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この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第1章「未開拓遺跡編」
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第15話「お金の大切さ」

「ふぁ~あ」


 目を覚ますと同時に知らない景色が、視界に広がる。


「どこだ、ここ?」


 見慣れない景色に戸惑うものの、とりあえず自分が覚えている直前の意識を思いだす。


「確か集会所までは来てロゼッタさんに会ったけど、そこからの記憶がないな……」


 集会所にいたのになぜかベッドで寝ている。

 窓を見てみると太陽が昇っていることが確認できたので夜ではないことはわかった。


 とりあえず体を起こし、グーッと背伸びをする。

 カーテンから差し込んだ光によってさっきまでぼんやりしていた頭もすっきりし、改めて寝ていた前の情報を思い出していた。


「待てよ、俺集会所まで行ってそのまま寝た?」


 思い出したように、俊敏に周りを見渡す。


「ない、俺の鉱石がない!」


 その言葉を叫ぶことにより、焦燥感が増してしまう。

 体の血の気も引いてきて、頭が真っ白になっていくのがわかった。

 必死にベッドの下や、その部屋に置いてある箪笥も見てみるが、それらしきものは一切ない。

 というか、あの大きな袋ならすぐに見つかるはずだ。


 それでも部屋を隅から隅まで探す。

 しかし、それらしきものは一切見つからない。


 非情に不味い。

 とっても不味い。


 コンコン


 血眼になり必死に部屋の中を探していると、扉がノックされた。


 その音に警戒し、扉を見つめる。


「カナタく~ん、起きた~?」


 扉の奥から聞こえた声は、聞きなじみがある声。


「ロゼッタさん?」


 その声の主を確認できたので、扉を開ける。


「おはよう。どう調子は?」


 ロゼッタさんは心配そうな顔をしながら、俺の体調を心配してくれていた。


「体は全く問題ないっすけど」


 未だ状況がつかめないが、ロゼッタさんの姿を見て少しだけではあるが心は落ち着かせられる。


「カナタ君昨日から丸一日寝てたんだよ?」


「昨日から一日?」


「うん、集会所でね。それで、そのまま何とかベッドまで運んで……」


「俺の鉱石は!?」


 ロゼッタさんの言葉に食い入るように、自身が必死の思いで手にした鉱石のありかを聞く。


「大丈夫だよ、ちゃんとうちで保管してあるから」


 ロゼッタさんは俺の行動に対し、もう驚く様子はなかった。

 それだけ俺のお金に対する執着心は、数日の付き合いだがわかりきっている、そんな様子である。


「よかった~」


 肩の力が抜け、そのまま地面に腰を下ろす。


 俺の行動を見届けていたロゼッタさんにも笑みがこぼれていて、それを見たら俺も心にゆとりを持つことができた。


「さ、とりあえず顔洗ってきなよ。そのあとにご飯食べよ、お姉さんが奢ってあげるから!」


 えっへんと拳を胸に当てる。

 その堂々とした姿と、極上の言葉にすらも覚えていた。


「か、神様ぁ~」


 俺はロゼッタさんの足にしがみつく。

 この奇怪な行動、どれだけ気持ちの悪い行動とわかっていても、体が心がロゼッタさんに吸い付いてしまう。

 これぐらいしか今は感謝の表現の仕方が思いつかない。


 すぐ放してと言われるつもりであったが、ロゼッタさんは俺をすぐには振り払うことはしなかった。

 まるでペットを見ているような、そんな顔である。


「ほらほら、さあ立った立った!」


 立つように促され朝の身支度を済ます。

 扉の前で待ってくれていたロゼッタさんが集会所の食堂へと案内してくれた。


「それにしても、カナタ君。すごい量の鉱石だったね」


 廊下を歩きながら、ロゼッタさんは昨日採ってきた鉱石について尋ねる。


「まあ、徹夜で採ってたんであのぐらいは」


「いや、それでもすごい量だよ! それにレアな鉱石もいくつかあったし」


「というか、あの鉱石っていくらぐらいになるんすか?」


 会話の流れを切るように、鉱石クエストの値段を聞く。


「えっとね、ざっとした計算だと五万ペイぐらいかなぁ」


 足がすっと止まる。


「五万ペイ?」


「うん。でも、遺跡探索の保証金をその報酬から引いといたから、それの分少し値段は下がってるけどね」


「あれだけで、五万ペイ?」


 足を止めたことに気づいたロゼッタさんが俺のほうを振り向く。


「あれだけ頑張ったのにね、五万ペイって安いよね……」


 ロゼッタさんは申し訳なさそうに、謝罪をしてきた。


「どんだけ、高いんすか」


「え?」


