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密偵への一歩

 聖王であるスチュアート様の聖なる魔術が植物の苗を成長させる。

 木に白い花が咲き、すぐに散ってしまうも、棒状の実が房の様に現れる。

実の色は柔らかい黄赤色。

 実が出来ると、スチュアート様は魔術をやめる。

 そして、実を取り皮を剥いで、中の果実を食べる。

 「うん、美味しい。ティアーナが品種改良したビキューナの実は・・・。」

 スチュアート様は、ウエストポーチから、ビキューナの実をだす。

 「スワイベルの町に植えた俺が改良したビキューナの実だ。」

 スチュアート様は、その実の皮を剥き、私の前にだす。

 「ティアーナに食べて欲しい・・・さあ。」

 スチュアート様の手の中のビキューナの果実を口に含む。

 そして、咀嚼する。

 ”ポタ・・ポタ・・・”

と、涙が出てきた。

 「・・・美味しいです。」

 甘酸っぱい味。船乗りの恵みの実であるビキューナの実。

 「すまなかったティアーナ。辛かった過去を思い出させてしまって・・・。」

 顔を伏していた私の頭にスチュアート様は手を乗せ撫でる。

 「でも、ありがとう。俺に道を示してくれて・・・。」

 私は首を左右に振る。

 「いいえ、私は何もしていません。スチュアート様が自ら導いたのですから・・・。」


 こうして、アジュガスターからの情報が手に入る事になったのだが・・・。


 こうなるまでには、それなりの道のりがあった。



 〇 〇 〇 〇 〇 〇


 ゼファー聖王国ビュールの町

 真新しいアジュガスターの紋章が店のショーウィンドウから見える。

 ショーウィンドウのディスプレーに飾られているのは、ドレスにアクセサリーであった。

 『ファッションドレス スグリ』

 一か月後の開店となっている店。

 ディスプレーに飾られているドレス一式に、人々が立ち止まり見つめていた。

 どうやら、センスのよい店として噂が広まりそうな雰囲気である。


 私は、地下3階の部屋に到達した。

 転送魔術で、ゼファラン聖宮殿からここに来た。

 ”シャーシャーシャー”

と、水車の音が聞こえる。

 本来なら洗濯機を設置するはずの場所が、転送魔術の陣が描かれていた。

 「こちらです。」

 私は、一緒に転送魔術ここまで来たスチュアート様とカミーユ様、それにケネスさんとオルガを案内する。

 階段を昇り地下1階に来る。

 部屋の扉に『赤』『オレンジ』『黄色』『緑』『青』『紫』『白』『黒』と、札が張られていた。

 服を色ごとに分けているのね。

 『防具』と書かれている部屋もその奥にあり、その部屋の横を通り過ぎていく。

 そして、何も書かれていない扉を開けようと近づく。

 ”カチャッ”

