木々の中の教会
キャンブリックの町はシリス山の麓にある町。
シリス山の向こうは側はエストラーラ国となるので、国境の町でもあった。
キャンブリックの町に入った。
子供たちの楽しそうに追いかけっこをしている声が聞こえる。
大人たちの近所の井戸端会議の声。
商人たちの嬉しそうな声が聞こえる。
活気にあふれた町に見えた。
この町に悲劇があったとは思えないのだが・・・。
”スタスタスタ”
と、カミーユが井戸端会議をしている女性陣の方へと進む。
「いきなり声をかけて申し訳ございません、お嬢さん方。」
お、お嬢さんですか・・・、年齢的には見えなくもないが・・・。
若くても・・・オバサン的な感じがするのだ。
『新婚なのにいけないわ』と、いう小声が聞こえたの原因だろう。
女性の方々は・・・お嬢さんと言う言葉と、カミーユの大人の色家に、女性たちは色めきだっている。
「この町は、いたるところにシェニールの木が植えられているのですね。」
山に近いところに、シェニールの木がたくさん植えられているが、各家庭にも一本は必ずと言っていいほど植えられていた。
「それは、キャンブリックにとって、シェニールは『恵みの木』ですものね。」
女性たちは互いに顔を見合わせ頷く。
「『恵みの木』と、言われているのに、キャンブリック産のシェニールのジャムの.商品名が『キャンブリックの涙』とか・・『希望の涙』とか・・悲しいイメージの名前なのですね。」
カミーユは、露店に並べらえている商品を指さす。
「あら、知らないのですね。」
「そうなんですよ。ですから、詳しく知っている人を探していまして・・。」
と、カミーユが言うと、女性たちはシェニールの木がたくさん植えられている中にある教会にいる牧師が知っている事を教えてくれた。
俺らは、女性たちの言っていたシェニールの木がたくさん植えられている中にある教会へと向かう。
と、言っても道をただまっすぐ進むだけなのだが。
少し歩くと、ガラス張りの建物を見つける。
中にはたくさんのシェニールの木が植えられている。
「一年中収穫が出来るようにハウス栽培もしているんだな。」
「そのようですね。加工工場も先ほどありましたし、本当にこの町は活気にあふれていますね。」
ケネスは歩きながら答えてくれた。
シェニールの木がたくさん植えられている場所へと入っていく。
今はシェニールの収穫時期で、甘い香りが漂っていた。
少し歩くと女性たちの言っていた教会が見える。
教会の前まで行くと、一本のシェニールの木に柵がしてあった。
「なんで、これだけ柵がしてあるんだ?」
カミーユの言う通りに、この木だけに柵がしてある。
「実を見てください。」
ケネスのいう通りに柵の中の実を見る。
二つの実が繋がっていてハートのような形になっている。
それも全ての実で・・・。
「その木は、始まりの木です。」
と、近くで男の人の声がする。
俺らは声の方へと振り向くと、20歳ぐらいのローブを着た男性がたっていた。
「いきなりお声をかけて申し訳ない。私はモリス・メディニラと申します。」
シェニールの木々の中にある教会を指さし、その教会の牧師をしている事を言ってくれた。
先ほどの女性たちが言っていた牧師のことだ。
俺は、スティーブン・ローダンセと名乗ると、カミーユも、ケネスも、もう一つの名前をモリス牧師に伝える。
「始まりの木とはどういう意味なのでしょうか?」
「キャンブリックにある全てのシェニールの木の母となる木だからです。」
ケネスの質問にモリスは、始まりの木を愛おしそうに眺めながら答えた。
「母となる木なら、どうして全てのシェニールの木が、この木の様に2つの実がくっつかないのですか?」
「それは、わかりません・・・ですが、あの子の思いが形になったと私は思っています。」
カミーユの質問に答えになっていない事を言った。
あの子って誰の事だ?
モリス牧師は、教会の中でお話しましょうと俺らを案内してくれた。
”カチャッ”
教会の礼拝堂の扉が開かれる。
優しい光が礼拝堂の中を照らしていた。
正面のアーチ型の枠内にステントグラスで描かれているモノを見て、瞬きを忘れる程驚く。
そこには、黒髪の少女が苗木を高らかと上げ、涙を流している姿が描かれていた。
アーチ型の枠内の上に円形のステンドグラスには、ハート形にのシェニールの実が描かれていた。
「正面だけでなく、両サイドの窓ガラスも見て見ろ。」
と、カミーユが言って来たので見てみる。
正面に近い窓ガラスには、大地に涙が落ちる絵柄が描かれていた。
その隣には、大地に芽が芽吹き。
次に、出入り口に近い窓は、芽が木にまで成長。
その隣から出入り口に一番近い所までの窓ガラスには木に実がなってる柄が描かれていた。
苗木も持って泣いている黒髪の少女はきっと、ティアーナだ。
何が起きたのだ?
「これは、いつ頃の出来事なのですか?」
実際、何が起きたのかモリス牧師に聞いてみる。
「ここに描かれているモノは、今から11年前の出来事です。」
11年前だと・・・ティアーナが5歳の時だぞ。
本当にティアーナなのか?
「あの少女に会ったのですか?」
モリス牧師に聞くと、この出来事を見た張本人だと言った。
「何歳ぐらいの少女だったのですか?」
「10歳にも満たなく・・・だいたいと言われましたら・・・6歳ぐらいだと思います。」
ほぼ、ティアーナだな。
「フランネル国に、ティアーナという魔女の生まれ変わりを王家に誕生させてしまった事で、そのツケをこの町が払う事になったのです。」
おい、待て!
ティアーナが、何をしたと言うのだ?
モリス牧師は、あの少女がティアーナだと知っているのか?
知らないはずだ・・・もし知っていたら、年齢が5歳だとわかるはずだ。
では・・これは・・・・。
「ティアーナ姫のせいだと決めつけるのは、良くありませんね。」
カミーユが俺の考えを口にしてくれた。
だが、モリス牧師は、皆がそのように思っている事を告げた。
・・・・最悪だ。
ティアーナがこの町を救ったのに、災厄をもたらしたと思われているのだから・・・。
これが、キャンブリックの悲劇という事なのか?




