早朝の散歩
私は東屋にいた。
スチュアート様が特等席と言っていた場所に座り、スチュアート様たちを待っている。
オルガも一緒に付きそうそうに来て貰っている。
昨夜、守護の精霊術をかけた後、服を片っ端から見たが、フランネルから持ってきた服は、全て縫い糸が途中途中で切られていた。
フランネル国の宮殿の使用人は相当暇なようです。
お姉さまの後宮入りの準備があると言うのに、わざわざ魔女の生まれ変わりと言われている私の服の縫い糸を切るという面倒な時間を費やしているのですから・・・。
なので、私が今着ている服はウェリーネ国で用意してくれた服を着てます。
薄ピンクのシンプルなワンピースと言った方が正しいようなギャザーがたっぷり施されたドレス。
風が吹くと、スカートがフワッと広がる服。
何となく部屋着使用の物と思われるが、遠慮なく着させていただいている。
なにせ、服の数が少ないですから。
「ティアーナ」
スチュアート様が来たようです。
スチュアート様に、カミーユ様と側近のケネスさん、それと使用人が数人ついてきていた。
使用人の数人は、荷物を持っていた。
私は立ち上がり丁寧にあいさつをする。
「来てくれてうれしい。」
ホッとした顔でスチュアート様は私に言った。
「会えたのです、スチュアート様、これでもういいでしょう帰りましょう。」
「ケネス!!」
ケネスさんの言葉に、カミーユ様が怒鳴る。
どうやら側近のケネスさんは、私の事を相当嫌っているようだ。
ここまであからさまに嫌うとは・・・。
聖王の側近として困ったモノだわ。
「ティアーナ。東屋で朝食にするから、準備中庭で散歩しながら話をしよう。」
と、スチュアート様がそのように言い、手を差し伸べた。
エスコートされなくては歩けない訳ではありませんが・・・エスコートを断る事はマナー違反なのですよね。
パシーンッとその手を振り払いたいのですが、無理なようです。
私は、スチュアート様の手に自分の手を添える。
スチュアート様に手を握らて庭を歩きだす。
私たちの後ろには、カミーユ様、ケネスさんとオリガがついて来ていた。
「ティアーナ、俺がアスターの姓を名乗り地上へ降りようと思うのだがどう思う?」
「アスターの姓を名乗るのはやめた方がいいでしょう。」
私は、アスターの姓を名乗ればウェリーネ国のサポートが受けられなくなることを伝える。
「現在アスターの姓を名乗れるのは5人。ウェリーネ国王一家の3人と、母と私だけです。」
ウェリーネ国王のブルース様。
王妃のマルヴィナ様。
王太子のアラディン。
フランネル国女王のエルミリア
そして・・・私の計5人。
「ラフィリアは、アスターの姓は与えられていないのか?」
「姉は、アスターの事を知りません。」
私は、たまたまアスターナイトの称号を貰ったことを伝える。
「本来、アジュガ王家の姫は、嫁ぐ際にアスターの一切を封印し、アスターの秘密と共に墓場まで持って行くのが掟です。」
元ウェリーネ国王女のエルミリアは、フランネルに嫁ぐ際にアスターの一切を封印したはずだが、掟を破りアスターナイトとしての活動をしてしまった。
「掟を破りの制裁は?」
カミーユ様が興味を持ったらしく聞いて来た。
「『アジュガスター』という紋章をご存じですか?」
「アジュガ王家が認める有望な店。」
王家御用達とはまた別に、王家御用達候補の店に贈られる紋章。
世界中にその紋章の店が存在している。
「そういえば・・・エルミリア女王がフランネルに嫁いでから数年後に、アジュガスターの紋章の店がフランネルから撤退したという噂が出回っていたな・・・。」
「噂ではなく、事実です。」
アジュガスターは、アスターナイトに提供する情報屋の役割も兼ね備えている。
つまり、フランネル国から撤退という事は、情報が入てきにくくなるということ。
「フランネルに情報が入りにくくなったことで起きた事件・・・。」
私は、その事件の事を思いだし、顔を曇らせる。
「その事件の処理を私がしたことで、母と私がアスターの姓を名乗る事を特例で許されたのです。」
姉のラフィリアは、その事件の事も知らない。
たまたま私の耳に入り・・・ショックを受け・・・いてもたってもいられず・・・衝動的に動いた行動。
反射的に動いたと言ってもいい。
「私を介してアスターの力を使うのをお勧めします。」
アスターの力を借りるには、絶対にアスターの姓を名乗ってはいけない事を伝える。
「ですから、どうか私を後宮から出してください。」
”グッ”
と、私の手を握るスチュアート様の手に力が入る。
だが、伝えなくてはならない。
・・・・世の中の為に。
何より、私の庶民ライフの為に・・・。
「後宮に閉じ込められては、アスターの力を貸す事が出来ません。それが世の中の為になるとは思いません。」
私は再度、後宮から出して欲しいとお願いする。
「ぜひ、そうしましょう。スチュアート様。」
と、嬉しそうにケネスさんが言ってきた。
私もそうなった方が嬉しい。
「ティアーナ姫の考えも理解できるが、魔女の生まれ変わりと言われている者も従える事が出来る事実も世の中には必要かと。」
カミーユ様の言葉に、私が後宮入り出来たその理由が解った。
確かに、今の世の中、特級レベルの魔術士が少ない。
そのような中で、魔女の生まれ変わりと言われている私を主従の関係が出来たのなら、世の中の安寧には役に立つ。
なら、私のすべきことは・・・。
私は、その場で片膝立ちをする。
そして、握っているスチュアート様の手の甲にキスをする。
「聖王に敬意を称します。どうか・・」
”グイッ”
「うわっ!」
スチュアート様は私の手をいきなり引き上げる。
「朝食の準備ができたようだ。」
いや、朝食よりも・・誓いでしょう。
「ローレル王朝で、女性にナイトの称号を持ってる者はいない。だから、ティアーナ姫の事悪いようにはしないから、こちらで考えさせてくほしい。」
カミーユ様が一言伝えてきた。
つい、先ほどスチュアート様の手の甲にキスをした行為は、ナイトの授与式の行動。
そのようにするのが良いと思い、なんとなくやってみた。
予行練習みたいに。
後、必要なのは、肩に置かれた剣ってところかしらね。
最後まで、ナイトの誓いの言葉は言わしてはくれなかったけど・・。
私がローレルナイトにでもなったら、全て解決知るような気がするけどな・・・・。




