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竜の庵の聖語使い  作者: 風結
エーレアリステシアゥナ学園
24/54

食堂  姦姦姦(9人)であるかは未だ不明

「イオリちゃんっ、イオリちゃんはいずこっ!?」


 リムは食堂を見回しますが、愛しの「聖人形(ワヤン・クリ)」の姿は見当たりません。

 食堂でご飯を作ってくれている女性が二人遣って来たので、メイリーンは尋ねました。


「食堂の『おねーさん』、イオリは『悪巧み』に参加中だったりする?」

「そうなのよ。さっき学園長様が来てね、イオリちゃんを連れていったの」


 「おばさん」。

 メイリーンたちからすると、そう呼んで差し支えない周期の女性二人でしたが、そこら辺は心得ています。

 気を良くした「おねーさん」は、デザートに「イオリ玉」を持ってきてくれました。


 ティノ、「悪巧み」を始めるから学園長室までいらっしゃい。


 「聖活動」を終えたあと、どこからともなく学園中にアリスの声が響き渡りました。

 アリスの説明によると、突如流れた彼女の美声は「聖放送」というもので、「聖語」で遠くまで声を届けているとのことでした。


 食堂は、男子寮と女子寮の間にあります。

 七つ音から女子が、そのあとに男子が食べることになっています。


 席は左に四つ、右に四つ、その間を一つの席でつないでいるので、十人座れます。

 それが、十。

 食堂は広く、同時に百人食事することができます。


 意図したものではなく、何となくそうなってしまったのでしょうか、皆は成績順に座っています。

 今周期の女子は8人で、地竜組は3人、炎竜組は5人。


 学園生の中で2番目の成績のフィフェス・ベルマが左奥。

 フィフェスの隣に、6番目の成績のルッシェル・カリマー。

 座っている姿勢からして異なる、この二人が「八創家」。

 最後に、どちらかといえば炎竜組に所属しているほうが似合っている、20番目ーー地竜組最下位の成績のリース・ターナー。


 地竜組の向かいに炎竜組。

 右奥がエイミーで、サーラ、リム、ソニアと続き、上座、ではなく、手前の一つの席にメイリーンが座っています。


 学園生の順位と名前をすべて記憶していたソニアは。

 全員が席につくと、皆の名と順位をいきなり(そら)んじてみせました。

 それが功を奏したのかどうか、始めこそ緊張感が漂いましたが、そこは周期頃の少女たち。

 すぐに他人行儀なところはなくなって話が弾みます。


「美味し~、おばじゃっ!?」

「本当に美味しい! 『おねーさん』たち天才!」


 エイミーが「おばさん」と言おうとしたので、すかさずサーラは彼女の横腹を揉みました。

 周期はエイミーのほうが上なのに、サーラのほうが姉のようです。


 メイリーンは、ソニアを見ました。

 それから、ルッシェル。


 学園での二学周期。

 できれば快適に過ごしたいと思っているメイリーン。

 皆が打ち解けるまでは、この二人に注意すべきだと彼女の勘が告げていました。


「凄いでしょ! って言いたいんだけどねぇ、実はこれ、ほとんどイオリちゃんが作ったのよ」

「そうなの。『おて~、おて~、みんなの、おてつだい~』とイオリちゃんが歌っていたの。でもね、イオリちゃん神! というくらい凄まじい腕前で、あたしたちのほうがイオリちゃんのお手伝いをしていたの」


