表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/39

ハートの種

 「ティアーナ、目を覚ましたか・・・。」

 アラディンのホッとした顔が見える。

 ここは・・・この使い慣れている布団の感触。

 船の・・・元、私の船だったグランドリール号の、それも私の寝室だった場所か。

 「お疲れ様。」

 そこには、サヴェリオの他に、ブルース叔父様もいた。

 「ティアーナ様、ビキューナの品種改良は、見事成功しました。」

 「塩分の含まれる空気中でも成長しただけでなく、塩を含んだ土でもしっかり成長をした。」

 素晴らしい出来だとブルース叔父様が褒めてくれた。

 「ティアーナ様。品種改良したビキューナですが、副産もありました。」

 サヴェリオが、ビキューナを剥く。

 「中身は俺が貰う。」

と、アラディンがサヴェリオに手を出すと、サヴェリオは素直に中身を渡す。

 「う~ん、甘くておいしい。」

 早速、口に入れて感想を言ってくれるアラディン。

 サヴェリオは、内側の柔らかめの皮と、外側の固めの皮とを分けるように皮を探るように分ける。

 そして、そこから取り出した物を私の手の平に置く。

 「!?」

 桜色のハート形の種が置かれた。

 「ビキューナの種です。」

 「ティアーナらしいよな。」

 キャンブリックの町の、シェニールの木の原木の実の事は聞いている。

 原木の木になる実だけがハート形の実だという事を・・・。

 「今度のこれは、ずっとこの形の実です。」

 サヴェリオが伝えてくれた。

 ”ツー”

と、涙が出てきた。

 そして、涙が実に落ちると、実が成長して苗木に変化する。

 3人は、微笑んでいる。

 「そうそう、ティアーナ様に伝える事がありました。」

 サヴェリオがそう言うと、棚から地図を持ってきた。

 スワイベルの町は、実は結構、海岸に近いのですよね。

 サヴェリオがスワイベルの町を指さして教えてくれる。

 スワイベルの町から林があり、確かに海に近い。

 そして、海から見えるこの入り江・・・。

 「気が付かれましたか。きっと、林を越えて海から見えるでしょうね。海の先にある造船の町ガラティーアが。」

 私は、目を見開きサヴェリオを見た。

 サヴェリオは、船乗りの為のビキューナだけでなく、スワイベルの町の為にも、品種改良を進めてくれていた。

 そして今、私の手の中には、スワイベルの町から海にかけての、林の木を伐り、その部分にビキューナを植えるにふさわしい苗木がある。

 「伐採した木は材木として、ガラティーアの町が買い占めるだろうな。」

 アラディンが、私の思っている事を口にしてくれた。

 造船に必要な材料である木材。

 町を立て直すには打ってつけの物である。

 ・・・町の復興が、自然と組立っている。

 「今すぐ、行かなくては!」

 「待った!!」

 ”ガシッ”

と、ブルース叔父様に腕を掴まれる。

 「その役目は、ティアーナの役目ではない。」

 スチュアート様たちが、スワイベルの町の解決をしなければ、アスターの力を貸すことは出来ない。

 今、私がスワイベルの町へ行き、施しをしてしまえば、アジュガナイトの称号を与えられず力を貸すことが出来ない。

 でも、スワイベルの町の復興に適した苗木が今、私の手元にある。

 あまりにも、良すぎる出来過ぎた苗木が・・・。

 ・・・・・・・・。

 「スチュアート様が、アジュガナイトでなくても・・・アスターの力が使えなくても・・・私が・・アスターナイトである私が、世界を救えばいい。」

 聖王は聖王らしく聖宮殿の中で暮らして、紙の報告書だけで一生過ごしても構わない。

 私は、人々の為に動くだけ。

 ”ウウィーン”

 私は、転送魔術の魔法陣が敷かれた部屋へと瞬間移動をする。

 ブルース叔父様が腕を掴んだままだったので、一緒に瞬間移動をした。

 だが、そんなのはどうでもいい。

 私は転送魔術を使い、スワイベルの町の前まで行く。

 スワイベルの町へと続く道に転送する。

 「行ってはダメだ!!」

 ”ギューッ”

と、私の腕を掴んでいるブルース叔父様の手に力が入る。

 「嫌です!痛いです!!離してください!!」

 ブルース叔父様は腕を離してくれなかった。

 「痛いです・・・スワイベルの町の人々の方が・・・もっと・・痛いはずです。」

 涙がボロボロと零れる。

 もう・・キャンブリックの町のような事が起きて欲しくないのに・・・・。

 ”ピカーーーーーーッ”

と、スワイベルの町の方角が煌々と光り出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