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ゼファーの生まれ変わりだから・・・

 「8つ目の棟に守護の術を施しに行く。」

 俺は、立ち上がり部屋を出る。

 その後ろをカミーユがついて来る。

 「おいおい、どこへ行くのだ?」

 後宮へ入る橋の方へ向かおうとすると、カミーユに止められる。

 「正面切って8つ目の棟へ行けば、後宮の者たちに攻撃されるのはティアーナ姫だろう。」

 「だが、俺が堂々と守護の術を施せば、危害を加えようとは思わないはずだ。」

 俺の言葉にカミーユはため息をつく。

 「表面上はしなくなるだろうよ。だが裏ではものすごい数の攻撃をしかけてくるだろう。」

 ”ドーーンッ キラキラキラ”

と、花火が夜空を輝かしていた。

 今日の後宮入りのパーティーはお開きになったのだが、まだ花火が上空を彩っている。

 ティアーナの精霊術は凄いな。

 相当、精霊に気に入られている。


 「こんなに精霊に気に入られているティアーナが、本当に魔女の生まれ変わりなのだろうか?」

 俺は、ボソッと言葉にだす。

 「なあ、そもそもお前がゼファーの生まれ変わりなのは事実なのか?」

 「知るかよ。」

 「それが答えだよ。」

 俺が、ゼファーの生まれ変わりと言われているだけで事実が不明である。

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

 ゼファーであった記憶など全くないからな。

 ゼファーと同じ金色と緑色のオッドアイとして生まれただけだ。

 聖王としての威厳にいいように利用しているだけだ。

 それが事実。


 それは、ティアーナにも言える事だな。


 そして、俺はティアーナが魔女の生まれ変わりとは思えないと感じている。

 それもまた事実だ。

 そのことをカミーユに伝える。

 「そうだよな。」

 カミーユもティアーナが魔女の生まれ変わりとは思っていないようだ。

 「彼女は、本当に素晴らしい精霊術の使い手だよ。」

 そう言い『こっちだ。』と、カミーユが案内をしてくれた。

 川の向こう側、木々に囲まれた8つ目の棟が見える。

 「な、何だアレは・・・。」

 8つ目の棟の周りにほのかに光る透明な柱が何本も現れる。

 俺は、魔術で川を飛び越え、急ぎその場所に向かう。

 何本もそびえ立つ柱の内側の地面は、キラキラと光っている。

 キラキラ光る地面を一層輝く光の線が現れる。

 精霊の文様

 精霊の加護が施された文様が地面に描いているのだ。

 「通常は刺繍糸で施す物を、別物で地面に施しているな。」

 カミーユはあたりを見回しながら言ってくる。

 「ああ、大きな一つの岩を砕き土の精霊に助けられながら地面の中に精霊の文様を施している。」

 そんなことも出来るとは・・・。

 光が薄れていいく、仄かに光る透明な柱も、地面のキラキラも、地面に一層輝く精霊の文様も消えると、夜空の花火も消えた。

 俺は、身震いをする。

 地面の精霊文様の力だけでなく、空を飛ぶ精霊も、一瞬で8つ目の棟を守護する守りに力を貸したのだ。

 この鉄壁の精霊術で8つ目の棟は、外からの攻撃に相当な守りを手に入れたのだ。


 「俺の・・・出る幕がなかった。」

 「そうだね・・・でも、そうなると・・・これからどうするのだ?」

 カミーユの質問に悩む俺だった。

 俺が、この術を使って、ティアーナに安心させないとならないのに、使われてしまった事。

 俺がしなくてはならないことは・・・。

 8つ目の棟へ近づく。


  「誰っ!」

と、ティアーナは俺に気づく。

 「ティアーナ。」

 俺はティアーナの前に近づく。

 「ティアーナは魔女の生まれ変わりなんかではない。」

 俺は、思ったことを言う。

 こうすることで少しでも穏やかに過ごしていくれたらいいと思う。

 「それで?」

 ティアーナは、険しい眼で俺を見る。

 「その言葉を誰が信じるのですか?」

 言葉を失った。

 次の言葉が出ないのだ。

 「その言葉にどれだけの力がありますか?」

 ティアーナは俺の言葉よりも、世の中に行き渡ってしまった魔女の生まれ変わりという言葉の方が力がある事を言う。

 「だが、俺は聖王だ。その聖王が言う言葉なのだから、それなりの力があるはずだ。」

 「それなりの力でしかありませんね。その力で出来る事は表面上の事だけです。」

 俺のその場の気持ちが、和らく程度にしか力はない事を言われた。

 「俺の力は・・・その程度なのか?」

 「はい、その程度です。」

 即答でティアーナは答える。

 「ゼファーの生まれ変わりと言われている俺でもか?」

 「はい、その通りですよ。メリノ橋の事・・・くれぐれも忘れてませんよね。」

 痛い一言を言われてしまった。

 「ゼファーの生まれ変わりという事が、裏目に出ているとはっきり言った方がよろしかったですか?」

 周りにいいように利用される王が君臨しても、次の王は名君という希望が持てる。

 だが、創世神ゼファーの生まれ変わりだ。

 これ以上の王は考えられないと思う方が正しい。

 庶民が、落胆することになる。

 

 「ゼファーの生まれ変わりという言葉に惑わされ、弄ばれている存在でしかない。」

 ティアーナに断言をされてしまった。

 「セカテロス創世記でのゼファーは、魔術を使えない国に魔術を使えないふりをして近づき、魔術が無くても、充分生活をすることが出来る事に気づき、セカテロス界を創造した。」

 セカテロス創世記の事をティアーナはもちだす。

 「あなた様は紙切れの上で、想像・・妄想しかしない。その様な者に誰が希望を持ちますか?」

 ・・・・何も言えない。

 ティアーナのいう事が、あまりにも正し過ぎてショックで言葉が出てこない。

 「ティアーナ姫のいう通りだね。」

と、カミーユが現れ言葉を発した。

 「スチュアートの後見人として、俺もショックだ。」

 そう、カミーユは俺の両親が亡くなった後、後見人としてそばにいてくれている。親代わりのような者だ。

 「だからこそ、スチュアートを真の名君にする義務もある。」

 カミーユは、ティアーナの前まで行く。

 「ティアーナ姫、スチュアートを名君にする為に力を貸してほしい。」

 カミーユはティアーナに頭を下げる。

 ティアーナは驚き、目を大きく開けている。

 「待ってください。そんなこと・・・。」

 「聖王という立場の者に、ここまで言える人はいない。だから・・・頼む。」

 カミーユは、ティアーナの前で膝を折ろうとする。

 「カ、カミーユ様、何をするのですか?」

 カミーユは、とことん低姿勢になって頼もうとしている事を伝える。

 土下座をする気であるカミーユを止めるティアーナ。

 「明日、スチュアート様と約束した通りに、早朝東屋へ行きます。そこで話し合いましょう。」

 ・・・そうだった。

 明日の朝、朝食を一緒に食べようと約束していた。

 来ないと堂々と、正面から迎えに行く事も言ったことを思い出した。


 まだ・・・ティアーナと繋がりがある。

 そして、この世の中をよくする道とも、繋がりも存在している。


 ・・・・希望がまだある。

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