ハートの種
「ティアーナ、目を覚ましたか・・・。」
アラディンのホッとした顔が見える。
ここは・・・この使い慣れている布団の感触。
船の・・・元、私の船だったグランドリール号の、それも私の寝室だった場所か。
「お疲れ様。」
そこには、サヴェリオの他に、ブルース叔父様もいた。
「ティアーナ様、ビキューナの品種改良は、見事成功しました。」
「塩分の含まれる空気中でも成長しただけでなく、塩を含んだ土でもしっかり成長をした。」
素晴らしい出来だとブルース叔父様が褒めてくれた。
「ティアーナ様。品種改良したビキューナですが、副産もありました。」
サヴェリオが、ビキューナを剥く。
「中身は俺が貰う。」
と、アラディンがサヴェリオに手を出すと、サヴェリオは素直に中身を渡す。
「う~ん、甘くておいしい。」
早速、口に入れて感想を言ってくれるアラディン。
サヴェリオは、内側の柔らかめの皮と、外側の固めの皮とを分けるように皮を探るように分ける。
そして、そこから取り出した物を私の手の平に置く。
「!?」
桜色のハート形の種が置かれた。
「ビキューナの種です。」
「ティアーナらしいよな。」
キャンブリックの町の、シェニールの木の原木の実の事は聞いている。
原木の木になる実だけがハート形の実だという事を・・・。
「今度のこれは、ずっとこの形の実です。」
サヴェリオが伝えてくれた。
”ツー”
と、涙が出てきた。
そして、涙が実に落ちると、実が成長して苗木に変化する。
3人は、微笑んでいる。
「そうそう、ティアーナ様に伝える事がありました。」
サヴェリオがそう言うと、棚から地図を持ってきた。
スワイベルの町は、実は結構、海岸に近いのですよね。
サヴェリオがスワイベルの町を指さして教えてくれる。
スワイベルの町から林があり、確かに海に近い。
そして、海から見えるこの入り江・・・。
「気が付かれましたか。きっと、林を越えて海から見えるでしょうね。海の先にある造船の町ガラティーアが。」
私は、目を見開きサヴェリオを見た。
サヴェリオは、船乗りの為のビキューナだけでなく、スワイベルの町の為にも、品種改良を進めてくれていた。
そして今、私の手の中には、スワイベルの町から海にかけての、林の木を伐り、その部分にビキューナを植えるにふさわしい苗木がある。
「伐採した木は材木として、ガラティーアの町が買い占めるだろうな。」
アラディンが、私の思っている事を口にしてくれた。
造船に必要な材料である木材。
町を立て直すには打ってつけの物である。
・・・町の復興が、自然と組立っている。
「今すぐ、行かなくては!」
「待った!!」
”ガシッ”
と、ブルース叔父様に腕を掴まれる。
「その役目は、ティアーナの役目ではない。」
スチュアート様たちが、スワイベルの町の解決をしなければ、アスターの力を貸すことは出来ない。
今、私がスワイベルの町へ行き、施しをしてしまえば、アジュガナイトの称号を与えられず力を貸すことが出来ない。
でも、スワイベルの町の復興に適した苗木が今、私の手元にある。
あまりにも、良すぎる出来過ぎた苗木が・・・。
・・・・・・・・。
「スチュアート様が、アジュガナイトでなくても・・・アスターの力が使えなくても・・・私が・・アスターナイトである私が、世界を救えばいい。」
聖王は聖王らしく聖宮殿の中で暮らして、紙の報告書だけで一生過ごしても構わない。
私は、人々の為に動くだけ。
”ウウィーン”
私は、転送魔術の魔法陣が敷かれた部屋へと瞬間移動をする。
ブルース叔父様が腕を掴んだままだったので、一緒に瞬間移動をした。
だが、そんなのはどうでもいい。
私は転送魔術を使い、スワイベルの町の前まで行く。
スワイベルの町へと続く道に転送する。
「行ってはダメだ!!」
”ギューッ”
と、私の腕を掴んでいるブルース叔父様の手に力が入る。
「嫌です!痛いです!!離してください!!」
ブルース叔父様は腕を離してくれなかった。
「痛いです・・・スワイベルの町の人々の方が・・・もっと・・痛いはずです。」
涙がボロボロと零れる。
もう・・キャンブリックの町のような事が起きて欲しくないのに・・・・。
”ピカーーーーーーッ”
と、スワイベルの町の方角が煌々と光り出した。




