヤマトさんの言っていた天使の加護から派遣されたもう一人の人物か。


「ほんとに単純細胞ね。敵か味方かわからないやつにわざわざ自己紹介なんかして、それで情が生まれて、あんたが死ぬことになっても私は知らないわよ」


 ネロはプイっとそっぽを向くが、タイヨウは少し口角を上げ言葉をかける。


「ありがとうな。心配してくれて」


 タイヨウは優しく包むような声でネロに感謝を伝えている。


「べ、別に、心配なんかしてないわよ!!」


 このやり取りを一部始終見て呆気にとられていたが、このなんとも恥ずかしさが漂う雰囲気にいてもたってもいられなくなり、片手で口元を隠しタイヨウに耳打ちをする。


「なあ、もしかしてネロって……」


「?」


 一瞬の沈黙があったが、俺にそのあとの言葉を促すような顔をしている。


「ツンデレってやつか?」


 タイヨウの大変さを察して、肩をぽんぽんとたたく。

 何を言っているのかわかっていないタイヨウであるが、苦笑いでなんとか誤魔化していた。


「あんたら、何コソコソ喋ってんのよ。ぶっ飛ばすわよ」


 再度、ギラリと睨みつけられた。


「ひっ!」


 その恐ろしい眼に背筋を凍らせ、タイヨウの後ろに隠れる。


「なんでこの方はこんなに気性が荒いんだ?」


 まあまあとタイヨウがネロをあやしていると、近くにいた柄の悪そうな冒険者が喋りかけてきた。

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