 元気な「おねーさん」とおっとりとした「おねーさん」。

 その内、エイミー辺りが自爆することになる。

 二人の名前を聞きだしたあとは、名前で呼んだほうが良いとメイリーンは考えました。


 生地の間に潰した肉を挟み、チーズをかけて焼いたもの。

 刺激的なスープに、サラダのソース。

 どれもこれも初めて味わう料理でした。

 何より、その美味しさ。

 この料理が特別なものであることは、「八創家」の二人の笑顔を見れば明らかです。


 「おねーさん」たちの言葉、というか賛辞に、地竜組の面々は驚いていますが、炎竜組のほうはさほど驚いていません。

 絶品の「イオリ玉」。

 イオリが作ったという、あのお菓子を食べた者なら、この料理の味にも納得がいきます。


「『偽イオリ玉』。若しくは『劣化イオリ玉』。その味や如何に」


 いつの間に食べ終えたのか、ソニアは「イオリ玉」に手を伸ばします。

 食べるのが早いと自認しているメイリーンでさえ、まだ半分しか食べていません。

 本当によくわからない。

 悪い奴ではないーーそう思いながらも、メイリーンは警戒を解けないでいます。


 親友になるか悪友になるか。

 そのどちらかになるだろうと、メイリーンの本能が訴えかけてきます。


「教室で『イオリ玉』を食べたんだけど、その『イオリ玉』は特別な材料で作られてたみたいで、これからは『偽』とか『劣化』とか、そんな『イオリ玉』しか食べられないって、学園長が嘆いてた」


 ソニアの説明では言葉が足りていなかったので、メイリーンは補足しました。

 食事の早さと同じく、馬鹿であると自認している彼女ですが、人づき合いは苦手ではありません。

 それから。

 実は、料理が苦手な母親の代わりに台所に立っていたので、料理が得意であると自認もしていたのですが。

 そんな自信は、イオリの料理で木っ端みじんにされてしまいました。


 今頃、家族はちゃんと食べているだろうか。

 短慮な父親は、勢いそのままにメイリーンを学園に放り込んでしまいました。

 初日から、ホームシックになどなっていられません。

 それはそれ、これはこれ、ということで単純なメイリーンは一瞬で切り替えました。


「あら、こんなに美味しいのに、本物の『イオリ玉』は、もっと凄いのですの?」


 興味があったのか、ゆっくりと優雅に食事をしていたルッシェルは。

 「イオリ玉」を食べ、やわらかな微笑みを浮かべました。

 女子の集団でのまとめ役。

 ルッシェルは、そういう「腹黒い」ところがある少女であるとメイリーンは睨んでいます。


「うん、そうなの……、イオリちゃんは美味しかったのよ」

「こらっ、イオリが好きすぎて言葉がおかしくなってるわよ!」


 ちょっと天然なところがあるリムを、教室の男子を一喝した「姉」のサーラが訂正しました。

 班も一緒ということもあって、良いコンビになりそうです。


「地竜組はどんな感じ~、あっ、そうそう、あたしは周期が一番上の『お姉さん』だけど、『エ・イ・ミー』って呼び捨てで呼んでね~」


 「妹」のような「お姉さん」の周期を知って、まじまじとエイミーを見つめる地竜組。

 最初に立ち直ったルッシェルは、まだ話に参加していなかったリースを笑顔で促しました。


「あ、うん、えっとね、地竜組は女の子が三人だから、肩身が狭いんだけど、ベルマさんが2位で男の子を威圧、ってて、そうじゃなくてっ、凛としてるというか凛々しいっていうか、あと、『美人さん』のカリマーさんが男の子たちの好意的な視線を穏やかに薙ぎ払ってるというか、二人のお陰なんだけど、頼り切ってるのが申し訳ないというか……」