「そんなにもらっていいんすか!?」


 心がパーッと晴れていくのがわかる。


 今まで必死に鉱石を採ってきても、一万ペイにも満たなかった。

 いつもよりも少ない時間で採ってきた少ない鉱石。

 それが五倍もの値段で取引されるのだ。

 こんなに嬉しいことはない。


「そっち!?」


 ロゼッタさんの軽快で素早いツッコミが入る。

 それに関心するも、やはり大金を手にすることの方がずっと心に残り続ける。


「じゃあ、はいこれ。本当は食事の時にゆっくりと渡そうと思ったけど、報奨金ね」


 ロゼッタが差し出したのは、五枚の一万ペイ。

 丁寧にそのお札を手にする。


「ありがとうございます」


 深々と頭を下げた。

 ふざけることはなく、あくまでも丁寧に、そして誠実に。


「君はほんとに不思議な存在だね」


 ロゼッタさんは俺へ微笑みかけている。

 茶化すこともしないで。

 その言葉の意味を完全に理解することはできなかったが、大筋の意義は感じることができた。


「ほんとに感謝してます」


「いやいや、このお金は君が頑張った分のお金だよ。次からはもっといい報酬が出るクエストを渡せるように頑張るよ」


 微笑むロゼッタさんを見て、自然と口角も上がっていくのがわかる。


「あ、そうだ。冒険者登録済ませといたよ」


 思い出したように、ロゼッタさんが冒険者カードを取り出す。

 そこには、自分の名前、年齢、そして数字の形をした空白。


「この空白の数字は?」


「これはね、冒険者クラスっていうの。実績を上げていくと、だんだんとその数字のマークが塗りつぶされていって、モノ、ジー、トリっていう順番で上がっていくんだよ。カナタ君は冒険者なり立てだから、なんもなしの『何もない実績(ミーデン・クラス)』からだね」


「へ~」


「あ、興味ない顔してる。でもね、このクラスが上がっていけば、難しいクエストが受けられるようになってくるの」


「じゃあ、全く上げる必要がないと」


「でもでも、なんと! もちろん難しいクエストほど、報酬は上がっていくの!」


「まあ、そうでしょうね」


 デデーンという効果音が流れたような音が流れた気がしたが、特に盛り上がることはできない。

 その反応の薄さに若干すねたような顔をしているロゼッタさんだったが、なぜかまだ表情に余裕が見える。


「ちっちっち。それだけじゃないんだなぁ」


「いや、何も喋ってないんですが……」


「ここだけの話だけど、簡単なクエストでも報酬が高くもらえるんだよ!」


 ここだけの話をしているにも関わらず、かなり大きな声で喋っている。

 その姿はかなり得意気で、胸を張り体を大きく見せていた。


 ロゼッタさんって実はお茶目だな。


 彼女の意外な一面に可愛いらしさを感じたが、さすがに言葉にすることはしなかった。


「え!? なんでそんなに反応薄いの!? お金好きでしょ?」


「お金は大事ですけど、お金が全てではないと考えているので」


「えぇ~、なんか若いのに達観してるなぁ」


 そんなに俺って、お金好きだと思われてんの。

 なんかちょっと嫌だなあ。


 残念そうにするロゼッタを見るも、金の亡者と思われているような気がしてならない。


「でも君ぐらいの実力があれば、『一つ目の実績(モノ・クラス)』まではすぐだと思うけどね」


「買いかぶりすぎですよ」


 あまり褒められたこともないので、こういうときどう反応していいかがわからない。

 とりあえず、笑みを浮かべることしかできなかった。


「そうかな~? あ、そうだ。ヤマトさんがギルドに来てって」


「ヤマトさんが?」


「うん。私も詳しくは聞いてないけど、「君が欲しい」って言ってたよ」


 ヤマトさんの声真似をして、ロゼッタさんが言葉を発する。

 そんなことをしてしまうロゼッタさんに少し心の距離を離してしまうが、その言葉を改めて考えてみることにしてみるが、やはり考えてみてもその言葉の真意がつかめない。


「ほんとにあの人は掴めないっすね」


 なんか、こういうところあいつと似てるんだよなぁ。

 やっぱりあの人物と重なってしまうところがある。

 俺が元の世界に戻るための鍵を握っている人物と。


「そうだね。私が会った時からあんな感じだったから」


「なるほど。まあ、ヤマトさんらにはお礼もしたいんで、一回挨拶ぐらいはしにいこうと思っていたところでちょうどよかったっす」


「君は意外に律儀だね。それでいて、不思議だ。だからかな、ヤマトさんが好きな理由も」


 目をじっと見つめられながら、微笑むロゼッタさん。

 まあヤマトさんも相当不思議ですけどと思ったがその言葉は心の中に留めておいた。

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