と、勝手に扉が開く。

 「ようこそ、おいでくださいました。」

 扉を開けたのはナターシャで、笑顔で向かい入れてくれた。

 ナターシャの案内で、地上一階のリビングに来る。

 部屋にまだ、開いていない木箱が数箱ほど置かれいた。

 「引っ越しの片付けがまだ終わっていないので、見苦しいモノを見せておりますが、ご容赦ください。」

 私たちは別に構わないと言った。

 椅子に座り少しするとお茶を出される。

 そして、ナターシャも椅子に座る。

 「皆さまが来ることは、アンナ様からの書状で存じていました。防具などの準備はこちらでさせていただきます。」

 「ありがとう助かるわナターシャ。」

 私は、ナターシャにお礼を言う。

 「ティアーナ、アンナとは?」

 スチュアート様が聞いて来たので、私はウェリーネ国の宮廷占星術師と答えた。

 「占星術など、自ら行えばいいのに、どうしてわざわざ占星術師を雇うのですか?」

 ケネスさんが質問をしてくる。

 まあ、通常なら宮廷魔術士であるなら占星術も出来る。

 だけど、アンナ・マーガレットという占星術師。占星術は優れている。

 「命中率が高い事と、予知も多少できます。」

 私が、ナターシャのところに来ることを予知したのだろうと、私は伝えた。

 「そのおかげで、ティアーナ様方がお使いになる商品を先に片付ける事にしたのです。」

 もし、アンナの予知がなかったら、私たちの準備が出来ずに、一晩かかる事になっていた事もナターシャは言った。

 まあ、つまり、自分たちの生活に必要な事を後回しにして、商品を先に整理したという事ですね。

 「ありがとうナターシャ。迷惑かけるわね。」

 ナターシャは笑顔で構わないと言ってくれた。

 「だったら宮廷魔術師として雇うべきでは?」

 ケネスさんがまだ、アンナの事で聞いて来た。

 「宮廷魔術師には年齢制限があるはずです。」

 宮廷魔術師は、時に軍のサポートとして付く事がある。

 その為、年齢制限がある。

 「アンナは、雇った当初から杖をついている老婆だったと伺っています。」

 ウェリーネ国にとってアンナの予知は本当に役に立っている。

 アスターとして、王族が宮殿を出ていいのか占ったり、宮殿に要人が来ると予知すれば、すぐに手紙をよこして対応してくれたりと、アスターとして国を安心して見て回れるのはアンナのおかげでもある。

 「それと、ブルース様から手紙を預かっています。」

 ナターシャは、5センチほどの長さの筒状の物を私に渡す。

 小さな筒状の手紙は、緊急を表すことが多い。

 私は、その手紙を開ける。

 「くすっ・・・助かりましたわ。」

 私は、ブルース叔父様の手紙を見て、悩み事が一つ解決をした。

 「ブルースはどのような手紙をよこしたのだ?」

 スチュアート様が聞いて来たので、その手紙を渡す。

 「なるほど・・・ケネス、お前はケヴィン・ガウラと名乗るように。カミーユは、カルロス・ローダンセ。」

 カミーユ様は、スチュアート様の名前を聞く。

 そう、ケヴィン・ガウラにカルロス・ローダンセという名は、密偵時の名である。

 ブルース叔父様が用意をしてくれていた。

 「スティーブン・ローダンセだ。」

 スチュアート様は、手に持っている手紙をカミーユ様に渡す。

 「うん・・・どうやらカルロスとスティーブンは親子という設定のようだ。」

 スチュアート様は、鼻で笑って了承した。

 こうして、密偵の服装に着替える事になった。

 因みに、オッドアイであるスチュアート様は、眼帯で金色の瞳の方を隠して貰った。

 そして、オルガはお留守番だった。

 「ティアーナ様の侍女としての教育を是非私の手でさせてください。」

と、ナターシャが言って来たからだ。

 着替え終えてから、再び地下3階の水車の内側の部屋へと行く。

 「ブルース叔父様が、スワイベルの町を解決するように仰せつかったので、近くまで行ったことがありますので、そこまで転送をします。」

 スチュアート様はメリノ橋の事をでしてきた。

 「アンナの占星術から、まだ温めておくようにと言われています。解決の時ではないようです。」

 私は、メリノ橋の事を伝える。

 「ティアーナ様、大丈夫ですか?」

 心配そうに私を見つめるナターシャ。

 「ありがとう・・・大丈夫よ。元々行くべき場所おと思って、近くまで行ってたのだから・・・。」

 私は、苦笑いをナターシャに見せる。

 そして、転送魔術を使った。


 「ここは?」

 カミーユ様が辺りを見回しながら言う。

 森の街道の分かれ道の端に、到着をしたのだ。

 細い道の方へ少し進む。

 「こちらの先にスワイベルの町があります。方角から言って南東にある町です。」

 先ほどの広い道は、聖宮殿のサラサの門へ続く道と、サラサ国へ続く道をなっている事を付け加えた。

 「スワイベルの町に何があるのだ?」

 「それは・・・・。」

 私は翳りを帯びた感じで言葉を濁す。

 ”ヴウィーン”

を、私の背中から風を感じるとすぐに、後ろから片腕で抱きしめられる。

 「始めまして聖王様・・・そして、さようなら」

 ”ヴウィーンッ”

と、瞬間移動の魔術で、スチュアート様の前から連れ去られてしまった。

ビキューナの実・・・アプリコット色のバナナの形をしたオレンジ。

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