 普通の少女。

 それがリースに対し、メイリーンが抱いた第一印象でした。


 「リース」という名は、「聖域」では有り触れた名です。

 それが「普通」さを後押ししてしまっています。

 過去に「八創家」の当主たちがこぞって求婚したという絶世の美女の名が「リース」。

 そんなわけで、親の願望が込められた「リース」は、「聖域」で一番多い女子の名前になりました。


 ーー「アリス」。

 近い将来、もしかしたら「リース」と似た名の「絶世の美女」である「アリス」が、一位の座を奪うことになるかもしれません。


「リースちゃんは地竜組の20番で、あたしが炎竜組の1番~。あたしが地竜組に入ってれば~、4人4人で丁度良かったかもね~?」


 運命の悪戯でしょうか。

 順位が一つ違っただけで、立場がだいぶ変わってしまいました。

 とはいえ、それは現時点でのこと。

 実際に炎竜とでるか氷竜とでるかは、時間が経ってみないとわかりません。


「エイミーが言っていたように、リース、(わたくし)のことも名前で呼んでくださいませ」

「うっ、うん! え~と、ルッシェル、と……、フィフェス?」


 完璧、というよりは、欠点が少なそうな印象の少女。

 フィフェスが怒らないかどうか、上目遣いで彼女を窺うリース。


「ええ、よろしくね、リース」


 真面目で不器用。

 フィフェスの見た目とは異なる性格を、メイリーンは見抜きます。

 フィフェスなりに笑顔を浮かべる(さま)に、皆は好感を抱きました。

 それはリースにも伝わったようで、彼女の雰囲気もやわらかくなります。


「ふぅ~、ごちそうさま。ん~、ルッシェルの肌って綺麗よね。何か秘訣でもあるの? まぁ、あたしはその前に、そばかす消さないとだけど」


 食べ終えたサーラは、ルッシェルに尋ねました。

 肌が一番綺麗なのはソニアですが、彼女のそれは素の綺麗さなので参考にならないと思ったようです。


「ふふ、リースが『美人さん』と褒めてくれましたが、昔、教育係の女性に言われたことがありますの。『ルッシェル様。あなたは美人に二歩足りません。一歩は化粧で誤魔化し、もう一歩は性格で誤魔化しましょう』と、そのようなことを言われたのですわ」


 ルッシェルは食事の手をとめると。

 一度目を閉じ、演技がかった仕草で軽く顔を上げながら目を開きました。


「皆さんとは二学周期、つき合ってゆくことになります。ですので、胸の内を明かそうと思いますの。私は『議会』にーー政治に興味があるのですわ。私は『八創家』の者で、『八創家』に嫁ぐことになります。私が夫に求めるのは、優秀さでも優しさでもなく、寛容さ、ですの。私が政治に係わるのを許してくれる夫を望んでいるのですわ。一番は、私の好き勝手にやらせてくれる、気の弱い夫ですがーー、自身の夫がそのように情けないのも嫌ですので、そこら辺を見極めるのが私のこれからの課題ですの」


 腹黒い。

 メイリーンは、この場でルッシェルが打ち明け話をした理由を察しました。

 今周期と来周期の女生徒を味方につける。

 ただ、その目的はメイリーンの、皆の不利益にはつながらないので、メイリーンは彼女を警戒するのをやめました。


 ルッシェルの一瞥。

 それは彼女を警戒していたメイリーンではなく、ソニアに向けられていました。

 メイリーンと同じく、彼女もソニアを警戒、或いは難敵と思っているようです。


 そんなわけで、メイリーンも便乗することにしました。

 息を吐き、力を抜き、全身に絡まるように「風」を巡らせます。


 ーー殺気。

 一切、加減などしません。

 父親にも褒められたそれを。

 おかわりを食べ終えたソニアに、全身全霊、叩きつけます。


「む。誤解されるけど、そこまで変な女ではない。ただ、何かに集中していると、普通に無視することはある。そこら辺の、理解を推奨」


 メイリーンとルッシェルの行いに気づけなかった皆は、ソニアが唐突に話し始めたので面食らった顔で彼女を見ました。

 ソニアのほうは、そんなことはお構いなしに「イオリ玉」に手を伸ばします。


 不意に、静寂が訪れました。

 心得たルッシェルが、微笑みをフィフェスに向けます。

 今、明かしておいたほうが楽。

 そう促されたので、ルッシェルに向かい、律儀に感謝の一礼をしてから。

 フィフェスは皆に胸襟を開くことに決めました。


「実は、私は少し、男性恐怖症のようなところがあります」

「え、ええ? そんな風には見えなかったけど……」

「リースからそう見えているということは、私の演技は上手くいっているということです。あえて男性にきつく当たることで、恐怖を糊塗(こと)しているのです」


 フィフェスは水を一口、舌を湿らせてから続きを話しました。


「面白い話ではありませんが、聞いてください。父の方針で、私は13歳の頃から、夫候補の男性と面会していました。ーーただ、わかってしまうのです。男性たちは、私ではなく、私に付随する『八創家』を見ていたのです。特に、二十歳を越えていた幾人かの男性。13の小娘に、皆が真剣に迫ってくるのです。私にとって、それは恐怖以外の何物でもありませんでした」

「ん。明らかに作戦失敗。野心は醸さず、優しく接し、面白い話などをして楽しませる。相手に同情し、自身も親の言いつけで仕方なく面会しているーーそんな感じで遣っていれば、初心(うぶ)な娘など楽勝」

