ホットドッグ
キーボードをひたすら叩いていると、左右の両腕が棒のように疲れ果てていた。
仕方ない。ほぐしながらソファに腰掛けミネラルウオーターで喉を潤した。せっかくスムーズに片付けていたのに。気力はあるが体力は必ずしも心の言うとおりになるわけではない。
小腹が空いた。その辺のスナック菓子で済ませる気分でもなかった。だからと言って出掛けようとは考えず、甘い物も欲しいとは思わなかった。夕食にはまだ早い。
冷たい物よりは、温かい物。適当な、何かないかと台所、冷蔵庫をウロウロしながら探す。とりあえず、一杯のほうじ茶を入れて微妙な空腹に悩む胃袋を温めた。
ソファに寄り掛かり、天井を見上げるもこの中途半端な感覚を消してくれる味覚はと思い付くまま軽食の名前を広告の裏に書き出した。その中に、久しく食べてなかった懐かしい一品があった。そんなに面倒でもないから食べることにした。茹でて、挟んで、掛けるだけ。良い三拍子。
牛乳入りのコーヒーと一緒に味わうのが好きだった。コーヒーは昨日で空になったから今日はイギリス風、ミルクを先に入れた温かい紅茶にした。これもなかなかの組み合わせとなった。
掛けるのは何にしよう。茹であがったらバターロールに挟み、そこへゆっくり掛ける仕上げのひと味。久々に食べるから、せっかくなら二つの味を同時に楽しむとするか。
粒マスタード、トマトケチャップ。豪華満点の色合い。黄色の柔らかい辛さに、赤の酸味とほのかな甘さ。ジューシーな食感をより美味しくしてくれる。バターロールとの相性抜群。ときどき含むミルクティーが全てのバランスを整えた。
調子も良くなったので、再びデスクに向かう。つい楽しくなって作った二つ目を頬張りながら、キーボードを打ち始めた。