長期休暇だ、領地へ帰ろう!
「さぁ帰るぞ!」
「はいっ!」
テストが終わり明日から長期休暇に入る。学園が終わり邸に着き、すぐに馬車に乗り込む。
テストが終わったら連絡するよ。とエヴァンに言われていたので、連絡がある前に旅立つことにした。
何かあっても、母の体の調子が悪くて早く帰りたかった。と言えば良いとの事だ。
数日かけてようやく領地に入る。
「領地に着いたらほっとする、入学してからまだ数ヶ月しか経ってないのに……」
アイリスが嬉しそうにジュードに言う。
「あぁ、安心するね……王都は疲れる。それより王子殿下とのお茶会は本当に良かったのか?」
「話すことも特にないし、それにお父様が嫌がるでしょ?」
「……では引き続き近づかない事!」
「はいっ! でも不思議とよくお会いするのよね」
首を傾げるアイリス
「そう言う場合は一礼してすぐ立ち去る様に」
「はーい」
そうこうしていると家に着いた
「お父様、お母様ただいま戻りました」
「お帰りアイリス、学園はどうだ?」
父に言われ
「お友達が出来ました」
「そうか、それは良かったな、王子殿下には近づいてないな?」
「は、はい、そのよくお会いすることはあるんですけど……お茶会にもお誘い頂いて、」
「ジュード、どう言う事だ? お前は何をしているんだ!」
ジロリと父がジュードを睨む。
「王子殿下はもうアイリスが幼い時に会った子だって分かっているんですよ。それでアイリスに近づこうとしているんです!」
「……バレたか」
「はい早々にバレましたよ」
「留学したら良いんじゃない?」
にこにこと笑顔で歩いてくる男の人
「ユベール様?」
隣国の母の従兄弟の子、ユベール・ルブラン。
国王を祝う祭りの日に領土が攻められた。
その後、王子直々に謝罪に来られ復興支援までしていただいた。
ユベールは第一王子の友人で母の従兄弟の子なので、第一王子の代わりに我が邸に来る様になった。
中々の切れ物で、隣国の伯爵と言う身分を隠して領民とも交流があり慕われている。
今日はジュードとアイリスが帰ってくるので、顔を見に来たようだ
「やぁアイリス、久しぶりだね、そんな困った事があるのならうちに留学すれば良いよ、言葉は分かるだろ?」
「悪くないな……」
父が呟く
「でしょう? 伯爵も賛成だって! どうする?うちにはアイリスの見たことのないバラがたくさん咲いてるよ? 名物のバラのお茶やジャムも美味しいよ」
「バラ……どうしよう……お父様、お母様」
「そうねぇ……ユベールが我が邸に頻繁にくると言うことは、アイリスも帰ってきやすいでしょうし」
「夫人も伯爵もご存知でしょう?」
「しかしアイリス一人で外国へとなると心配だよ、それに友達も出来たのに」
「ジュード! その点は大丈夫だよ! 任せなさいって! ウェステリアの留学の手続きも任せてくれて良いから!」
「ねぇ、わたくし本当に留学するの?」
アイリスは話の早さについていけなかった。
「そうしなよ、ウェステリア語も普通に話せる、本も読める、作法なんかは私や夫人を見ているから大丈夫! 部屋も用意する」
「えっ? わたくしユベール様のお邸に住むの?」
「当たり前だろ! バカな事言わないで」
驚くアイリス
「えぇ……寮とかないの?」
「なんで? そんなことしたら第一王子に怒られるよ……アイリスも交流があるよね」
「勉強ついていけるかな……」
「大丈夫だって! 教えてあげるよ」
「……う、うん」
数日が経ち庭でユベールとウェステリア語で話をするアイリス。
「あっ、ここよく言い間違いしちゃう」
「難しく考えなくて良いんだ。間違いではないから」
「うん、ありがとうユベール様」
「長期休暇や帰りたい時はいつでも帰っても良いから、私を頼って」
「うん、お願いします」
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「ここがルメール領か……」
数年前、隣国からの攻撃に遭ったと言う場所。ルメール伯爵が応援を頼んだにも関わらず、応援を送らずに何人もの犠牲を出した。
石碑が建てられていた。
目を瞑り祈りを捧げる。
それからルメール伯爵は王都に来なくなったのだ。
「父上を恨んでいるだろうな……」
ポツリとエヴァンがひとりごちる。
長期の休みに入りアイリスをお茶に誘おうとしたら、既に領地に戻ったと言う。
逃げられたか……
視察を兼ねてアイリスに会いに来てしまい、国境の付近まで来てしまった……
「ここがルメール伯爵の邸か……」
先ぶれは出したが急だったので歓迎はされていないだろうなぁ……
そう思い邸の門をくぐる。
「ようこそいらっしゃいました、王子殿下」
ルメール伯爵夫妻が出迎える。
「お久しぶりです、伯爵」
「このような遠い所まで、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「長期休暇を利用して視察に来ました。初めて襲撃を受けた際の場所にも足を運びました。父が申し訳ないことをしました……」
申し訳なさそうな顔をするエヴァン。
「……あぁ、その事でしたら報奨金もいただき、隣国からも謝罪を受けました。もう過ぎた事ですよ」
笑みを浮かべエヴァンへと答える。
「犠牲者が多かった様で石碑を見て反省しました」
「エヴァン王子殿下はまだ幼かった時の事件です。王子殿下が気にすることではありませんよ、こんなところでは失礼でした。どうぞこちらに」
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