「わっと、とっ!?」


 思ってもみなかった方向から言葉が飛んできたので、皆の視線がソニアに集まった瞬間。

 同じくソニアの言葉に驚いた「おねーさん」が、洗っていたお皿を落としそうになったので、皆の視線が忙しく行き交うことになります。


「こんなだから、間々、誤解される。人の関係、特に恋愛事には敏感。(うち)の家系の人間は、そうやって相方を見つけて落としてきた」

「その割には、ティノと上手くいってないように見えるけど……」


 雰囲気がおかしくなってきたので、メイリーンは茶々を入れてみましたが。

 逆にソニアに真剣な表情を向けられ、二の句が継げなくなってしまいます。


「メイリーンはわかっていない。外堀から埋めている暇なんてない。ティノ相手には先ず、明確な意思表示が必要。ティノを見たとき、こう、お腹の内側から、何かきた。これは運命。『地の国』までだって追いかける」


 鬼気迫るソニア。

 不味いと思っていたのはメイリーンだけではなかったようで、サーラは話を逸らそうと試みました。


「そうなると、ソニアの一番の恋敵は学園長ってことになるのかな? 二人は血がつながってないみたいだし……」

「ん。それはない。たぶん、学園長には好きな人がいる。そしてそれは、ティノではない」


 珍しく他人の話を遮ってから、ソニアは断言しました。

 新たな話題に、皆が活気づこうとしたところで、これまた意外な方向から声があがりました。


「あ……」


 口から声が漏れてしまった瞬間、フィフェスは反射的に口を押さえました。

 何か知っている。

 こんな面白そうなこと、ルッシェルが見逃すはずがありません。


「フィフェスは何か、知っているようですわ。そのような面白いこと、独占するのは罪ですの。皆で共有して楽しみましょう」

「……わかりました。皆さんが思っているような話ではないと思いますが、情報提供いたします」


 席の皆、だけでなく、洗い物の手をとめている「おねーさん」たちまで興味津々の目を向けてくるので、フィフェスは早々に抵抗を諦めました。


「エーレアリステシアゥナ。皆さんは、この名称を知っていますよね?」

「ええ、もちろんーーと言いたいところですが、学園の名称となっている以外に、他の意味は知らないのですわ」

「はい。父は、稀覯本(きこうぼん)ーー珍しい書物などを集めるのが趣味なのです。父は、古い書物を読み解く為に、幾人か人を雇っています。その内の、一人の女性と私は仲が良かったので、ときどき昔話などを聞かせてもらっていました。現在、『セレステナ聖地』と呼ばれている場所は、かつて『エーレアリステシアゥナ盆地』と呼ばれていたそうです」


 フィフェスが話をいったん切ると、皆が前のめりになって耳を傾けてきました。

 フィフェスは、このまま答えを言ってしまうつもりだったのですが。

 能力が高い彼女は、急速に同性たちとのつき合い方を学んでいったので。

 ここで趣向を凝らすことにしました。


「皆さんは知っているはずです。この世界には様々な地名がありますが、それらの地名の多くが何に由来しているのかを。学園長は『エーレアリステシアゥナ』という地名を知っていました。私と同じように、書物から知ったのかもしれません。ですが、もう一つーー可能性の話ですが、学園長がその名を知っていた理由があるかもしれません」

「学園長はエーレアリステシアゥナに逢った。だから学園の名称を『エーレアリステシアゥナ学園』にした。それだけでなく、エーレアリステシアゥナーー竜に恋をした」


 フィフェスの話に引き込まれた面々は、ソニアの早々の暴露に崩れ落ちました。

 台無しです。

 空気をぶち壊したソニアは楽し気だったので、メイリーンは彼女を咎めないことにしました。


「確かにねー。あの学園長の相手ってなると、もう竜くらいしかいないって感じだもんねー」

「ん。メイリーンの言うことは尤も。でも、別の可能性もある」

「え? まだ何かって、何?」


 メイリーンだけでなく、皆もソニアの言う「可能性」に思い至っていないようです。

 空気を読まないソニアは、これまでと同じように淡々と述べました。


「竜の知り合いが、学園長ではなく、ティノの可能性。フィフェスと同じように、学園長もティノから話を聞いて竜のことを知ったのかもしれない。でも、そうだったとしても、負けない。相手に不足なし。エーレアリステシアゥナーー相手が竜だったとしても、ティノを勝ち取ってみせる」


