嫉妬するエヴァン
「泣けばアイリスが来ると思ったら大間違いだからな」
我が子が泣いている。子をあやす為に抱っこしながら子を揺らしている。
「アイリスは私の妻なのだ。リュカにはきっと運命の相手がいるから早く親離れするんだぞ」
実際に聞くと呆れる様な言葉ではあるが、離れて見ていると優しく子をあやしているし妻への愛を息子に語る父としか見えない。
「よし、寝たな」
そぉっとベッドに寝かすエヴァン。
「アイリスは頑張りすぎだから休ませてやろうな。リュカも分かるよな?」
すぴすぴと眠るリュカを見る。
「見れば見るほど私にそっくりじゃないか……しつこいところは似るんじゃないぞ」
自覚があったのか。とその場にいたメイド達が思ったらしい。
リュカと名付けられた第一王子は、それは大事に育てられていた。
「執務に戻る。何かあったら呼んでくれ」
メイドに声をかけて執務室へと戻るエヴァン。乳母もいるしリュカが泣いたからといってわざわざ執務の手を止めて様子を見に来る必要もないのだが、子育てをするというアイリスの父親との約束を守っている。
リュカはエヴァンの顔を見ると笑うし“パー”と言う。恐らくパパと言いたいのだろう。きっと近いうちにパパと呼んでくるのだろう。成長を目の当たりにしていた。
しかしエヴァンには許せないことがあり、アイリスと言い争いが絶えない。
それは……
「リュカ、お腹すいた?」
アイリスがリュカに乳を飲まそうとするのだ。
「リュカ、乳母に飲ませてもらいなさい。アイリス、頼むからリュカに乳をやるのはやめてくれ……見ていて辛いんだよ」
心臓を掴む様につらいといってくるエヴァン。
「アイリスが私以外の男に素肌を見せるという行為が辛い……」
「お乳を与える時は入ってこないでくださいと何度もお願いしています。出て行ってください」
「アイリスが私以外の男と二人でいるなんて想像しただけで、」
「エヴァンの息子ですよ? ほらこんなに可愛いのに……リュカ、変なパパですね。変なパパには出て行ってもらいたいですよね?」
「ばぁー」
「バイバイと言っていますよ。執務に戻ってください」
「……アイリス最近私に冷たくないかい?」
「え? 何を言っていますの?」
「執務室にも来てくれないし。リュカが産まれる前は一日に三回は来てくれていたのに……執務が捗らないよ」
(普通は一日に三回も来ていたら逆に捗らないと思うのだけど?)
「リュカはまだ産まれたばかりなのですよ?」
「リュカと私とどっちを愛している?」
(わぁ。面倒くさい……真剣な顔で言ってくるんだもの。ここでリュカと答えたら私とリュカはどうなるんだろう……怖いわ)
「それはエヴァンに決まっていますでしょう? エヴァンがいないとリュカは誕生しなかったのですよ。もうっ! 子供と張り合うなんて……」
そっとエヴァンの頬に手を当てるアイリス。
「そうだよね。私もアイリスを愛しているよ。リュカ頼むから早く親離れするんだぞ! 執務に戻るよ。レイが怒っている頃だから」
アイリスとリュカの頬にキスをして渋々出て行った。なんだかんだとエヴァンなりにリュカを可愛がっている様だった。




