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今日でもう、3年が経ったのか…。
全体的にクリームのようなベージュカラーで統一された部屋の窓際に立ち、1人の少女はゆっくり窓を開ける。
ふわりと流れ込む暖かな風とともに、腰まである綺麗なハニーブロンドの髪が揺れる。
そして少女は側にある花瓶から綺麗なバラを一本抜き取った。その姿はまるで一枚の完成された絵のようである。
グシャッ。(握りつぶされるバラ)
「さよなら。私の平和な日常」
「お嬢様。そんなに学校に通うのがおいやなのですか…」
部屋に控えていた1人のメイドがバラの花びらを拾いながら続けて小さく呟く。「可哀想なバラ」(ポツリ)
「あーーもうっ!謝ればいいんでしょ!ごめんない部屋を汚して。ごめんねバラの花ーーーっ」
声を張り上げめんどくさそうに謝る少女を見て、黒髪の無表情なメイドは少し口角を上げて微笑む。
「朝はお嬢様のお好きなホットミルクをお待ちしております。もちろんハチミツもご用意しております」
メイドの和やかな雰囲気を感じ気が抜けたように笑いを漏らす。「ふっふふっ」
クスクスとある程度笑い合えると…。
ハニーブロンドの少女はパサっと肩にかかる髪を後ろに払う。そしてサファイアのように輝く青いカリカリの目でキッと気合といれた表情を作ってみせた。
「ありがとう…でも時間がないの。ホットミルクも朝食も結構よ。それより早く制服に着替えて学校に行かなきゃ…奴が来てしまうわ。馬車の準備いそいで」
メイドは全て描き終えると「かしこまりました」と一礼して部屋を出ていった。
さて。皆様お読みいただきありがとうございます。先程からもう美少女みたいに描かれているハニーブロンドヘアーに美しいサファイアのような瞳を持つ伯爵令嬢ティデリア・フォンダンでございます。まっ、実際美少女なのですがね。
ですがそんな私にだって悩みくらいあります。この可愛らしい見た目のせいでそれはもういろんな人に勘違いされまくってますもの。まぁ、それはおいおいねっ。
先程の無表情なメイドはナタリー。私の専属メイドであり護衛も兼ねています。
私についていろいろお話ししたいところですが、今は時間がございませんの。
なぜって?
先程言ってた”奴”が来てしまうからよっ!
忘れもしない…婚約してから留学に行くまでの2年間私を苦しめた私の婚約者アルガー・スフレミア。
奴が来る前に学校に行かなくてはなりませんの!!
なので続きは馬車の中で回想シーンでもやりましょうな。
バタンッ。(閉じる馬車の扉)
「さっ、早く馬車を出してちょうだいっ!ほら!急いで急いでっ」