 ふんっ、と拳を握って、鼻息。

 ソニアは決意を新たなものとしました。


 残念なのかどうなのか、これはソニアの誤解です。

 ソニアが勝負を挑むべきは、アリスではなくイオラングリディアーー延いてはイオリです。

 とはいえ、情報量が少ないのに、ここまで辿り着くことができたのですからソニアは大したものです。


 よくわからない学園生。

 そう思っていた皆ですが、思っていた以上に感情が豊かで、ついでにぶっとんでいたので、何だか和んでしまいました。


「良い機会ですので、聞いておきましょう。ラン・ティノーーという方は、(せん)ずるところ、男性なのですか女性なのですか?」


 またまた、一石、投げ込まれました。

 意図して、投げ込んだ、とも言えます。

 ルッシェルとしても、ここは重要。

 もしティノが女性であるなら、是非にも取り込んでおきたい相手なのです。


 地竜組の三人は、炎竜組の面々を見回します。

 イオリが居ないことで消沈し、やっとこ食べ終えたリムがサーラを見遣ると、自然と彼女に視線が集まります。


「え? あたしが答えるの? えっと~、本人は男だって言ってたけど、近くで見たら、ほんとヤバかったわ。それに、何かいい匂いもしたし」

「ん。あれは香水ではなく、何かの植物の匂い。それだけでなく、ティノの体から何かでてる。あれを吸っていると、幸せになる」

「あ、そうだったそうだった~。さっきね、ベルゼイに会ったときに色々聞いておいたんだよ~。ティノはね、男子寮の三階の部屋で、三階にはティノしか居ないみたいだよ~。あとあと、ご飯は学園長やイオリやマルと一緒で、ん? ベズ先生も一緒なのかな? あ、一番重要なとこは、男子寮の大風呂は『ティノ禁止』みたいで、学園長のお部屋で入ってるみたいだね~」


 思いだすと同時に、思うまま話してゆくエイミー。

 人のことは言えませんが。

 もう少し、話に脈絡をつけて欲しいとメイリーンは思いました。


「三階に一人。とはいえ、さすがに女性を一人、男子寮に放り込むことは、学園長はなさらないでしょう。となれば、あの方は、ほぼ男性ということで決まりですわね」

「ん~、でもでも~、実際に確かめてみるまでは、ティノちゃんが男の子か女の子かは断定できない感じだよね~。あたしとしては~、イオリちゃんと(おんな)じで、男の子でも女の子でもないのを大希望~」


 エイミーが趣味を暴露した瞬間。

 食堂が微妙な空気に包まれてしまいました。

 そこに、ソニアが更に爆弾を投下します。


「ん。ティノが男か女かは関係ない。どちらでも問題ない。竜より重い愛。どちらでも問題なく愛せる」

「はーい、もう時間だよ! 次は飢えた男子共が遣って来るから、続きは女子寮でやってね!」


 周期の功。

 失礼なことを考えつつ、「おねーさん」が「竜の一撃」を放ってくれたので、メイリーンは真っ先にお盆を持って立ち上がりました。

 彼女の取った行動に、なぜか皆が驚いた視線を向けてきます。

 こちらでも「おねーさん」が助け舟をだしてくれました。


「食器は席に置いていってもいいけど、あっちにある返却口に持ってきてくれると助かるわ」

「そうですわね。これから学園生活の始まりですもの。学園には学園の、ルールというものがあります。ーー皆さん。落とさないように気をつけて持って行きましょう」


 メイリーンからすれば当然のことだったのですが、他の学園生にとってはそうではなかったようです。

 落とさないように、真剣にお盆を運んでゆく女生徒たち。

 笑ってはいけません。

 そう、ここに居る皆、一人一人。

 これまでとは違う、生活が始まるのです。


「む?」

「おっと」


 運動神経は、壊滅。

 椅子の足にぶつかって、転びそうになったソニアを助けながら。

 メイリーンは、勝手に心が弾んでしまうのをとめることができませんでした。

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