王女として、魔女として、騎士として・・・
ティアーナを寝室に寝かせる。
サヴェリオが椅子を用意してくれたので、俺はそれに座りティアーナの手を取る。
ティアーナは、疲れているのかぐっすりと眠っている。
「先ほどの話ですが、ティアーナ様は、フランネル国には基本いますが、フランネル宮殿には、ほとんどいません。」
俺の斜め後ろに立っているサヴェリオは、ティアーナが、一年のほとんどを自身の持っていた船で生活をしていた事を言ってくれた。
「これまで、何度もアジュガ家の養女にという話が、持ち上がっていますが、そのたびにティアーナ様が、断っています。」
何故だ?
俺は、斜め後ろのサヴェリオの方を向き、目で訴える。
「アスターナイトとして、ウェリーネ国にいるより、フランネル国にいる方が、価値があるという理由から断っているのです。」
俺は、ティアーナの方を向く。
「・・・・・。」
切ない・・・そして、いたたまれない程に愛おしい。
握っているティアーナの手にに頬ずりをする。
「どうして・・・そこまでしなくても、ウェリーネ国の養女となってもいいではないか・・・。」
「一時期、フランネル国のアジュガスターの撤退した件で、国民の不安な気持ちがより深いモノになったのが、ティアーナ様の誕生です。」
女神ティアを祀る神殿の窓ガラスが一斉に割れる事件か・・・。
「ティアーナさまは、自身が魔女としての恐怖の象徴となることで、国民の暴動等に発展する事を防ぎ、アスターナイトとしての行動で、国を発展を著しいモノにしたのです。」
サヴェリオは、詳しく調べれば、エルミリアがフランネル国に嫁いでから治安が良くなったのではなく、ティアーナ様がアスターナイトとして活躍しだした頃から、フランネル国の治安等がようくなったのがわかるはずだとも伝えてくれた。
「エルミリア様もアスターナイトとして、宮殿を出て活躍することもございます。」
そうすると、ラフィリアが次期女王として、表側の政務をこなしているということか・・・。
何だろう、不安定な感じにも見えるが・・・バランスがいいというか、役割が出来ている。
そのために、ティアーナは、魔女の象徴としてフランネル王女としているのか・・・。
だか・・・その事、認めたくないな。
「キャンブリックの町での、無残な惨劇はすべて魔女の生まれ変わりのティアーナのせいだと国民は言っていた事に対し、俺は悔しいと思っている。」
あの町に希望を植え付けたのは、その魔女の生まれ変わりと言っている当の本人なのに・・・。
「私も、思っていますよ。」
サヴェリオは歩きながら言う。
「事実を国民に教えてやりたかった。」
「その事実を教えたところで、ティアーナ様は自身が魔女の生まれ変わりだという考えは変えないでしょう。」
サヴェリオは、俺と反対側のベッドサイドに来て、ティアーナの手を握る。
「どうして、そういうのだ?」
「ティアーナ様は、属性魔術を使う際に体に痛みを伴うからです。」
サヴェリオは、ティアーナの属性魔術は今のところ光だと伝えてくれた。
女神ティアの属性。
・・・だが、使うと体に痛みが来る。
「魔女の封印する際に施した魔術を使用していると思っているようです。」
・・・・・。
思考が停止してしまった。
もし、ティアーナが光の属性魔術なら、魔女どころか女神ティアの生まれ変わりと言われてもおかしくない。
でも、使うたびに体に痛みを伴う。
魔女ソフィアラの封印する際に施した光の魔術が変化して、ティアーナが使用しているという事なのか?
光の属性魔術を全て使用してしまったら・・・ティアーナは、どうなってしまうのだ?
それでも俺は・・・。
俺は、椅子から立ち上がり、ティアーナと繋がっている手と逆の手で、ティアーナの頬を触れる。
「サヴェリオ・・・この部屋から出てくれ。」
例え魔女の生まれ変わりだろうと、俺はティアーナの事を想う気持ちはかわらない。
・・・いや、今以上に愛おしいと想うのだろう。
今ですら・・・初めて会った時よりも・・昨日よりも・・愛おしい。
「出来ません。」
”ぎゅーっ”
と、サヴェリオのティアーナの掴む手に力が入る。
「何故だ。」
「聖王陛下であるなら、一番わかっているのではありませんか?」
・・・・・・。
ティアーナの頬に触れていた手が、こぶしを握っていた。
「あなたがしようとしている事は、創世神ゼファーの生まれ変わりという希望を完全に断ち切る行為です。」
サヴェリオは、あからさまではあったが、俺がティアーナを抱こうとしている事に気づいていたようだ。
「今の状態でティアーナ様を抱けば、ティアーナさまは自ら命を絶つでしょう。希望をなくす行為を一番苦しむ方ですよ。」
そうだ・・・人々の希望の為に、邪悪な存在の象徴となっている事も受け入れている。
その希望を断ち切る事をしたら、ティアーナの存在する意味が・・消える。
「ティアーナ様を手に入れたいのはわかります。ティアーナ様以上に魔女と言える行為をしている人など、山ほどいるでしょう。」
ティアーナにあった事もないのに、当然の様に魔女という者。
ティアーナに毒を盛った者。
俺も・・・書類でしか人を見ていなかった。書類の魔人だ。
俺もティアーナ以上に魔女としての行為をしている。
「ですが、それでも手を出してはいけない領分がございます。」
・・・・悔しい。
・・・・悲しい。
・・・・いたたまれない。
こんなにも、清らかで、美しい心を持ったのに・・・。
惹かれてやまないのに・・・。
手に入れてはいけない。
「ティアーナを滅茶苦茶にしたいのにな・・・そうしたら、ティアーナのが・・手に入らないのだな。」
俺はベッドに額を乗せる。
「・・・聖王とは、こんなにも辛い存在なのだな。」
俺は、聖王の重みを知っていると思っていた。
それは驕りだと、今・・・思い知らされた。
「・・・もう、ティアーナを手放せないのにな。」




