表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この物語の最後に僕は死にます  作者: 松浦
第4章「奪還編」
100/143

第99話「選択」

 タイヨウと別れた後、ヨシノが待っている時計台に来た。

 彼女は時計台の近くの宿にいるとヤマトさんが言っていたが、彼女は時計台のすぐ下で誰かを待ちわびているかのようにそわそわとしていた。

 彼女の振る舞いから察するにここでずっと俺のことを待っていたということだろう。

 

「悪い、遅くなった」


「あ、カナタ君!」


 俺を見つけたヨシノは驚愕と愉悦が混じったような顔をしていた。

 ただ俺は顔だけでは彼女がここにいる理由はわからない。

 そのままヨシノ


「どうしたんだ、こんなところまで」


 いつもおっとりしているヨシノだが、今目の前にいるヨシノはいつもと感じが違うにも思える。

 しかし、こうして俺の元まで来たってことは普通じゃない。

 

「それがね、アルさんが帰って来ないの」


「アルが?」

 

 アルがギルドのメンバーに何も言わずに帰って来ないのはどう考えてもあり得ない。

 アルは誰よりも【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】を愛し、誰よりも【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】を知っている。

 メンバーが心配することなどアルは絶対にしない。

 だからこそアルが帰って来ないというのは、ギルドメンバーではない俺から見ても緊急事態と思えてしまう。


「エルゼがアルさんを最後に見たって言ってて、【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】の男とどっかに行ったていうのを見てて、それにエルゼが怒ってそこのギルドに行っちゃって、それをジェットが追っかけて、それでそれで……」


「落ち着け」


 あたふたしているヨシノを制し、一旦息を整えるように促す。

 普段落ち着いているヨシノがここまで取り乱している、つまり【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】にも混乱が生じていることだろう。


「つまり、アルが【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】に攫われたってことか?」


「うん……」


 よりによってこのタイミングか。

 まだ【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】がアルを攫ったと断定するのは早計だとは思うが、何にせよエルゼが冷静さを失っているのが問題だ。

 彼女の頭脳は俺も一目置いているが、このような緊急事態になってしまった時は彼女の思考は停止し周りが何も見えなくなってしまうのが悪い癖。

 年長者であり、本来ならヨシノを引っ張って行く必要がある。

 まあそれも全て普段のジェットが頼りないせいだな。


「他のメンバーはどうしてる?」


「シダレがエルゼと一緒に行って、それをジェットとエドが追っているわ」


「なるほどな……」


 ジェットがいればもしもの事があったとき逃げられることぐらいはできそうだが、今の話を聞く限り冷静さをうしなったエルゼとシダレがいち早く飛び出しそれをジェット達が追っかけている形。

 だとすれば、少し危ない。

 もしアルを攫うという行為を計画的にしたとなれば、【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】のエースであるジェットは間違いなく警戒されているはず。

 馬鹿でければ、それを承知の上で奴らはアルを攫った。

 つまりジェットの戦力は許容しそれに対抗できる手段も持っているというわけだ。

 ただの愉快犯ならばここまでは考えず、ジェットにぶっ倒されて終わりだが七大ギルドの一つがこの行為をしたとすれば話は変わってくる。


「どうするか……」


「ごめんね、私の伝手がないせいでカナタ君を頼ることになっちゃって。 本当は違うギルドの子に頼むなんておかしい事なんだけどね」


 アルは顔伏せてしまった。

 俺に対する申し訳ない気持ちが、頭にのしかかったのだ。


 しかし、俺はネロを連れ戻すというミッションも背負ってしまった。

 簡単にネロを助けない


「悪い、今回は俺もやらなきゃならんことがある」


「そう、だよね。 ごめんね、急に押しかけちゃって。 私のギルドのことは私達で解決しないとダメ、だもんね……」


 ヨシノは笑っていた。

 誰が見ても愛想笑いとわかってしまうぐらいに。

 彼女は最後の希望を俺に託したのだ。

 【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】の精神的支柱であるアルが抜けたのは、彼女達にとってみればかなりのダメージだ。

 アルがいなくなった【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】の会話を考えると、何一つとして議論がまとまらないことは想像に容易い。

 いつもなら凄まじい頭のキレを見せるエルゼ。

 実力で仲間を引っ張っていくジェット。

 

 普段皆をまとめる役を担うエルゼが取り乱してしまえば、【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】のメンバーが慌てふためくのを納得できる。

 本来ならジェットが強く言えばいいだけだが、戦っていないときのあいつは頼りないから無理。


 はあ、初めて会ったときから成長してないではないか。

 ため息とともに、俺はヨシノの目をじっと見つめた。

 

「ごめんね、カナタ君。 それじゃ」


「ヨシノ、準備しとけ。 俺も用事だけ済ませてこっちへ来る、そうだな日が暮れる頃には出るぞ」


「え?」


「悪いな、俺も今立て込んでてな。 すぐに出たいところだが、俺の問題を解決してくる」


「来てくれるってこと!?」

 

「ああ」

 

 ヨシノ霧がかかった暗い顔はすぐに晴れやかになった。

 

 ややこしいことに巻き込まれちまったな。

 【森の妖精(フェアリー・ウッズ)】には恩があるからな。

 恩だけは返さないといけない。

 これは俺の人生の中で大きな教訓だから。


 * * *


「悪い遅くなった」


「ううん、大丈夫!」


 ヨシノも気持ちを切り替えられていたのか、気合十分と言ったところだ。

 タイヨウにもきちんとアルが攫われたことを伝えてきた。

 

「本当に大丈夫だったの? カナタ君他にも問題があるんじゃ……」


「気にすんな。 そっちの問題はなんとかなった」


 ただタイヨウを一人で行かせるわけではない。

 というかあいつ一人では無理、色んな意味で。


 だから俺が信頼できる人物を呼んでおいた。

 あいつに任せておけば心配はいらないだろう。


「行くぞヨシノ。 ここからは魔力全開で行く、そしてそのまま【仮面の道化師(クラウン・ジョーカー)】に乗り込むぞ」

 

「うん!」


 事は一刻を争う。

 できればジェットが力で解決してくれているのが理想だが、現実はそう上手くいかないだろうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