植物の選択
遅くなりました。
「海の薔薇と呼ばれているリンターを掛け合わせるとは・・・なるほど。」
サヴェリオが持ってきた資料には、ビキューナの新たな品種を創る上での、掛け合わせるべき植物のリストが乗っていた。
それにしても、素晴らしい出来の内容なのです。
「どうして、これまでこのような掛け合わせをしなかったのか不思議だわ。」
そう思うほどに立派な出来なのよね。
リンターという海の植物は、過去に薔薇と昆布を掛け合わせた品種で、このリンターという植物は、通常の海藻よりも酸味が強く、出汁として使う事は適さない問題点がある。
なので、ゆで汁を捨ててから、煮物として使っている。
リンターの姿煮である。
なので、このままビキューナとリンターだけを掛け合わせると、酸味の塊のような味になる確率が高い。
そこを、なんと砂糖の原料であるサトウキビと甜菜も掛け合わせることで甘みを出そうとしている。
片方だけにしないのは、サトウキビが暖かい地方で採れる植物、甜菜は寒い地方で採れる植物なので、気候変動にも適した植物を創作しようとしている経緯が見受けられるところである。
ただ、この2つの植物はサトウキビは茎から、甜菜は根から砂糖を取るため、実ではない。
故に実の植物を掛け合わせる必要が出て来る。
そこで出てくるのが実の植物なのだが、通常の薔薇を掛け合わせている。
薔薇の果実は、ローズヒップと呼ばれビタミンCが豊富であり、船乗りに必要な成分がたくさん含まれている。
リンターも薔薇と掛け合わせで出来ているため、ビタミンCの豊富な果実が取れるだろう。
では・・何故、シェニールを掛け合わせるのだろうか?
「どうして、シェニールを掛け合わせるのかしら?」
私は、サヴェリオに聞いてみる。
「薔薇は地下に茎をのばして生息する植物です。それと甜菜の根も掛け合わせる事になります。」
根が強いのは強風に耐えられる木が出来ていいのだが・・・。
「船に穴を開ける心配が出て来るわね。」
「ですから、果樹の実が必要となるのですよ。」
サヴェリオは説明をしてくれたが・・・どうしてシェニールになる。
私が、シェニールを特別視しているからか?
・・・気にしすぎている?
「ビキューナは、厚手の皮を持っていますので、わざわざ皮のある果実を掛け合わせるより、皮のない果実を掛け合わせた方がよろしいかと思いますが。」
サヴェリオが、私の考えが分かったらしく、説明をしてくれた。
なるほど・・・確かにサヴェリオのいう通りだわ。
皮をこれ以上厚くしなくてもいいわね。
「これで、やりましょう。」
そう言い、椅子から立ち上がる。
「よろしくお願いします。」
と、サヴェリオが丁寧にお辞儀をしてきた。
「えっと、サヴェリオが掛け合わせをしないの?」
「植物の掛け合わせに適した属性は、地の属性です。私には無理でしょう。」
・・・・植物の掛け合わせは、特級レベルの魔術と高度な技術・・・それから精霊の加護が必要だ。
サヴェリオは高度な技術に関しては、この中では一番だろう。
「アラディン様は、火の属性に頼りすぎて、ボヤ騒ぎを起こしましたので論外です。」
「アハハハッ」
アラディンは、照れくさそうに笑っていた。
「私に高度な技術を求めるの?」
「それも、無理だよな~。」
アラディンが、私の思っている事を代弁してくれた。
「それに、関してはご安心ください。」
サヴェリオが奥の部屋から丸まったカーペットを持ってきて、私の目の前で広げる。
「地の精霊の加護を受けやすい造りの文様が施されたカーペットに、プラスで刺繍を縫った特別仕様の物を用意しました。」
サヴェリオが胸ポケットから何かを取り出す。
まだ、何かありそうだ。
取り出した紙を広げて、私に見えるように紙を向けてくれた。
聖なる湖エルバート湖の船の停泊許可証だった。
「な・・何て物を許可して貰ったのよ。」
通常エルバート湖に、通常は船の停泊は出来ない。
聖宮殿に何らかの攻撃を仕掛けるのではないかというテロを察しての事で、船の停泊には審査等が必要となる。
つまり、審査に通って許可を貰ったのだ。
「アスターナイトの権力を行使させていただきました。」
・・・なるほどね。
エルバート湖の上空に聖宮殿が浮いているから、精霊の加護が通常よりも受けやすい場所である。
「でも、アラディンがボヤをしているから、すぐにも許可が取り消されるのでは?」
「ボヤ騒ぎをしたのは、ウェリーネ宮殿のアラディン様の自室ですか安心してください」
うわ・・・宮殿の方たちが大変だったわね。
迷惑な王子というか・・・馬鹿王子?
何とも、アラディンらしい行動ね・・・。




